2020/1/24

面接道場

その上で、明確な課題をお伝えすると、あなたはなかなかエピソードの具体化をしないんですよ。要するにビッグワードとか大枠しか話してくれなくて、早く具体化してほしいのに、ずっとヒントしか与えられていない感じ。具体的に言うと、って言っているのに全然具体的に言っていないし、むしろもっと抽象的になっていたりするのね。

エピソードをどうやって作るか。エモーショナルに語るってどういうことかわかりますか?

石井 ちょっとわからないです。

中北 石井さんのさっきのお話は感情が動かないんです。挫折経験ってすごく苦しいことのはずなのに、言葉が平たんやねん。なぜ留学で適応できなかったのか、なぜ理不尽と感じたのかとか、具体例がなくて大枠だけ話しているんです。

面接では短時間で相手(面接官)を動かすために話す必要がありますが、そのためには感情をつかまないといけない。ストーリーテリングの方法は、(1)感情を込めて話す(2)感情そのものを話す――という2つの方法があります。前者は難しいかもしれないですが、後者はエピソードを時系列で話すんじゃなくて、そのなかで誰の感情が具体的にどう変わって、自分がどう感じたのか、ということを話すんです。

例えば僕は留学でこんなつらい思いをした。そのときに友達がこんな話をして、お互いに泣いた。友達の話に対して僕はこう思って、だからもっと愚直に頑張らないといけないと実感したんです、とかね。これって感情をのせて話しているんじゃなくて、ただ感情自体について話しているだけなんです。でも聞いている人は感情移入しやすくなります。

感情+自分の意思=忘れられないエピソード

中北 このときに押さえたほうがいい感情は3つあって、まず笑い(もしくは悲しみ)と感動、この2つの感情を行ったり来たりできることが大事。そして今の時代に重要なのが「ためになる」ということ、つまり学びですね。なぜかと言うと、他人にシェアしたくなるでしょ。これはトークだけでなくイベント企画とかにも応用できる視点です。

もう一つ、これは上級者向けですが、さきほどの「笑い」「悲しみ」「感動」の3つに30%くらいの毒を盛る。それが記憶を呼び覚ますアンカーになって忘れにくくなるんです。毒とは何かというと、自分の意思です。それはまだ難しいと思うので、まずは感情を語る、そして学びで締めるとすごくいいです。そうすると面接官も、あなたの経験や学びが自社に生かせそうだなって思えるんです。

石井 感情って僕の主観なので、相手と認識のズレが生じることもあるんじゃないかと思うのですが。

中北 まさに主観だからいいんですよ。あなたがうれしいと思うことを、相手がうれしいと思う必要はないじゃないですか。自分が受験勉強はやりがいがあったけど、ある人から見たら気にくわないやつだなと思われていても、別にいいやん。あなた固有の体験と、どんな意思を持っていたのかということから、石井さんがどんな人物かを知ることができるのが、面接において重要なんです。

(文・構成 安田亜紀代)

中北朋宏
浅井企画に所属し、お笑い芸人として6年間活動。トリオを解散後、人事系コンサルティング会社に入社し、内定者育成から管理職育成まで幅広くソリューション企画提案に携わる。その後、インバウンド系事業のスタートアップにて人事責任者となり、制度設計や採用などを担当。2018年に人材研修コンサルティングなどを手掛ける株式会社 俺を設立し、社長就任。

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