残業手当・値引き… 社員の営業力むしばむ4つのワナ
カルビー元会長 松本晃氏
「理不尽だと思っていたことを経営者になって改めた」と話す松本晃氏
プロ経営者の松本晃氏は、若いころ伊藤忠商事の敏腕営業マンとして鳴らしましたが、同時に日本企業の弱点やおかしな点を意識するようになりました。特に成果に見合う給料を払わない日本の会社の仕組みには、大きな疑問を抱いたそうです。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人やカルビーのトップとして成果主義を推進し、業績を大きく伸ばした松本氏の考え方の根本には若手時代の経験があるようです。(前回の記事は「『営業は天職』 伊藤忠で覚醒、売りまくって得た極意」)
会社での失敗、稼いで返せばいい
伊藤忠時代は売って、売って、売りまくる、とても優秀な営業マンでした。もちろん完璧だったわけではありません。大失敗をやらかしたこともあります。
最初に配属された大阪で作業船や運搬船を担当していたときでした。ある「船主」が中古船を新しい船主に売ったのですが、実は本当の所有者は別にいたのです。売り主は、勝手に持ち主と名乗っていただけだった。後日、本当の所有者から「あれは俺の船だ」とクレームがあり、初めて詐欺にあったと分かりました。だまされたとはいえ実際に売ったのは僕だし、登記をちゃんと確認しなかったのは大きなミスです。解決には多額のお金が必要になり、会社に大きな損害を与えてしまいました。
それで落ち込んだかというと、そうでもありませんでした。すぐに「損を出した分、また稼いで返せばいい」と気持ちを切り替えたんです。「稼ぐに追いつく貧乏なし」です。小さな失敗はたくさんありましたが、差し引きして、もうけていればいいと思っていた。ビジネスとはそういうものです。大相撲と一緒で、いつも15戦負けなしの全勝優勝というわけにはいきません。8勝7敗でも番付は上がるんです。僕は常に11勝4敗ぐらいを意識していました。