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美しいって決めるのは誰 肥満も高齢も多様化する意識

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ナショナルジオグラフィック日本版

現代の欧米の基準では、細身であることが美しさの必須条件だった。だが肥満率が高まるにつれ、現実とファンタジーの乖離(かいり)が広がっていった。どう頑張ってもファンタジーに手が届きそうもないことに、人々はしびれを切らし始めた。ナショナル ジオグラフィック2020年2月号では、誰もが美しいと評価される時代に向けた社会の変化をリポートする。

◇  ◇  ◇

伝統的な美の基準にこだわり続ければ、ファッション業界は大きな商機を逃すことになる。クリスチャン・シリアーノら気鋭のデザイナーたちは、太めの顧客向けの服を作り、商業的に成功して、そのビジネス手腕を高く評価されている。今では超高級ブランドですら、太めのモデルを起用することは珍しくない。

とはいえ、美の基準が変わったのは、より多くのドレスを売るためだけではない。ビジネス上の理由だけなら、おしゃれを楽しみたい、楽しむ余裕もある太めの女性たちは昔からいたのだから、デザイナーたちはとっくに大きなサイズを扱っていたはずだ。ただ単に、大きいことは美しいと見なされていなかったのだ。

人々の意識は変わってきたが、ファッション業界は今も太めの女性に抵抗感がある。彼女たちを憧れの存在に祭り上げることに、美を判定する立場にある人々はためらっている。彼らにとって美の象徴には、細長いラインや、シャープな顔立ちが欠かせないのだ。

とはいえ、彼らも社会の変化と無縁ではなく、新しいメディア環境に身を置いている。一般の人々は、デザイナーが多様なモデルを起用しているかチェックしていて、そうでなければ、ソーシャルメディアで批判の声を上げる。そして、やせ細り、摂食障害に陥ったモデルたちの話が広く伝わるようになると、極端にやせたモデルを使うブランドを名指しで批判し、そんな慣行をやめるよう圧力をかけ始めた。たとえば、ウェブサイト「ファッション・スポット」は、多様性の監視役として非白人、トランスジェンダー、高齢、あるいはふくよかなモデルが全体の何割を占めているかを、随時調査し、報告している。

女性のデザイナーが年をとれば、中高年女性のための服を手がけそうなものだ。ところが彼女たちは、自分たちが生み出した若さを礼賛する風潮にどっぷり染まっていて、老けて見られることを恐れ、ボトックス注射を打ち、ダイエットに励む。業界用語では今でもあか抜けない服を「オールド・レディー(老婦人)」と呼ぶ。「メイトロンリー(年配婦人風の)」と言えば、おしゃれでないか、流行遅れのドレスのことだ。けれども、今や一般の女性たちは業界のこうした常識を当然とは考えず、高々と反旗を掲げる。

高級ブランドが中国や中南米、アフリカに販路を拡大するにつれ、デザイナーたちは文化的な地雷原を避けて、新たな顧客にアピールできる最善の方法を模索するようになった。踏むと怖い地雷原とは、アフリカの一部地域の美白ブーム、幼さを善しとする日本の「かわいい」文化、二重まぶたに憧れ、整形手術を受ける東アジアの女性たち、そしてほぼあらゆる地域にはびこる、肌の色が黒い人たちに対する差別だ。理想化された美には新しい定義が必要だが、一体誰がそれを決めるのだろう。

新たな発信者たち

欧米では、伝統的なメディアだけでなく、ソーシャルメディアや、多文化共生が当たり前の世界で大人になった、新世代のライターや編集者が影響力をもつようになった。1981~96年生まれの「ミレニアル世代」は、主流の文化に同調せず、そこから堂々とはみ出してみせる。どうやら美の新しい定義を決めるのは、一人ひとりが自分のメディアの表紙モデルとなる「自撮り世代」のようだ。

新しい美しさは髪形や体形、年齢や肌の色では定義されない。美意識の問題というより、自意識の問題、自己肯定感や個性の問題になりつつある。たるみのない腕やしわのない額といったものも自慢の対象になるが、突き出した腹や輝く白髪など、これまで隠すべき「欠点」とされていたものが誇示されることもある。

ニューヨーク発のブランドで、照明にも舞台装置にも予算をかけない、殺風景な会場でコレクションを発表している「ヴァケラ」もその一例だ。くしゃくしゃの髪をしたモデルがショーに登場し、観客にけんかを売るかのようにドタドタ歩いたり、つまずいて転びそうになったり、二日酔いのようにふらふら歩いたりする。

男性的なモデルが肩からシャワーカーテンのように垂れ下がるドレスを着ている一方で、女性らしい容姿のモデルが、背中を丸めて猛スピードで歩き去ったりする。ヴァケラの服を着ると、脚が太く短く、体はずん胴に見える。モデルは素人だ。街でちょっと変わった人を見つけてモデルとしてショーに出し、「これが今の美しさだ」と宣言する。実は、こうした手法を採っているブランドはヴァケラだけではない。

アパレルブランドの「ユニバーサル・スタンダード」が、米国サイズで24という超特大サイズを着る女性を起用し、少し前に広告キャンペーンを打った。その広告の写真では、モデルは体にぴったりフィットする下着を着け、白のソックスをはいてポーズをとっている。味も素っ気もない照明の下で、少し縮れた髪や、皮下脂肪の塊でぼこぼこした太ももがはっきり見える。オーラもなく、女性たちの憧れをかき立てる要素もない。現実にいる女性を誇張させたような興ざめな姿は、人気下着ブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」の華やかで、きらびやかなモデルたちとは正反対だ。

既存の美の概念は、音を立てて崩れ去ろうとしている。今ではこれが普通だと言われても、ユニバーサル・スタンダードの広告の写真が衝撃的なことに変わりはない。醜悪だとすら言う人もいるだろう。

多様な在り方を尊重し、平凡な容姿のモデルが求められる一方で、この女性が美しいとされることに当惑する人も大勢いる。彼らは体重90キロのモデルを見て、彼女が自信たっぷりなことを認めた上で、「こんなに太っていたら、体に悪いのではないか」とつぶやく。そうすることで、肥満女性も美しいという考えに、やんわりと異を唱えているのだ。

しかし実は、ユニバーサル・スタンダードのこのモデルが、ヴィクトリアズ・シークレットのモデルたちと同じように下着姿で脚光を浴びること自体が、こうした社会に対する抗議のメッセージにほかならない。そこに込められているのは、太っていてもモデルになりたいという主張ではなく、否定的な評価なしに、自分の体を受け入れてほしいという思いだ。米国社会には、彼女のような女性が太ったままでいることを容認しないような風潮があるからだ。

太った女性だけではない。高齢女性も自分たちの存在を認めてほしいと主張しているし、黒人女性も生まれもった髪のままで脚光を浴びたいと訴えている。

(文 ロビン・ギハン、写真 ハナ・レイエス・モラレス、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年2月号の記事を再構成]

[参考]ここで紹介した多様化する美をリポートした「美しいって決めるのは誰?」は、ナショナル ジオグラフィック日本版2020年2月号の特集の1つです。この号では、バイソン復活のため自然の復元を試みる人と、カウボーイ文化を守ろうとする人々との分断を取り上げた「分断される大草原」のほか、「米国最後の奴隷船」「フラミンゴのボブ」「カルダモンの森へ」など、様々な視点で地球の今をお伝えしています。

ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年2月号[雑誌]

著者 : 日経ナショナルジオグラフィック
出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,131円 (税込み)

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