多彩な記号で地球を網羅する野望 ソ連の極秘軍用地図

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

1968年の研修用ポスター。工場や発電所など、施設の種類ごとに異なる地図記号が用意されている(IMAGES FROM THE RED ATLAS: HOW THE SOVIET UNION SECRETLY MAPPED AMERICA, BY JOHN DAVIES AND ALEXANDER J. KENT, PUBLISHED BY THE UNIVERSITY OF CHICAGO PRESS)

冷戦時代、ソビエト連邦は世界の軍用地図を秘密裏に作成していた。それは、史上最も野心的な地図プロジェクトの一つであり、地球上のあらゆる場所の地図が大量につくられた。その数は百万枚を超えたとも言われる。

さらに、詳細な地図記号もつくられ、それらが何を示しているかがひと目でわかる研修用ポスターも作成された。これらを見れば、ソ連軍が独自の地図を作成するため、驚くほど多彩な記号を使っていたことがわかる。例えば、同じ発電所や工場でも、その種類によって異なる記号が使用されている。

同じポスターを拡大したもの。水力発電施設と風力発電施設の地図記号だが、風車(左下)と風力タービン(右下)が区別されている(IMAGES FROM THE RED ATLAS: HOW THE SOVIET UNION SECRETLY MAPPED AMERICA, BY JOHN DAVIES AND ALEXANDER J. KENT, PUBLISHED BY THE UNIVERSITY OF CHICAGO PRESS)

ポスターの寸法は約60×90センチで、英国の地図愛好家、ジョン・デイビス氏が、ラトビアの首都リガにある地図専門店で発見した。デイビス氏は10年以上にわたり、ソ連の軍用地図を研究している。これらのポスターは、1990年代初めにソ連が崩壊した後、この地図店の店主が大量の軍用地図とともに入手したものだった。デイビス氏は、2017年に英カンタベリー・クライスト・チャーチ大学の地理学者アレクサンダー・ケント氏との共著で「Red Atlas」(邦題『レッド・アトラス 恐るべきソ連の世界地図』日経ナショナル ジオグラフィック社刊)を出版。ソ連の研修用ポスターはこの本の中に登場する。

これらのポスターは、地図製作者の研修に使われていたのではないかと、ケント氏は推測している。「彼らはこうした記号を用いて世界の地図を描いていました。その際、共通の記号リストをつくったのではないでしょうか」。ポスターは、その記号リストの視覚的なガイドであり、実物イラストにそれを表す記号が重ねて描かれている。

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