「たちかわさん」でも無理ないです 落語界の当然問う立川吉笑

画像はイメージ=PIXTA
画像はイメージ=PIXTA

今年の元日から「ボイシー」というネット上の音声メディアで「立川吉笑の落語入門」という番組を始めた。視覚を使わず「ながら聞き」ができる音声メディアの強みはどういうところにあるのか体験したかったのと、これまで落語に興味はあったけど「なんだか近寄りがたい」とか「しきたりが多くて難しそう」とか、そんな理由で落語への第一歩を踏み出せていない方に「落語は気軽に楽しめるエンタメですよ」と伝えられたらいいなぁと思ったのがそもそものきっかけだ。

ほかならぬ僕自身が、ずっと落語に興味はあったけど「なんとなく難しそう」という理由で踏み出せず、初めて落語のCDを買ったのが12年前の24歳のとき。すぐに落語のとりことなった僕は、次第に「自分もやりたい」と思うようになり、26歳で師匠に入門した。今回の番組では素人だった昔の自分に向けて喋(しゃべ)ろうと考えていたら、今の自分にとっての当たり前が、かつては全然当たり前ではなかったことを思い出した。

例えば芸名。立川吉笑と書いて「たてかわ・きっしょう」と読む。「吉笑」が読めなくても仕方ないとして、そもそも「立川」すら当時の僕だったら「たちかわ」と読んでしまっていただろう。現にお客様から「たちかわさん」と声をかけられるケースも少なくない。落語界の住人であれば立川談志(たてかわ・だんし)の系譜だからと、すぐに分かるけど、そんなことは一般的にはほとんど知られていなくて当然だ。ということは、これまでチラシなどで漢字表記しか載せていなかったところは、本当は読み仮名も併記すべきだったのではないか。

「木戸銭」「仲入り」でわかる?

初めての方に落語会に来ていただきたいと思っているにもかかわらず、例えばチラシに「木戸銭1800円」と記載することもある。入場料のことを「木戸銭」とか「木戸」ということは落語界的にはままあることだけど、思えばこれも一般的じゃない。「料金は木戸口でお支払いください」とアナウンスすることもあるけど、落語と出合う前の僕は木戸口という言葉が「受付」を表すなんて知らなかったはずだ。「きどせん」と読むことすら、もしかしたら一般的じゃないかもしれない。落語界と世間との間にある当たり前のギャップは思った以上に大きそうだ。

木戸口で木戸銭を払って無事に会場に入ってからもそうだ。例えば「仲入り」。「なかいり」と読む。僕は「仲入り」の表記を使うことが多いが、会によっては「中入り」と書くこともある。これは一般的な表現では「休憩」だ。多くの落語会は前半と後半に分かれていて、その間に仲入りが挟まる。逆に言えば二部制がほとんどで、仲入りが2回入る三部制の落語会はまずない。大体、前半に落語を1時間くらいやって、仲入りが10分、後半が50分くらいの計2時間が一般的だ。

エンタメ!連載記事一覧
次のページ
「明石家さん」「市川さん」の違和感
エンタメ!連載記事一覧