訪日客も日本人も刺激満載 寿司作りや抜刀体験に挑戦

東京浅草うめもり寿司学校(東京都台東区)ですしづくりを体験するインドからの観光客
東京浅草うめもり寿司学校(東京都台東区)ですしづくりを体験するインドからの観光客

国外からのインバウンド客が日本文化を体験する「コト消費」が多彩になってきた。日本ならではの美食や伝統を短時間で効率よく体感できるアクティビティーが増えている。国内で普通に暮らしていては触れられない内容も多く、日本人が彼らを参考に、新鮮な感覚で楽しむこともできそうだ。

「ワサビ、オン!」「酢飯はエッグシェイプ!」。東京浅草うめもり寿司学校(東京・台東)で2019年末の昼食時に、インド・ムンバイから観光に来た3家族10人がにぎりずしづくりに挑戦していた。インストラクターの英語交じりの指示に従い、楽しそうに握っている。

「もともと日本食が好きで、インドでも月1回は食べている。せっかくの日本滞在なので家族と作ってみたかった」(3家族を率いてきたビジネスマンのチャタン・シャーさん)。10人は1時間ほどですしを握り、ランチにしてから浅草観光に出かけた。

同校ではマグロ、イカなど8貫分のネタは切り分け済みで、顧客は握り方を体験する。料金はツアー客で1人2800円。13年の開校以降、本社のある奈良のほか京都、大阪、東京の4教室で延べ40万人を受け入れた。普段は中国からの顧客が多く、全体の9割を占めるという。

「ほかの観光客とちょっと違う体験をして、写真をSNS(交流サイト)にアップしたいというニーズが増えている」。レジャー・体験予約サイトを運営するアソビュー(東京・渋谷)の内田有映観光戦略部長はこう分析する。

19年の訪日外国客数は3188万人と7年連続で過去最高を更新した(国土交通省調べ)。リピーターも増えるなか、単なる観光地巡りでは飽き足らない層が日本文化の体験に関心を寄せているようだ。

観光客の出身地によって好みに違いはある。中華圏のインバウンドに詳しい中国語通訳案内士会の澄川雅弘代表幹事は「アジアの観光客は日本の食べ物に興味を持つ例が多い」と指摘する。

すしづくりはその代表例だが、食品サンプルづくりも人気だ。シリコンやゼラチンで作る精緻な食品サンプルは日本独自に発達してきた。大和サンプル製作所(東京・豊島)にはインドネシア、香港、台湾などから製作体験の希望者が絶えない。

「シンガポールでは作る場所がないので日本でぜひ体験したかった」。19年末に来日したリュー・メンカイさん一家は奥さんがラーメン、娘さんがパフェのサンプルを1時間弱で作った。

忍術を疑似体験できるVR忍者道場(東京都千代田区)

一方で、欧米からの観光客はより伝統的な日本文化への関心が高い。「映画で見たチャンバラとは全く違うことを実感できた。刀はとても重い」。米ロサンゼルスから来たデビッド・ホーグさん一家4人は真剣の扱いを体験した後、こんな感想を漏らした。

体験したのは「抜刀」だ。和装、書道など日本文化の教室を運営するHiSUi TOKYO(東京・中央)が指導している。専門家の教えに従えば、初体験でも真剣でイグサの束を切れるようになる。

欧米では、日本文化といえば忍者というイメージが依然として根強い。忍者をテーマとしたインバウンドのアクティビティーは定番だが、19年3月に開業したVR忍者道場(東京・千代田)は剣術、忍法、手裏剣など忍者の技を仮想現実(VR)で体験できるのが売りものだ。

忍術体験はゲームセンターのように得点もつく。「(忍者が題材の漫画)NARUTOのファンなので、日本で絶対にやりたかった」。米ニューヨークの大学生、ライナス・チューさんは1月上旬に体験し、満足そうだった。

20年は東京五輪開催の効果もあり、インバウンド客がさらに増える可能性がある。アソビューの内田部長は「居酒屋ツアーなど、ナイトタイムエコノミー関連のコト消費が伸びそうだ」と予測する。

インバウンドによる文化体験は「すしは食べるもの」「剣術は時代劇のもの」という固定観念を崩してくれる。これらアクティビティーのうちVR忍者道場は外国人向け施設だが、その他は日本人客も受け入れる。日本人にとっても、自らの文化を再認識する機会になるかもしれない。

(企業報道部アジアテック担当部長・全国通訳案内士 山田周平)

[日本経済新聞夕刊2020年1月25日付]

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