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後回しにしがちな介護の備え ボードゲームで自分事に

「もしもの時」をゲームで疑似体験 (下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

人生の終末期や親の介護など、いつかは誰もが体験するであろう「もしもの時」。その時が訪れないと、なかなか現実味が湧かない「もしもの時」をゲームで疑似体験できる場が登場している。前編では、余命半年の設定で自分の大切なことに気付くカードゲーム「もしバナゲーム」を紹介した。今回、取り上げるのは、ボードゲームを使って介護をリアルに体験できるワークショップ「けあとの遭遇」。ゲームを開発したand family代表取締役の佐々木将人さんと、取締役の濱正樹さんにゲームの趣旨や広がりを聞いた。

「親ともっと話しておけば……」

日々、仕事で忙しくしている中、突然、親の介護が必要になったらどうすればいいか。介護の未経験者にとってはイメージが湧いてこず、何から手を打っていいのか混乱するかもしれない。

「けあとの遭遇」は、仕事と介護の両立という問題を、盤上でコマを動かすボードゲームでシミュレーションできるワークショップだ。ゲームを開発したand familyが誰でも参加可能な体験会や、企業研修で行っている。研修としては、従業員に介護の問題が起きた時に職場で気軽に事情を話せ、介護離職を予防するためのアプローチとして「話せる職場づくり」を目的に実施している。

佐々木さんが介護について関心を持ったのは、介護事業所を経営していた友人から、「介護サービス利用者の家族の支援まで手が届かなかった」と聞いたことがきっかけだ。

「私は『自分自身の病気と仕事の両立』をひとり抱え込んでしまい、そのために倒れてしまったことがあります。その経験から、自分の親に介護が必要になっても、きっと私は職場にそのことを話せず、問題を抱え込んでしまうのだろうと思いました。そんなことから、働きながら介護を抱える方、介護をすることになるかもしれない方を助けることができれば社会的に意味があるのではないかと、2018年から約半年かけて家族介護者の方々に介護中に困ったことなどについてインタビューしてきました」(佐々木さん)

その中で、はた目からするとこれ以上頑張ることができないほど頑張っていた人が「もっと親と話しておけばよかった……」とずっと後悔している言葉が気になった。その人は、突然の介護に直面した時に短期間に多くの判断を迫られ、「親の意向や気持ちを聞いてあげる気持ちの余裕がなかった。親も遠慮して話すことができなかったのかもしれない」と話していた。

「突然の介護に向けての心の準備をしておかないと、同じように後悔する人が生まれるのではないかと思いました。その準備とは、親と普段からコミュニケーションを取り、その人となりやどんな人生を歩んできたかを知っておくこと。そうすれば、親を一人の人として認識でき、年を重ねて弱っていく親を受け入れやすくなる可能性があります。それに、介護施設の利用の意向や終末期の医療についての希望、介護が起きた時に相談できる相手などをあらかじめ知っておくと、いざ介護に直面した時にパニックにならずに済むのではないかと思いました」(佐々木さん)

だが、介護の問題はその時になって考えることになりがちであり、そのメッセージを介護が始まる前の人々に伝えるのはとても難しい。「そこで、介護が起こる前に行動を起こしてもらうには、自分事として捉えられる体験が必要ではないかと考えたのです。ちょうどその頃、子どもの教育用に購入したボードゲームがあることを思い出し、介護のようにとっつきにくいもの、イメージしにくいものでもゲームにすることで自分事に考えられるのではないか、と思い付いたのです」(佐々木さん)

それから半年ほどでボードゲームの形になり、2019年1月に東京で行われた介護や医療などの展示会「Care Show Japan(ケアショー・ジャパン)」に出展。体験会を開いて知人らに参加してもらいながらブラッシュアップし、同年3月にはand familyを創業。以来、体験の場を広げている。

悩むうちに自分の価値観が見えてくる

筆者も2019年11月に東京で行われた「けあとの遭遇」の体験会に参加してみた。ボードゲームのプレーと振り返りを中心にした約2時間のプログラムだ。当日は介護職の人や会社員ら9人が参加していた。

ゲームは3~4人が1チームになり、皆、同じ職場の営業パーソンという設定。会社は倒産の危機にあり業績を上げるミッションが課される中、各個人でも「仕事命」「(仕事と自分の家庭を大切にする)ワークライフバランス」「親孝行」など7種類のミッションから自分自身のミッションを決め、仕事と介護の両方を意識しながらゲームを進めていく。

最初にサイコロを振り、盤上にあるコマを動かしてからカードを引く。そのカードには「認知症の疑い」「脳卒中で倒れた」といった親の病気や、仕事にまつわるトラブル、旅行に行くなどの家族のイベントが書かれていて、その下に書かれた指示に基づいてお金を払ったり、ケアを受けるかどうかの選択をしたりする。

チームごとに職場の業績がポイントで表され、最終的に10ポイント以下だと倒産という結果に。各人が順番にプレーし、6周回れば終了となり、勝ち負けはない。

盤上には「親の要介護度」や「親や会社などとの関係性の度合い」「個人の仕事の成績」などを示す複数の種類のコマがあり、その動かし方のルールは少々複雑。50代の私はのみ込みが悪いのか、コマの動かし方に四苦八苦する一方、仕事と介護、どちらを優先すべきかの選択も迫られてオロオロ。チームで行うため業績を上げようと仕事のほうに時間を使いすぎると、親との関係が悪化していくなど、仕事とプライベートのバランスをどう取るかが悩ましかった。

「ゲームでは、普段の生活を送っている時に親の介護というイベントが起きる体験をしていただきます。その中で、自分自身の限られた時間をどんなことに使うのか、何を優先させるのか悩んでもらいます。すると、その方が大切にしている価値観が出てきます。『仕事命』の生き方が大事だと思っていたのに、ゲームをしてみると、案外プライベートを重視していることに気づくことも。なぜそうなったのか、プロセスを振り返ることで、自分の考え方の傾向が浮き彫りになることもあります。どのような生き方をしたいのか、それを実現するためには何が必要なのかを考えるきっかけにしていただいています」(佐々木さん)

介護の複雑さをリアルに表現

この体験会の後、参加者に感想を聞かせてもらった。

初めて参加した30代の女性は、子育てと介護のダブルケアの経験があり、ダブルケアの情報発信や研究事業などを行うNPO法人を発足。佐々木さんたちと新しいワークショップの開発を予定している。「介護の複雑な現状がリアルに再現され、作り込まれたゲームだと感じました。介護やプライベートより仕事を優先しても会社の業績は上がらず、家族との関係性も悪くなってしまうところがリアリティーを伴っています」と話す。

以前に体験会を訪れたことがある50代の女性も、実際に介護と子育てのダブルケアを経験。今後、ワークショップでファシリテーターを務める予定だ。「介護と仕事が同時進行にあって、そこで何かを選択するゲームなので自分事として考えられます。私自身、介護離職をしていますが、仕事復帰した後の方が精神的に余裕を持って介護できたので、仕事は辞めないでもらいたいです」と語ってくれた。

ファシリテーターを育成したい

これまでに「けあとの遭遇」に参加した人は、企業研修として実施した10社の従業員も含めて延べ400人ほど。濱さんは「体験者の中には、このワークショップの後に親御さんを亡くされ、ボードゲームを体験したからこそ最期に向き合って話ができたという方がいらっしゃいます。また、繰り返し体験会に参加している方も。ゲームをするメンバーが変わると、チームの雰囲気が変化するので、また違う視点を知ることができたり、自分の新たな価値観に気付いたりすることがあります」と話す。

現在は一般向けのワークショップを東京近郊で月に1、2回開催。and familyのウェブサイトやフェイスブックで日時を伝えていて、料金は基本的に1人2000円。来年度中には名古屋や大阪などの都市部でも行う予定だ。

ワークショップのファシリテーターも今の4人から、100人に増やすことを当面の目標に設定。介護現場での経験がある人を中心に育成し、有償で仕事をしてもらうことを考えている。社会の中で介護の状況が変われば、ゲームの内容も見直し、人生をリアルに疑似体験できる機会を作っていく。

(ライター 福島恵美、カメラマン 村田わかな)

佐々木将人さん
and family代表取締役。1981年神奈川県相模原市生まれ。2004年早稲田大学法学部卒業。04年丸善石油化学入社。16年ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営管理専攻修了(MBA)。19年and familyを創業。 介護離職防止対策アドバイザー(一般社団法人介護離職防止対策促進機構〈KABS〉)やハッピーエンディングプランナー(一般社団法人日本ハッピーエンディング協会)など介護、終活支援などの資格を持つ。
濱正樹さん
and family取締役。1981年長野県松本市生まれ。2006年中央大学文学部文学科卒業後、日本電気入社(営業)。12年FutureOne入社(営業)。16年ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営管理専攻修了(MBA)。19年and familyに取締役として参画。

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