納豆・甘酒・ヨーグルト… 注目はハイブリッド発酵鍋
令和初の冬は記録的暖冬とはいわれるものの、やっぱり鍋が食べたい。今年の鍋といえば、「発酵鍋」が話題になっている。味噌やチーズだけでなく、こうじや発酵バター、納豆、酒かす、甘酒、ヨーグルト……。一般的には鍋料理に使われないような発酵食品を数種類組み合わせた「ハイブリッド系」の発酵鍋が増えてきている。これまでにない新しい、個性的な発酵鍋が続々と登場。今回は都内で「発酵鍋」を食べられる4店を紹介する。
まず、東京・渋谷にある鍋料理専門店「ゆるり屋 渋谷道玄坂」では発酵食材とピーナツを組み合わせた鍋3種を提供している。中でも発酵食材をふんだんに使用した「ピーナッツヨーグルト味噌の鯛(タイ)鍋 追いピーナッツ納豆つき」はヘルシーな印象で女性を中心に人気だ。
プレーンヨーグルトと味噌、ピーナツのペーストを組み合わせた特製鍋スープの発酵鍋。鍋スープにヨーグルトを使うというと、かなり個性派のように思えるが、和風だしベースのスープにヨーグルトのほのかな酸味が利いて食べやすい鍋になっている。
発酵食材に組み合わせたピーナツもまた注目の健康食材。「食物繊維や良質な脂質が豊富で、抗酸化作用や新陳代謝アップ効果などが期待できるといわれるピーナツは、食べると体がぽかぽか温まるので、冬こそ積極的に食べたい食材です」と同店を運営する際コーポレーションPRプロモーション部の河野由起さん。ピーナツペーストを加えることで、濃厚なコクのクリーミーな鍋スープを作り出した。
最初に素揚げしたタイのお頭をスープに入れて数分煮込み、うま味が溶けだしてからほかの具材を投入するのがお薦めの食べ方だ。タイの切り身、ハクサイや青ネギ、白ネギなどの野菜類、キノコ類、豆腐といった具材とともに、ヨーグルトと「ピーナッツ納豆」がトッピングとしてついてくる。
「ヨーグルトは食べるときに"追いヨーグルト"するとサワークリームのような味わいになっておいしいですよ。『ピーナッツ納豆』は、納豆に砕いたピーナッツをトッピングしたもので、混ぜてからスープに加えると、スープにとろみがついてきます」(河野さん)。
同店では、トウバンジャンとチーズの鍋にピーナツをトッピングする「ピーナッツ増し増し赤トマト担々チーズ鍋」(冒頭写真、1人前/2980円)もトマトの酸味でさっぱりと食べられると好評。どちらも3月末まで提供の予定だ。
続いては、西新橋と赤坂で2店舗を展開する「博多焼酎居酒屋 もつ福」の「7種のきのこの発酵もつ鍋」。居酒屋ながら健康を意識したメニューを考案し、味噌やしょうゆこうじなど注目を集めている発酵食品に加え、乳酸菌も摂取できる鍋に仕上げた。
とんこつベースの鍋スープには、乳酸菌を配合した味噌をはじめ、数種の厳選した味噌、しょうゆこうじをブレンド。濃厚なうま味とコクを楽しめる。「乳酸菌は免疫を高める効果が期待できることから、風邪やインフルエンザが流行する冬に向けて乳酸菌がとれる鍋を考案しました」と同店を運営するポジティヴ・フード広報担当の伊藤麻衣子さんは話す。
和牛モツは新鮮さにこだわり、市場から直送されたものを使用。「モツ鍋の専門店ですから、厳選したぷるぷるの小腸やハツ、センマイといった珍しい部位が入っているのも人気のポイントです」と伊藤さん。
さらに新鮮なニラやハクサイなどの野菜に加え、キノコは7種も入っている。「キノコがどっさり入ったビジュアルなのでスマホで写真を撮る方も多く、提供時に歓声が上がることもありますね」(伊藤さん)。
「スープがうま味たっぷりなので、シメにはチーズリゾットにしてスープまで完食される方がほとんどです。女性だけでなく男性グループや、カップルなどにも人気ですね」(伊藤さん)。モツを使っていながらも、低カロリーなキノコがたっぷりで満腹感がある。
東京・三軒茶屋と新宿に2店舗を構える「炉端 美酒食堂『炉とマタギ』」で話題になっているのは、発酵食品とイノシシ肉を組み合わせたハイブリッドな発酵鍋だ。
こちらの発酵鍋は自家製の甘酒としょうゆこうじを使っており、発酵食材ならではのまろやかでやさしい味わいの鍋スープとなっている。具材のイノシシ肉やニラ・ニンジン・ゴボウなどの野菜、木綿豆腐を加え、最後に溶かした発酵バターを加えて食べる。発酵バターでうま味とコクが増し薬味として花椒(ホアジャオ)で辛味をプラスできるとあっておいしいと評判なのだ。
「発酵バター・甘酒・しょうゆこうじスープのトリプル発酵鍋です。『発酵鍋×イノシシ鍋』という新しい組み合わせですが『意外と食べやすい』『あっさり食べられた』と好評です」と三軒茶屋店調理長の唐沢優さん。
使用しているイノシシ肉は長崎県平戸産。「ドングリを食べて脂肪分少なめに育った天然のイノシシの味はイベリコ豚のよう。かめばかむほどにうま味が増すので、鍋の味わいに負けずしっかりとした味わいなのに、臭みもなく食べやすいんです」と唐沢さんは話す。
シメにはほうとうを入れるのがお薦めで、うま味がたっぷりのスープで食べればボリュームも満点だ。こちらの鍋は2月末まで提供予定とのこと。
最後に紹介するのは関東・関西を中心に7店舗を展開するチーズ料理専門店「CHEESE CRAFT WORKS(チーズクラフトワークス)」の「カマンベールとモッツァレラのトマト鍋」だ。
一見すると発酵鍋と分からないような大人気のチーズとトマトの組み合わせの鍋だが、実はこちらも発酵食品をふんだんに使っている。チーズ専門店ならではのカマンベールとモッツァレラのチーズ2種に加え、キムチと白味噌をブレンド。キムチのコクや辛味、白味噌のまろやかなうま味とトマトだしとの相性は抜群で、食欲をそそる。
「チーズ好きな女性によくご注文いただいております。昨年11月から販売を開始して、12月末までの予定でしたが、好評のため今年3月までに延長したほどです」と同店を運営するLIFEstyleの後閑昇さん。チーズを堪能しながら、様々な発酵食品も手軽に取れる点が人気だ。
鉄鍋の一角には数種のチーズをエスプーマで泡状にした同店の看板メニューである「天使のふわふわチーズフォンデュ」も盛られている。加熱すると軟らかくとろけるチーズとなり、バゲットやポテトなどをフォンデュして食べる。普段は単品として注文しないと食べられないメニューが鍋と一緒に食べられるのもうれしいポイント。
トッポギやナムルもついていて、シメにはチーズリゾットを楽しむこともできる(1人前/300円)。チーズをたっぷり味わいたいときにぴったりだ。
発酵食品は今年も積極的に取りたい食材として話題になりそうだ。多くの種類の発酵食品が具材として入るハイブリッドな発酵鍋は、発酵食品ならではのうま味が堪能でき、寒い季節に温まることもできる。新たな発酵食品の魅力を知るきっかけにもなりそうだ。
※価格は税別。特記がない限り、鍋料理は2人前以上で注文可能
(フードライター 古滝直実)
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