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日立がHRテックで診断 業績を上げるチームの特徴は?

日立製作所人財統括本部 大和田順子氏(下)

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NIKKEI STYLE

人事領域で最新テクノロジーを活用して、効果的な施策の実現や課題解決に役立てる「HRテック」が注目を集めている。前回の「人事IT化のプロが日立で挑む 業績上げる仕組みとは」では日立製作所の大和田順子氏にHRテックに取り組むようになった経緯と同社システムの概略を伺った。今回はさらに日立での運用実績も含め、システムの詳細を聞いた。

生産性のベースは心身の健康を保てているか

白河桃子さん(以下敬称略) 前回お聞きしたように日立のHRテックである「生産性サーベイ」と「配置・配属サーベイ」で測定分析をした結果、業績のいいチームは生産性サーベイの結果も高いことが分かったそうですね。御社の場合、1万人という規模で自社データが取れるのは強みですし、この分析結果を生かさない手はないですよね。ちなみに、生産性を測るポイントは、どこになるのでしょうか? 

大和田順子さん(敬称略) 「より短い時間で、より大きな質の高いアウトプットができる人は誰だろう。その人はどういう行動を取っているんだろう」というアプローチで分析をした結果がこちらです。

まず、土台となるのが心身調整度。心身の健康が保てていることですね。次に、自分の役割をしっかりと理解して、成果に結びつけようとしているか(役割理解度と成果意識度)。例えば、営業の訪問に行く時に、「今日はお客様の課題をしっかり伺って、マッチする解決策を提案してくるぞ」という意識を持てる人と、「今日はとりあえずパンフレット渡して、向こうの上司と仲良く話せればいいんだ」という意識しか持てない人とでは、その後のアウトプットが大きく変わってきます。加えて、計画段取度。作業を計画的に進められるかどうかですね。

さらに大きな価値が出せる人になると、多様性関心度や挑戦意欲度が高くなります。さまざまな対象に関心が向き、挑戦する意志を持てる人が、創造性が高くなるということですね。

白河 興味深いのは、健康がやはりベースにあるのだということですね。

大和田 はい。心身を整えることで、他の因子も高まることが分かっています。ここまでお話ししたのは、個人の内面についての因子ですが、もう一つ、組織因子もあります。つまり、「どういう組織であれば個人の生産性は高まるか」という観点ですね。

意思決定過程が明確であること(意思決定過程浸透性)、個人の自律を尊重してくれること(自律尊重性)、成長を支援してくれること(成長支援性)、目標が明確であること(目標明確性)、いろんな働き方が認められていること(働き方許容性)の5つの因子があります。

白河 生産性を高めるには、個人の意識だけでなく、組織の因子も重要だということですね?

大和田 組織の影響度はとても大きいです。特に、マネジャーの影響ですね。同じメンバーのグループでも、マネジャーが代わっただけで業績が大きく変わることはよくあります。個人一人ひとりのモチベーションを高めるために、組織側の自律尊重性や成長支援性を高めて全体の生産性向上をはかるという打つ手も設計できます。

大和田さんの役職と略歴
役職:日立製作所 人財統括本部 システム&サービス人事総務本部 ヒューマンキャピタルマネジメント事業推進センタ ピープルアナリティクスラボ エバンジェリスト

略歴:ロンドン大学MBA、筑波大学カウンセリング修士、ロジスティクス経営士。日本電信電話を経て、2001年リクルートグループへ。リクルートマネジメントソリューションズ執行役員、リクルートキャリア執行役員、フェローを歴任する。17年に日立製作所に入社

白河 なるほど。そして、もう一方が、「配置・配属サーベイ」ですね。

大和田 こちらも、個人因子と組織因子があります。個人因子となるのは、自分の性格ややりたいことに業務が合っているか(特性希望適合度)、組織に貢献している意識が持てているか(組織貢献意識度)、周りの人と安心して仕事ができているか(対人関係安心度)、適度に刺激がもらえているか(相互刺激感知度)、評価に納得できているか(評価処遇納得度)、自分の仕事の役割や意味を理解しているか(役割意味理解度)。さらに、組織因子としては、役割が明確であること(役割明確性)、価値観が調和していること(価値観調和性)、お互いを大事にできること(相互尊重性)、居心地のいい環境であること(環境快適性)、成長を促してくれること(成長促進性)の5つが挙げられます。

白河 今おっしゃった組織因子は、人によって影響度が違ってくるのでしょうか。例えば、「成長意欲の高い人にとっては、成長促進性がより重要になる」というふうに。

大和田 人によって違ってきますね。その人が組織に何を強く望むかによって変わります。部署単位でもカラーの違いは出ますね。

フィット感を感じられない理由や課題が分かる

白河 例えば、昇進してマネジャーになったけれど、フィット感を感じられていない人も、このサーベイによって発見できたりするのでしょうか。例えば、「自分はずっとコツコツ技術を磨きたい職人気質で、マネジャーには向いていない」とか。

大和田 マネジャーに向いていないかどうかは難しいですが、今の自分がフィット感を感じているかどうか、感じていないならどの因子が課題かが分かります。

白河 すると、本人は結果を見て「やっぱりそうか」と納得するわけですね。

大和田 そうですね。

白河 形式としては質問に答えていく方法で、設問数は33問。この数なら、回答の負担もそこまで感じないですね。以前伺ったことのある他社のサーベイは100問近くあって「これに答えているだけで生産性下がっちゃうかも」と思ったのですが(笑)。

大和田 答えるのに疲れないように、できるだけシンプルに設計しました。

白河 これは回答した本人だけでなく、マネジャーも見られる?

大和田 はい。評価には使わないルールになっているので、あくまでマネジメントのツールとして活用されています。

白河 「評価には使わない」のですね。自分の部下の生産性状況を一覧で見られて、問題を発見したら個別にアプローチすることができる。同時に、マネジャー自身のセルフチェックもできて、チーム全体の状況が分かるということですね。

大和田 スコア表は、高い点数は青色で、低い点数は赤色で記載されるのですが、配置・配属サーベイの結果がマネジャーは青いのに、部下は真っ赤だったり、逆に部下は皆青くてご機嫌なのに、マネジャーだけ真っ赤だったりということもあります。後者は、マネジャーが無理して全部背負い込んでいるパターンですね。

白河 そういう場合には、人事が介入するのでしょうか?

大和田 当社の場合、人事が介入するにはするのですが、「本人が気づいて自ら変えていく」という方法を重視しているので、あくまでサポート役です。具体的には、マネジャー向けのワークショップを実施して、何人かのグループになって、その中でお互いのスコアを見せ合って悩みを共有したり、アドバイスを送りあったりしてもらいます。周りの力を借りながら問題解決する機会を提供しているのです。

白河 真っ赤なスコアを見せたら、「できない上司と思われるんじゃないか」という不安はないのでしょうか。

大和田 日立にはスコアを見せ合えるだけの心理的安全性がすでにある、と言えるのかもしれません。「お互いにもっと自己成長しよう」というポジティブな雰囲気が醸成されています。研修の最後には、「今後、部下に対し、こういう働きかけをしていきたい」と宣言書を書いてもらっています。

研修の効果測定にも活用

白河 なるほど。サーベイの結果だけ提示するのではなく、ワークショップなどでフォローすることで、データを生かす工夫がなされているのですね。他にも、サーベイの活用例はありますか?

大和田 研修の効果測定にも活用を始めています。創造性を高めるための施策として、「WILL、CAN、MUSTが重なるキャリア開発をしていきましょう」という趣旨の研修をマネジャー向けに用意したんです。その研修を受けたマネジャーの部下は、受けていないマネジャーの部下に比べて、自律尊重性が上昇したという結果が出ました。

白河 研修の成果が客観的に可視化されるのはいいですね。

大和田 一般的に、業績がいいと組織診断サーベイの結果が全体的に上がるということが知られています。ただし、大事なのは、会社の環境がいい時も悪い時も、あらゆる時に業績を上げ続けられる基盤をつくること。業績がいい時しかサーベイの数字が上がらないのであれば、勝ち戦しかしない傭兵(ようへい)になってしまいますので、どんな時でもモチベーション高く、会社をよりよくしていこうと行動できる人を育てていけるかが大切だと考えています。そのためには、やはり普段から地道に手をかけ続けていくことですね。

白河 サーベイを続けていくことのメリットは、他にもありますか。

大和田 社内で同じフレームワークを意識できるようになる、というメリットは大きいと思います。ホワイトカラーで「生産性を上げなさい」と言われても、何から始めていいか分からない人が、きっと多かったのではないかと思います。サーベイによって生産性を高める行動や意識について共有されてきたことで、「まずは体の調子を整えて、段取りよく手を動かして、創造的に思考することだ」と、同じフレームワークで上司部下間のコミュニケーションがとれるようになったことは、意味があったと思います。

白河 それは大きな進化ですよね。上司と部下が1対1で定期的に面談する「1on1(ワン・オン・ワン)ミーティング」を形式的に導入しても、なんとなく話すだけで実のあるコミュニケーションにしていない会社は山ほどあるようです。組織内で共有できるフレームワークがあれば、「君は多様性関心の部分がもう少しだね」とか「でも、挑戦意欲は上がっているよね」というやりとりが可能になりますよね。部下も安心して相談できますし、上司も確信をもって向き合えるのではないでしょうか。

大和田 たしかに、導入していただいたメガバンクのお客様からも、その点を喜んでいただけました。「このフレームがあれば、コミュニケーションがしやすくなるね」と。

部下の胸のうちも早めにわかる

白河 なんとなく漠然と叱っちゃうのが一番ダメで、かといって、労働時間や業績の数字だけでは、何をどう意識すべきなのか分からない。組織が生産性を高めるためのより具体的な言語化を進めるために、サーベイが役立っていることがよく分かりました。

大和田 なかなか見えづらい部下の胸の内を早めに察知するのにも役立つツールになっています。特に若い社員は、経験不足から不安を感じやすいものですし、いつのまにかモヤモヤをためて、ある日突然、辞めてしまうことがあるわけです。ハイパフォーマーなのに、実は心の中では「今の部署は自分に合っていない」と感じていたり。そういった不満や不安をサーベイによって見えやすい状態にして、アラートが見つかれば、「どうしてそう思うの?」と早めに聞いてあげることによって、打つ手になります。

白河 そこはやっぱり人対人の領域なのですね。「評価には使わない」という安心を約束した上で、自己成長にも問題の解消にも使えるツールであること。データを取って終わりではなく、「生かす仕組み」をつくっていくこと。組織の成長につなげるHRテックのあり方がイメージできました。これからもサーベイの運用を継続していくということですので、さらなる成果を楽しみにしています。

あとがき:HRテックというと、人事の事務手続きを簡素化するもの、またはタクシー広告で見るような「あなたの会社の社員を最適配置」というものを想像します。しかし後者については「そんなに単純に効果が出るものだろうか」と思っていました。今回、説明していただいて、適切に使えば、上司と部下のコミュニケーションに貢献し、フレームワークを共有できることが納得できました。そのためには「評価に使わない」など、データ活用のルールが重要で、データをポジティブに使うための「心理的安全性」も欠かせません。「戦略人事」としてのデータ活用についてイメージが今回の対談でよくわかりました。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(文:宮本恵理子、写真:吉村永)

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