令和初の年の変わり目を迎えたということもあるので、今月はエネルギーという大テーマを俎上(そじょう)に載せて草刈と話し合ってみよう。
利権から脱して産業を創る発想を
草刈貴弘(以下、草刈) 通常なら20年以降の相場展開や経済状況、米中問題のこれからをテーマに話をするのが自然かもしれません。ですが今回はエネルギーのことについて話してみたいと思いました。なぜかというと、日本のエネルギー政策が時代の流れに合っていないような気がするからです。
世界的には再生可能エネルギーの普及・拡大が進んでいます。欧州はもちろん、米国も実はかなり導入が進んでいる。はっきり言って日本だけが停滞しています。原子力発電の再稼働を念頭に置いて、送電容量の観点から再生可能エネルギーの流通が絞られてしまうのは残念ですよね。
澤上篤人(以下、澤上) 日本がこれほどまで原子力発電にこだわるのは、各方面で利権がはびこっているからだろう。原発建設に当たっては、その20~30年前から土地収用などで政治、つまり税金が動く。建設中はもちろん、稼働後も多くの企業に大きなビジネスをもたらす。そう、既得権益だ。
周辺地域も原発がなければ生活が成り立たないほどに依存度が高まってしまう。電力会社は原発という巨大システムの運営と管理で、政治と密着していく。これだけ癒着の構造が出来上がってしまったら、国としては原発廃止など考えられないだろう。
確かに資源の乏しい日本で全発電量の二十数%を賄っている原発なかりせば大変なことになる、という建前論は説得力がある。しかし、そこで思考停止に陥っているのも事実。それが故、日本のエネルギー政策の議論はさっぱり前へ進まないのだ。というか、将来を見据えた新たな布石をあえて打とうともしない。
草刈 化石燃料を輸入するため、毎年10兆円を超えるお金が海外に流出しています。その一部でも日本に留め、再生可能エネルギー分野に投資する。そうやって新産業の創生を考えた方が、将来にわたっても意味があると思うのです。
最近は、事業の選択と集中を迫られ、太陽光発電や風力発電の分野から撤退する日本企業が増えています。これらの分野で日本企業は非常に高い技術力を持っている。世界的には伸びる分野とされているのに、日本では撤退の対象になってしまう。各企業固有の事情によるところが大きいのでしょうが、やり切れないです。