老後資産、金額目標ありきはNG まず望む生活を想定経済コラムニスト 大江英樹

写真はイメージ=123RF
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老後に向けた資産形成が大切だということが以前より増して関心を集めているようです。きっかけの一つが2019年に起きた「老後2000万円問題」でしょう。多くの識者が指摘したように、これは2000万円という金額がミスリードであるということに私も全く同感です。そもそも老後の生活費は人によって変わるし、公的年金や退職給付制度も受給額は人によって全く異なるからです。

ところが一方では具体的な金額が出てきたことで、老後に向けての資産形成を自分なりに考えようという人も増えているようですから一概に悪いということではありません。ただ老後資産づくりの考え方や方法には十分注意をする必要があります。

金銭欲は際限なく

最近は「資産寿命」という言葉があちこちで出てくるようになりました。大まかにいえば資産寿命とは老後に自分の資産が尽きるまでの期間のことです。健康に日常生活を送ることができる期間を示す「健康寿命」と同じように高齢者にとって大事であるということから使われるようになっています。

私も最近、資産寿命をテーマにした書籍を出したのですが、その中で自分の資産寿命を延ばすため様々なことに取り組んでいる方々へインタビューをしました。その中の一人にとても興味深いことをおっしゃった方がいます。その方は普通の会社員でしたが、個人投資家として20年以上にわたって株式や投資信託への投資を続けてこられ、今では会社員の平均生涯年収を上回る金融資産を保有されています。

私が「資産づくりのために大切なことは一体何でしょうか」と聞いたところ「それは金額を目標にしてはいけないということです」という答えが返ってきたのです。資産形成をするためには「いくらまで資産を増やそう」といった目標は欠かせないのではないかと思うのですが、その後に続いた彼の言葉がとても心に響いたのです。「例えば1000万円を目標にしたとします。それが達成できると2000万円、その次は5000万円、さらに1億円と際限なくお金が欲しくなります。そうじゃないんですよ。人生の目的はお金そのものじゃなくて幸せに楽しく人生をおくることでしょ。だったら、まずは自分の好きなこと、やりたいことは一体何だろうと考えてそのために必要なお金をこしらえるのです。そうした目的もなしに漠然とした不安だけを抱えてお金を増やそうとすれば、いつまでもキリのないことに苦しみかねませんよ」

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