体に優しく美しく 専門家に聞いたレモンサワーの魅力
居酒屋さんで、「とりあえず生ビール!」と言っていた時代から、今や「とりあえずレモンサワーください!」がトレンドの時代。古くから親しまれてきた飲み物ではあるけれど、近ごろはSNS映えするオリジナルのレモンサワーを出すお店が続出し、全国各地でイベントも開催されています。今改めて人気の「レモンサワー」、略して「レサワ」に注目。おいしいだけじゃないレサワの魅力を探ってみました。
チューハイとサワーって同じもの?
ところで皆さん、「チューハイ」と「サワー」には、どんな違いがあると思いますか?
その違いを探るべく、宝ホールディングス環境広報部 専任課長の奈良有里代さんに話を伺いました。
「結論から言ってしまうと、チューハイもサワーも基本的には同じもの。チューハイはその名の通り、焼酎を炭酸飲料で割ったものです。チューハイのほうが少し歴史が古く、戦後(1950年代)に東京の下町で今のチューハイの起源となるものが誕生したと言われています」(奈良さん)
当時、ウイスキーに憧れはあるけれど高くて手が出せなかった人たちは、安く手に入る焼酎を炭酸で割り、レモンスライスを浮かべたものを『焼酎ハイボール』と呼んで楽しんでいたんだとか。ウイスキーの色に似せて梅のシロップなどを少し加え、ほんのり琥珀(こはく)色にしていたんだそう。
「1965年ごろには、レモンサワーが誕生します。諸説ある中で有力なものは、東京・中目黒のもつ焼き屋さんが『さわやかな飲み物=サワー』として出した、甲類焼酎の炭酸割りにレモンを入れたものが最初と言われています」
そもそも焼酎って何?
ここで、「焼酎」について簡単に説明をしておきましょう。
「焼酎の原料は、サトウキビや米、芋、麦、トウモロコシといった穀物です。それらを発酵させ、さらに蒸留すると焼酎になります」
この蒸留の工程で、連続式蒸留機で蒸留した(蒸留の回数が多い)ものを「甲類焼酎」、単式蒸留機で蒸留した(蒸留の回数が少ない)ものを「乙類焼酎(本格焼酎)」と分類されます。
「原材料の風味を生かした『乙類焼酎(本格焼酎)』は、そのままストレートやロックで飲むのがお勧め。チューハイやサワーには、クセのない『甲類焼酎』を使用しています」
現在は、「チューハイ」も「サワー」も、焼酎に限らず「蒸留酒」を炭酸で割ったもの、として広まっています。コンビニエンスストアなどで缶入りのチューハイを買ったとき、原材料に「スピリッツ」と書かれているのを目にしたことがあるのではないでしょうか。
「アルコール度数の高い『蒸留酒の総称』をスピリッツと言います。焼酎のほか、泡盛、ウオッカ、ジン、ウイスキーも蒸留酒。ちなみに、ウオッカ、ジン、テキーラ、ラムが世界4大スピリッツと呼ばれています。日本の酒税法では、焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒はスピリッツに分類されています」(奈良さん)
最近の糖質オフブームの流れから、焼酎を好んで飲む、という人も多いはず。でもなぜ焼酎は糖質オフなの? 「焼酎を製造する過程で出てくる『蒸留』という言葉。フラスコを使った理科の実験をイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。蒸留させることで、蒸発する成分が集まりアルコール度数が高くなり、逆に糖分など蒸発しない成分は取り除かれます。焼酎をはじめとした蒸留酒が糖質オフなのは、そのためです」(奈良さん)
続いて、レモンサワーに欠かせない「レモン」についてご紹介。レモンの栄養成分は「ビタミンC」だけではありません。
レモンにはうれしい成分がたくさん
レモンサワーの主役でもある「レモン」。ポッカサッポロフード&ビバレッジ レモン食品事業部の武田吏加さんに、レモンに含まれる成分について話を聞きました。
「レモンにはさまざまな成分が入っています。主な成分の、酸っぱさのもとである『クエン酸』、抗酸化成分の『ビタミンC』、皮部分に多く含まれる『ポリフェノール』、爽やかな香りの成分『リモネン』の4つを知っておいてほしいですね」(武田さん)
【クエン酸】
日本人に足りていないと言われているカルシウム。女性は加齢や閉経などホルモンの減少が要因で、骨粗しょう症につながりやすいことが分かっています。また、これから妊娠・出産を控える人には積極的にカルシウムを摂取しておきたいもの。しかしこのカルシウム、吸収されづらいミネラルでもあるのです。
「例えば牛乳を飲んでも、体に吸収されるのは40%ほど。しかし、レモンと一緒にカルシウムを含む食材を摂ることで、レモンのクエン酸の働きによりカルシウムを吸収しやすい形に変えてくれます。この働きを『キレート作用』と言います。レモンサワーを飲むときは、焼き魚などカルシウムを含む食材を使った料理をチョイスするといいですね」
また、クエン酸は疲労回復にもお勧め。継続的にレモンを摂る生活を心掛けたいところです。
【ビタミンC】
レモンと言えば、ビタミンCのイメージが高いですよね。「美容に気を使う女性のキレイをサポートしてくれます。レモンサワーとして飲むだけでなく、揚げ物などに添えられているレモンもぜひ搾って」
【ポリフェノール】
ポリフェノールは黄色い皮の部分に多く含まれています。「レモンの酸味と香りが揚げ物などをさっぱりさせてくれます。香り成分は皮に含まれているため、皮の部分を下にして絞るとレモンの香りが際立ちます」
また、レモンは塩分摂取過多によるむくみが気になる人にもお勧めしたい。クエン酸の酸っぱさが塩分の摂りすぎを控えてくれるんだとか。「料理の味が物足りないからと、おしょうゆなど塩分をプラスするのではなく、レモンの酸味や香りを上手に使うことによって減塩にもつながります」
レモンサワーと一緒に揚げ物、なんて最高の組み合わせもダイエット中の人は避けてしまいがち。そんなときは、レモンを上手に活用することをお勧めします。
【リモネン】
黄色い皮に含まれる成分リモネンは、気分をリフレッシュしたり、リラックスにつながります。
実は日本ではレモンの歴史はまだまだ浅いんだそう。「1957年、バーで出すジンフィーズなどのカクテル用としてクエン酸を配合して作られたレモン商品がポッカレモンの始まり。生のレモンが輸入自由化されたのが1964年。その後、食の洋風化などが進み、レモンも今のように身近なものになりました」
以下、家飲みレモンサワーをおいしくするコツをご紹介。ほんのちょっとの手間が、おいしくなる秘訣です。
家飲みレモンサワー おいしくするコツは?
仕事終わりや休日に「家飲み」するのは、至福の時ですよね。レモンサワーを家飲みする人も、多いのではないでしょうか。バリエーション豊富な缶チューハイももちろん良いけれど、ここは一つ、ほんのひと手間かけてみませんか? レモンサワーがグッとおいしくなる手作りのコツを、宝ホールディングスの奈良さんに聞きました。
おいしいレモンサワーの作り方
1.「甲類焼酎」などのお酒、炭酸水は冷蔵庫でよく冷やしておく(グラスも冷やしておくと、よりおいしい)。
2.レモンはフレッシュな生(ノーワックスレモンがお勧め)を使おう。レモンをくし形にカットしたら、時間のある時は冷凍庫で凍らせておくと、氷の代わりになりレモンサワーが薄まりません。
3.よく冷やしたグラスに、お酒、レモン、炭酸水を入れる。おいしいレモンサワーの割合は、アルコール度数25%の甲類焼酎の場合、「1:3」(お酒1割に対して炭酸水3割)。アルコール度数が高い場合は、炭酸水を多めにしましょう。
4.ゆっくりと1回ステア(かき回す)する。
「『甲類焼酎』と一口に言っても、コクのあるもの、さっぱりした飲み口のものなどさまざまなタイプがあり、それによってレモンサワーのバリエーションも広がります。いろいろと試してみて、自分に合うお好みのレモンサワーを見つけてくださいね」(奈良さん)
ますます進化が止まらないレモンサワー。おいしいからと言って飲みすぎは良くないけれど、レモンの効能も上手に摂り入れながら、今夜も楽しく飲みましょう。
(写真・文 尾崎悠子=日経doors編集部)
[日経doors 2019年9月20日付の掲載記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。