検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

インドの魚料理食べた? 元IT社員が伝える母国の味

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

『ミシュランガイド東京 2020』のビブグルマン(価格以上の満足感が得られる料理)に初認定されたユニークな店がある。東京・銀座の「バンゲラズ キッチン」――アラビア海に面した南インドの町、マンガロール料理の専門店だ。オーナーは、マンガロール出身の両親を持つバンゲラ・プラシャントさん。大手IT企業の社員として2010年に来日した。

「なぜ、日本のインド料理店にはナンとカレーしかないんだろう」

来日早々、プラシャントさんは衝撃を受けた。食べ歩いたインド料理店の料理が、あまりにも本国の姿と違ったからだ。

「ナン」というのは、窯で焼いたインドのパン。一般家庭に窯はないので店で食べたり買ったりするものなのだが、プラシャントさんはインドの飲食店では頼んだことがなく、なじみの薄い食べ物だった。ポピュラーなのは、全粒粉を使い鉄板で焼いた「チャパティ」などの丸く薄いパン。「プーリ」と呼ばれる揚げパンも人気だ。マンガロールには「ニールドーサ」というこの地域ならではのパンもあった。餅のようにモチモチとした、薄い米粉クレープだ。

「インドで働いていたときも、日本からお客様が来るとよく『ナンが食べたい』と言われたんです。まるで理解ができなかったのですが、日本に来てなるほどと思いました」と言う。

もっと、ホンモノの母国の味を知ってもらいたい――。そこで、考えたのが海辺の町、マンガロールならではのインド海鮮料理を目玉とした店だった。プラシャントさん自身は、内陸部の町プネー出身なのだが、家では週に3、4回は魚介類を使った料理が食卓に並んだという。首都ニューデリーでも、マンガロールなどの海鮮料理はこの10年ほどで注目されてきているらしい。

実はプラシャントさんが飲食ビジネスを手がけるのは初めてではない。長く病を患った父を助けるために、大学生時代に家業の飲食業を手伝っていたのだ。レストランからバー、社員食堂まで手がける会社で、プラシャントさんは経営手腕を発揮。セントラルキッチンを構え、グループ全体で1日3000~4000食の料理を提供するほどのビジネスを切り盛りするようになった。

「マンガロールの近くにウドゥピというやはり海辺の町があるのですが、ムンバイやプネーの飲食店のオーナーはこの町出身の人が多い。一般的なインドの店ではオーナーはレジカウンターに座っているだけなのですが、ウドゥピのオーナーは、お客様に水を持って行ったり、掃除をしたり自分も働く。しっかりとしたおもてなしをするので、店の評判があがる。だから、わざわざ『ウドゥピ・マネジメント』と看板に掲げてお客様にアピールする店が多いんです」とプラシャントさんは説明する。もちろん、彼の店もウドゥピ流の経営だった。

しかし、「飲食業以外の世界も見た方がいい」という周囲のアドバイスなどから、日系IT企業に就職。運命の巡り合わせか、日本でまたレストランをオープンすることになった。

2018年1月に東京・銀座で「バンゲラズ キッチン」を開店したのに続き、19年5月には東京・江戸川に「バンゲラズ スパイスラボ」、同年8月には東京・千代田に「バンゲラズ キッチン 神保町」と、立て続けに出店。以前にも、多くの店を切り盛りした手腕をのぞかせる。ちなみに、江戸川の店の周囲には在住インド人が多いため、全国各地の料理と創作料理がコンセプト。神保町は広くインドの沿岸料理をコンセプトとし、各店のテーマを変えている。3店を食べ歩いても飽きないというわけだ。

さて、マンガロールの料理は魚料理が豊富なことに加え、ココナツやカシューナッツなどを多用するトロピカルな料理であるのが特徴だ。南部の東沿岸都市チェンナイやIT都市として知られる内陸部のハイデラバードといった、ほかの南インドの地域の料理に比べ、やさしい味わいであるという。「スパイスはクミンやコリアンダーが中心で、複雑な味わいだけれど風味が強すぎることがない。辛さも控えめです」(プラシャントさん)

もっとも、店で使うトウガラシにはこだわりがあり、マンガロールのあるカルナータカ州の特産品「ビャドギチリ」を使用している。味わいの良さに加え、「料理に着色料を使う店もありますが、これを使うときれいに真っ赤な色が出るんです」と言う。日本では手に入りにくいため現地から取り寄せているそうだ。

そのほかにも、日本ではあまり使う店はないという、料理や飲み物に独特の酸味を加える梅に似た味わいのマンゴスチン科の植物コカムの実を用いるなど、材料にはこだわる。インド料理には欠かせないギー(インドのバターを加熱して精製した澄ましバター)は、北海道産の材料から手作りしているそうだ。

「コカムは実の皮を乾かして使用するのですが、夏にこれを使ったドリンクを飲むと、体がすっと冷えるんです。とにかく効果がすごい。インドの伝統医学であるアーユルヴェーダに用いられる植物の一つなんですよ。マンガロール料理は、この伝統医学の影響があるものが多いんです」(プラシャントさん)

「バンゲラズ キッチン」のメニューブックは分厚く品数が多いため目移りするほど。肉料理も少なくないのだが、マンガロールの煮込み料理「プリムンチ」(マナガツオ、サバなどのカレー煮込み)やエビやマッシュルームの詰め物をしたイカなど、やはり海鮮料理の人気が高いようだ。

プラシャントさんに好きな料理を聞くと「スッカ」というギーやココナツ、数種のスパイスで肉や魚介類、野菜を炒めた料理があがった。「お酒のつまみにもいいんですよ」。ハマグリのスッカを頼んでみると、うまみたっぷりのカレーソースで包まれたハマグリが出てきた。確かに、ご飯やパン類がなくても、これだけで酒がすすみそうな一品だ。

実は、マンガロール周辺はインドでもよく酒を飲むエリアだという。「女性も飲みます。私の母もめちゃ飲みますよ」とプラシャントさんは笑う。好まれる飲み物は、ウイスキー、ラム、ブランデー、ビールなど。ちなみにビールは、ほかの酒類に比べ販売許可が取りやすいことから「ビアショッピー」というビール店が、今インドで急増中だそうだ。

日本のインド料理店は、酒を飲む場所というより食事をする店という印象が強いが、プラシャントさんの店は各店とも、酒のアテになる料理を意識的に多くラインアップしている。創作料理を置く「バンゲラズ スパイスラボ」では、2月からインド風アヒージョがメニューに登場する予定。鶏のレバーをギーとココナツオイルでアヒージョ風に仕上げたものだ。

「インド料理の世界で、日本でナンバーワンになりたい」というのがプラシャントさんの夢。「売り上げで一番とか、お客様数で一番など色々な尺度がありますが、私は信頼できるインド料理のブランドとしてナンバーワンになりたい。この10年日本のインド料理を見てきましたが、残念なことに『安い食べ物』という印象になってしまっているように思います。ですから、いい食材を使い、健康によい料理を提供し続けたい。子どもに『バンゲラズで食べていらっしゃい』と言ってもらえるような、誰もが安心できる店として広く認知されたら最高ですよね」

最後に、ミシュランのビブグルマンに認定されどう思ったかと聞くと、うれしい、ではなく「肩の荷が重くなった」という言葉が返ってきた。ビブグルマンの名に恥じないよう、やることがたくさんあるので、1日24時間では到底足りないという。

プラシャントさんの頭の中には、既に別のコンセプトの店がある。出店場所さえ決まれば、すぐにでもオープンしたいと意気込む。次はどんな店ができるのか、乞うご期待だ。

(フリーライター メレンダ千春)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_