ここさえ見れば「必ず見つかる」

「人間の集中力は、そんなに長時間は続かない」という谷口氏が勧める仕事術は「細切れ処理」だ。トータルで3時間はかかりそうな業務であれば「1時間×3本」に分割できないかを考えてみる。連続した3時間を割り当ててしまうと、集中力が衰えてしまうせいで後半は能率が落ちる。結果的に成果物のクオリティーも下がってしまいがちだ。谷口氏は「1時間ごとであれば集中力を保ちやすい。同じ日でなくても構わないタスクなら、別の日に分けて新鮮な気分で向き合うと、別のアイデアがわく可能性も高まる」と、細切れ処理のメリットを説明する。場合によっては、ABCの3本に割ったうちのBだけを別の人に任せるという業務分担も選択肢に加えられる。「自分一人で仕事を抱え込んでしまわないためにも『この業務を分割できないか』と考えてみたい」(谷口氏)

用件を書き込むのにはグーグルカレンダーを使っている。一方、気づきや出来事を書き留めるのは手書きのノートだ。A5判のシステム手帳と自作のリフィルを使っている。同じような用件を繰り返し書き込むにはグーグルカレンダーが向く。しかし、自在にスペースを使って書き留める場合は紙の手帳のほうが使い勝手がよい。谷口氏がデジタルとアナログを併用する理由だ。手書きの記録は1冊の手帳にまとめている。「あちこちに書くと紛失や見落としのリスクが高まる。仕事もプライベートも手で書き込むのはこの手帳だけ。ここさえ見れば、必ず見つかるという安心感は大きい」と、谷口氏は分散書き込みを戒める。

毎晩の読み返しで効果アップ

無駄を省いたりスキルを高めたりする効果を引き出すうえでは、毎晩の読み返しが大きい。手書きのメモを読むうちに「次はこう改めよう」「これは効果が薄かった」など、感想や反省が思い浮かぶ。その気づきも手帳に書き込む。そうした自分流の「カイゼン」案が積み重なって、段取りがバージョンアップしていく。「あの仕事は最初に引き受けるタイミングが遅かったせいで、最後がドタバタになった」という反省を導くことができたら、次の引き受けにあたって「早めにパスをもらいに自分から働きかけるという、手順の改良を試せる」(谷口氏)。スケジュールに追われないよう時間を操るスキルは、成果物の質を高め自分の評価も上げてくれる。

仕事に追われて、プライベートの行事を犠牲にした人は少なくないだろう。谷口氏は「プライベートでも自分にアポイントメントを入れておけば、大事な家庭のイベントをすっぽかす失態を避けやすくなる」と「自分アポ」を勧める。人間ドックや学校参観、結婚記念日などおろそかにしたくないイベントに関して、きちんと時間を割くためには「カレンダーサービスのアラート機能を活用すれば、うっかり忘れを防げる」。パートナーの予定を書き込んでおけば相手のスケジュールに合わせたイベントの組み立ても容易になる。職場の飲み会のような自分の用事をパートナーに早めに伝えておくのは、相手の時間を大切に思う気持ちも示すことにもなる。

「自分の記録は、誰も残してくれない。アイデアや感想もすぐ忘れがち。自分で主体的に書き留める意識を持たないと無駄に時間と記憶が流れ去ってしまう」と谷口氏は書き留める習慣づけを提案する。一般的には手帳には先々の予定を書き込む人が多いが、谷口氏は驚きや不満、発見などの感情も含めて記録する価値があるという。「後になって『くだらないことで腹を立てていたものだ』『あの時、そう感じていたのか』と思い返すことは自分を知るうえでまたとない手掛かりをくれる」。手帳1冊で仕事がスムーズに進み気持ちが穏やかになれるのなら、極めて効率の良い投資だろう。ちょうど1月始まりの手帳を使い始めた人は余白をもっと活用してみてもよさそうだ。

谷口和信
1966年生まれ。92年大学院修士課程修了後、大手建設会社設計部入社。長時間労働が続いたストレスから軽度の鬱を発症したが、予定やタスク、行動結果の見える化を通して業務を効率化。手帳やノートの使い方で有名になり、本業のかたわら、時間活用コンサルタントとして活動。セミナーや勉強会を開催。著書に『仕事が速くなる! PDCA手帳術』がある。

時短と成果が両立する 仕事の「見える化」「記録術」 (アスカビジネス)

著者 : 谷口 和信
出版 : 明日香出版社
価格 : 1,650円 (税込み)

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