子どもの風邪、受診の目安は? 薬の頼りすぎは禁物

日経Gooday

薬は風邪を早く治すわけではない

基本的に、風邪は上記のような経過をたどって自然に軽快する。薬を使っても風邪自体を早く治すわけではないという。

「風邪は、体の中で増殖したウイルスに対して免疫が反応し、自然治癒力が働いて治っていく、という経過をたどります。原因に対する治療薬があるのはインフルエンザだけで、他のウイルスに対しては、根本原因に有効な薬はなく、あるのは熱や咳などの症状を和らげる薬だけです。ただ、割合としては少ないものの、そうした薬には副作用や有害事象の可能性もあります。発疹などの軽いものから、命にかかわるような重い副作用も報告されているため、リスクとベネフィットを鑑みて、医師の間でも『積極的には使わない』という考えになってきています。もちろん、高熱が出ているときや、咳が出て眠れないときなどに薬を使って楽になる、症状を和らげるという意味はあります」(宮入さん)

子どもへの使用が禁止されている薬もある。写真はイメージ=(c) Valerii Sidelnykov-123RF

子どもには使用が禁止されている薬もある。咳止め薬に含まれるコデインという成分は、それにより呼吸困難になる疑いがある症例が報告され、欧米で使用制限されたのに基づき、日本でも2019年から全面的に12歳未満の子どもにはコデインを含む咳止め薬は使用が禁忌となった。

「鼻水を止める抗ヒスタミン薬も、かえって呼吸を抑制する 、熱性けいれんを誘発する可能性などのリスクが報告されており、小さな子どもには使いません。咳止め薬に関しても、薬で抑えるのではなく積極的に咳を出させてたんを排出する方がよいという考え方が小児科医の間で一般的になっています。咳止め薬や総合感冒薬に関して米国小児科学会は幼い子ども(目安:4歳未満~6歳未満)に対して処方すべきではないとしていて、日本でも風邪に対して医師が処方できる薬は規制が進んでいくと思われます」(宮入さん)

ちなみに、抗生物質は細菌を殺すものなので、ウイルスには効果がない。抗生物質を使うと耐性菌ができる可能性があるうえ、体の中の常在菌(いわゆる善玉菌)まで殺してしまうため、細菌に対する抵抗力を弱めてしまう。吐き気や下痢、アレルギーなどの副作用が起こることもあり、「風邪にも効きそうだから飲んでおこう」などというのは禁物で、本当に必要な場合以外には抗生物質は使わない方がよい。

子どもを少しでも楽にしてあげようと思うのは親としては当然だが、なるべく薬には頼らず、つらい症状を最小限の量で適切に抑えるものと心得よう。市販の総合感冒薬や咳止め薬も、使うときは子どもに飲ませても大丈夫かどうか薬剤師に確認をしたい。

「一般的に市販の総合感冒薬には、アセトアミノフェンなどの解熱剤と、咳止めの成分、鼻水を止める成分など多種類の成分が少しずつ配合されています。不必要な成分の濃度が高くなると肝臓の負担が増しますし、副作用のリスクも高まりますので、咳がひどい場合は咳止め薬など、困っている症状に合わせた薬を選ぶことをおすすめします」(宮入さん)

子どものときにウイルスに出合うことで免疫を獲得

子どもが頻繁に風邪を引くのは、将来、さまざまな菌やウイルスと闘うための免疫を獲得するという意味もある。

「人は一生に200回くらい風邪を引くといわれますが、生後半年は、胎盤を通して母親からもらった高濃度の抗体に守られているため、ウイルスが侵入しても中和して、あまり風邪を引きません。抗体は1カ月ごとに半減していき、半年でなくなると自分の免疫でウイルスと闘うようになります。ですから生後半年から2歳くらいまでは年に7~8回、頻繁に風邪を引きます。その後は年齢とともに、幼児期になると年に3~4回、中学生くらいになる頃には1~2回と減っていきます」(宮入さん)

子どもの体にとって、体に侵入したウイルスは初めて出合う微生物なので、排除するための免疫ができていない。そのため小さいうちは風邪を引きやすく、鼻水に多量のウイルスが含まれていたり、自分でうまく処理できずに色々なところにくっつけて余計に感染しやすくなったりする。外部との接触が感染経路になるので、自宅で見ている子どもよりも、集団保育の子どもの方が風邪を引きやすいともいわれている。

「小さいうちに風邪に繰り返しかかり『気管支が弱い』といわれているお子さんでも学童期になる頃には他のお子さんと変わりないということが多くの研究で分かっています。また水ぼうそうや麻疹(はしか)など大人になって初めてかかると重くなる感染症も少なくありません。入院するほど具合が悪くなったり、あまりに繰り返したりすると心配ですが、子どもが風邪を引くのは自然なことです」(宮入さん)

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