台所番長が推す 今後も使える2020年のトレンド鍋8選
合羽橋の台所番長が料理道具を徹底比較
合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。トレンド鍋やインスタ映えする鍋を中心に、2020年に流行している鍋料理道具を紹介する。
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こんにちは、飯田結太です。立春を過ぎましたが、まだまだ鍋ライフはやめられません。鍋料理は日本文化の一つですが、時代とともに料理方法が進化し、それに合わせて鍋道具も進化しています。今回は、20年の鍋ライフに合わせて進化した、ユニークな鍋道具を取り上げます。来冬以降もまだまだ役立つこと必至。もちろん、すぐに手に入れて残りわずかとなった今シーズンの鍋ライフを盛り上げるのもありです。(価格はすべて飯田屋店頭価格、税別)
火鍋より欲張りに楽しめる3層鍋
辛いスープと白湯スープを同時に楽しめる中国料理の火鍋(2層鍋)。最初に見たときは感動したものです。でも今や定番の鍋料理ですね。以前、小さな子供がいるという男性が来店し、火鍋を購入していきました。その方は「子供は辛くない鍋料理、でも私は辛いスープで食べたいので、火鍋用の2層鍋がちょうどいい」と言っていました。なるほど!ですね。家庭で食べるとき、子供の味覚に合わせることが多いですが、2層鍋ならその必要はありません。親も子供も一つの鍋をつついて楽しめるなんて、いいアイデアですよね。
最近は、2層鍋を使って、一つはチーズフォンデュに、もう一つはチョコレートフォンデュにしてスイーツとして提供する店も登場しています。2層鍋はアイデア次第でいろいろな楽しみ方ができるのです。
さらに話題になっているのが、3層鍋の「UK アルミホットパン 3仕切」(三宝産業)です。3つのスープで楽しめることはもちろん、好みの違う家族が一緒に1つの鍋で違う味を楽しむことができると好評。三宝産業は、新潟県燕市にある、ホテルの厨房やビュッフェスタイルレストランなど、業務用の調理道具の老舗メーカーで、今までは業務用としての需要が大半でしたが、2層鍋、3層鍋の登場で、家庭で楽しみたいという方にも人気でヒット中です。
話題沸騰のおひとり様用の火鍋
もうひとつ、火鍋ブームとおひとり様食事ブームの両方をけん引しつつあるのが、おひとり様用の小さな2層鍋です。直径14.8センチと鍋としては小さめで一人分にぴったり。2層に分かれているので、2種類のスープで楽しめます。これは、業務用としての需要がほとんどでしたが、最近は家庭用として購入する人も多くなっています。
その理由は、食品メーカーが発売している鍋用のキューブのヒットのおかげ。キューブ1つで1人前用の鍋が手軽に楽しめることから、1人暮らしの人や、帰りの遅いお父さん用としてちょうどいいと購入していく人が増えたようです。本来は、チーズやチョコレートフォンデュ用の鍋ですが、使い方はこれからも広がっていきそうです。
鍋もハイブリッド、利用法がひとつでは物足りない
10年以上前になりますが、モロッコの蒸し料理に使われるタジン鍋が日本で空前のブームになりました。それからタジン鍋は日本の鍋料理の一つとしてなじんでいますが、今またタジン鍋人気が上昇しています。その理由は、ヘルシー志向の人が増えたこと。
ダイエットや健康を考えて、食事は野菜から食べる「ベジファースト」という言葉がありますが、野菜や肉、魚の栄養をあまり逃さずヘルシーに食べる調理法が「蒸し料理」です。タジン鍋は、独特のとんがり帽子のようなふたのおかげで、栄養分を逃さず簡単においしい蒸し料理ができる鍋。手軽にできることから改めて見直されているのです。
しかし、ブーム当時のままのタジン鍋ではないのが日本らしいところ。頻繁に蒸し料理を作る人は少ないだろうと、ならば、ふたをもう一つ付けて、すき焼きもできるようにしようと開発されたのが、イシガキ産業「ブローディア IHタジン鍋」です。タジン鍋は収納しにくい部分が弱点だったのですが、すき焼きなどほかにも利用できるなら、収納のしにくさはさほど重要ではなくなるかもしれません。
しゃぶしゃぶ進化系鍋
しゃぶしゃぶっておいしいですよね。鍋料理の中でも高級料理のひとつ。そのしゃぶしゃぶが進化しています。ひとつは「焼きしゃぶ」。鍋の中心で焼き肉をして、その肉汁が周りの鍋に入ることで、スープのうまみが増し、よりおいしくしゃぶしゃぶも楽しめるというもの。焼きしゃぶができる鍋が下の写真のもの。
鋳物なので、焼き肉はじっくりと焼けて、スープも冷めにくいので、ゆっくりと食事を楽しむことができます。焼肉はどちらかというと忙しい食事ですが、これなら、せかせかと肉を焼かなくても大丈夫。焼きプレートは取り外せるので後片付けもラクです。
もう一つのしゃぶしゃぶ進化系鍋は、一見くぼみのあるプレートのようなもの。中心にある直径18.5センチ、深さ5センチのくぼみは、だしを入れる場所。その周りのフラットな皿のような部分にしゃぶしゃぶしたい食材を載せて、テーブルに出します。食べたい分だけだしの中に入れて食べるので、煮えすぎることなく、楽しめるのです。IHにも使用でき、フラットな皿部分は熱が伝わりにくいので具材が温まってしまうこともありません。
パーティーなら、前もって具材を載せて冷蔵庫にそのまま入れておけば、さっと取り出して提供できるので手間要らず。食材を載せる皿が必要ないので場所もとりません。食材の盛り付け次第でゴージャスな料理にもなるので、パーティーの演出に困っている方にもおすすめです。
鍋料理をおいしく演出するアイテム
鍋料理は、専用のものを用意しなくても、食材とスープさえそろえばどんな鍋でもおいしくできます。しかし、鍋料理の雰囲気も楽しみたいですよね。レストランや専門店で堪能するように鍋料理をもっとおいしく演出してくれるアイテムを紹介します。
おでんは、土鍋でも普通の鍋でもできますが、おでん専門店に行くと、大きな鍋の中に、仕切りがあって、そこから選ぶのが楽しいですよね。おでん用の鍋を買わなくても、おでん専門店のような雰囲気を楽しめるのが関川鋼販「フリーサイズおでん仕切り」です。これは、直径約20~30cmの鍋に対応。この仕切りがあるだけで、おでんがおいしく感じられるから不思議です。気分はおでん専門店です。
今、業務用として爆発的にヒットしているのが、バーニャカウダ用、チーズフォンデュ用の小鍋です。色も赤、白、茶の3種類あり、卓上に置いてもおしゃれです。陶器製なので、まずは別の鍋でソースを作ってこちらに移してからキャンドルで温めながら食べるのがおすすめ。女性が多いパーティーなどでこの鍋を出せば、一目置かれることまちがいなし。お酒を飲みながらつまみとして楽しむときにも便利です。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
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