グレタさん育んだスウェーデン 保育園から民主主義

日経DUAL

グレタ・トゥンベリさん(写真中央)が15歳で始めたストライキは世界100カ国以上に広がる(2019年4月19日、ローマ)=AP
グレタ・トゥンベリさん(写真中央)が15歳で始めたストライキは世界100カ国以上に広がる(2019年4月19日、ローマ)=AP

気候変動への行動を一人で起こし、多くの若者たちに影響を与えたスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん。全世界で気候変動の危機感を訴える若者たちは増え続けています。一方、日本で中学~高校生世代といえば、流行には敏感で学業にも熱心なものの、社会活動に参加する子どもはまだ少数派です。その違いには、どのような背景があるのでしょうか。10年前に家族でスウェーデンへ移住し、翻訳家や現地高校の教師として活動している久山葉子さんに、現地の高校生の様子や子育ての違いについて、リポートしてもらいました。

高校生のグレタさんの影響で人々が行動を変えている

国連気候行動サミットでのスピーチで、日本でも一躍有名になったグレタ・トゥンベリさん。2020年1月21日、スイスで開幕した世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に参加し、ここでも存在感を見せつけた。彼女がスウェーデンで最初に注目されたのは、2018年の夏の終わりだった。当時15歳だったグレタさんは、8月20日から連日、「環境のための学校ストライキ」というプラカードを掲げて、国会議事堂の前に座り込んだ。ちょうど長い夏休みが明けて、新年度が始まる時期で、グレタさんは中学3年生に進級するところだった。国会議事堂前で彼女を取材するマスコミの数は日に日に増え続け、座り込みが始まって2週目にはスウェーデンでは皆が知る存在になっていた。

ご存じの通り、スウェーデンはもともと環境問題に対する関心度が高い。猛暑の夏がくれば「地球温暖化のせいだ」と危惧するし、温室効果ガスの排出量が多い畜産業で生産される肉を使った料理を避けたいという声に応え、今はたいていの学校で給食にベジタリアンメニューがある。グレタさんの行動力に感化され、この国の環境意識はさらに高まった。

しかしグレタさんが与えた影響はそれでは終わらなかった。2019年には、9月にニューヨークで行われる国連気候行動サミットに参加するために、飛行機を使わずにヨットで大西洋を横断することを発表したのだ。まさかそこまでやるとは。スウェーデンでは「Flygskam」(フリーグスキャム、飛行機を使うことへの恥)という単語が登場し、夏休みは列車でヨーロッパを周遊することが急にトレンドになり、飛行機会社の広告も今まで安値重視だったのが、いかに環境に配慮しているかというのをアピールする路線に変わった。私の周囲でも国内の旅行・出張であれば飛行機ではなく列車を選ぶことが増えたし、グレタさんの行動で社会の意識が着々と変わっていくのが感じられた。

高校生から気軽に政治活動ができるスウェーデン

ところで、スウェーデンにグレタさんのようなティーンが現れたのは、偶然ではないように思う。彼女ほど行動力のある子は確かに珍しいが、この国では普通の若者たちも「自分たちが社会を変えられる」という意識を持って生きている。

実際に行動に移したいと思う若者には、各政党の青年部に入部するという選択肢がある。高校生で政治活動なんて想像がつかないかもしれないが、スウェーデンではクラブ活動のようなノリで、「バンドやっています」とか「サッカーチームに入っています」というのと同じ感覚だ。私が勤めている私立高校でも、毎年各学年に数人は青年部に所属している生徒がいる。どの党に所属するのかはばらばらで、本人が自分の理想にもっとも近いと感じるイデオロギーを掲げる政党を選ぶ。

青年部の中心メンバーは与野党に関わらず高校生から大学生くらいだが、例えば民主党の青年部は12歳から入部できるし、左翼党に至っては年齢の下限はない。選挙権を得るのは成人する18歳からだが、同時に選挙に出馬することもできるようになる。そのため、「18歳の市議会議員誕生!」というニュースを目にすることがある。市議会のほうも、若者の意見を積極的に取り入れているという姿勢をアピールしたいのだろう。

今日は学校の昼休みに食堂の前で、左翼党の青年部に所属する高校生たちが勧誘活動を行っていた。興味をひかれて足を止めた生徒に、自分たちの思想や活動内容を紹介している。この日彼らがアピールしていたのは、やはり環境問題、そして人種差別をなくしたいという熱い思いだった。また左翼党が推進している「一日6時間労働」政策のキャンペーンのために、パッケージに大きな字でSEX(スウェーデン語で6)と書かれたコンドームも配っていた。生徒たちは恥ずかしがる様子もなく、「あら、無料でもらえてラッキー」という表情で受け取っている。

高校の構内で各党の青年部が勧誘活動を行うのは、珍しい光景ではない。この日食堂の前に立っていたのは、左翼党青年部の高校生二人