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不妊の半数は男性が原因 治療法は進展、簡易の検査も

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NIKKEI STYLE

不妊治療を受ける人が増えている。治療が始まると負担は女性側にのしかかり、キャリアへの影響も大きい。男性が生殖能力を知る機会は女性より少ないが、男性不妊に目を向けるのも大切だ。早い時期から男女で一緒に取り組むことが時間や費用、心身にかかる負担の軽減につながりそうだ。

「どんな苦労をしても、しっかり育てたい」。神奈川県に住む40代の男性会社員は、2019年秋に生まれたわが子の写真を慈しむように見つめて話す。

約4年に及んだ不妊治療は壮絶だった。「当時は子供のいる人と話したくないと思ったり、何気ない一言に傷ついたり。性格が変わったかのようだった」と振り返る。

40歳目前の13年に結婚、「すぐにでも子供が欲しかった」。1年ほど自然に授からず、妻に提案して不妊治療を始めるも、タイミング法や人工授精がうまくいかない。自分の精子の数と活動量が平均値以下だと知った時には、結婚から2年ほどたっていた。体外受精に踏み切って1年半、ようやく妊娠・出産に至った。

とりわけ気がかりだったのが、自分に原因があるのに、治療の負担が妻の身体にかかることだ。体外受精で男性側は通院や指定された日時に精子を提出する。治療は上司に伝えず、有給休暇を月1回取った。一方で女性側はタイミングを計るためホルモン投与や内診をこまめに受ける必要がある。仕事を持つ妻が不規則な休みを間際に申請するのは容易ではない。妻は治療途中で仕事を辞めた。

総治療費は400万円を超えた。妻が「もうやめたい」と言い出し、夫婦に温度差が生じた時期もあった。「子供ができなくても幸せだよ」と妻に話しつつ、「妊娠しなかったら『もう一回』と頼み込んだと思う」。要所要所でどうするかを真剣に話し合って夫婦の足並みをそろえた。

NPO法人Fine(東京・江東)が不妊治療を経験した約5千人にアンケート調査したところ、96%が「仕事との両立が困難」と感じたと回答。そのうち半数が退職したという。会社に支援制度があっても、知られたくないなどの理由で使わない人もいる。

男性不妊の理由には精子の量や運動率が十分でない「造精機能障害」のほか、静脈が精巣に向かって逆流して徐々に精巣機能を弱める精索静脈瘤などがある。世界保健機関(WHO)の2017年の報告によると、不妊カップルのうち男性に原因があるのは24%。男女両方にあるのは24%で、合計すると約半分で男性に原因があるとされている。

ところが、リクルートライフスタイル(東京・千代田)の調査によると、子供を望む男性約2800人のうち、不妊の半分は男性に原因があると知っている人は46%にとどまった。本人またはパートナーが精液検査を「受けていない」と答えた人は75%で、理由は「自分に問題があると思わないから」(38%)が最多だった。

男性不妊の治療法はここ20年で開発が進み、無精子症のように一見難治でも治療や生活指導で妊娠・出産に至る例も出てきた。横浜市立大学の湯村寧准教授は「精液の状態を改善することで治療の肉体的・精神的・経済的な負担の軽減につながる」と話す。

体外受精が必要とされたカップルでも、男性の精液が改善することでより簡単な人工授精やタイミング法に戻れる可能性があるという。精子を卵子に直接注入する「顕微授精」が1回50万円ほどかかるのに比べ、治療費が安くなる。女性からの採卵も不要になり、ホルモン注射も少なくて済む。男性不妊への対応で治療内容や期間が抑えられれば、「女性の負担が減少し、女性が仕事を辞めなくても済むかもしれない」(湯村准教授)。

不妊治療をめぐる議論はこれまで、母親になる女性の高齢化が中心になっていた。最近の研究では男性の年齢も重要視されつつある。

独協医科大学埼玉医療センターの岡田弘医師と岩端威之医師らは、「男性不妊の集団では、加齢によって精子機能が低下していると考えられる」との研究結果をまとめた。男性不妊外来を受診した66人の精子を調べると、35歳以上の男性は実際に子供が生まれた男性と比べて、精子が卵子を活性化できる確率が明らかに低かったという。加齢に伴いDNAに傷がついている精子が増えるため、自然妊娠や人工授精での妊娠がしにくくなる可能性がある。

横浜市大の湯村准教授によると、男性の年齢が高いほど、女性が妊娠するまでの期間が長くなる傾向にあるという。男性が20代の場合は約6カ月なのに対し、30代だと約10カ月程度かかる。同大病院のブライダルチェック外来を受診した男性564人のうち、4分の1で精液所見の異常がみられたという。

リクルートジョブズ執行役員の山口順通さん(42)は、思いがけず自分の不妊を知った一人だ。リクルートライフスタイル在籍時の15年秋、同社が現在販売する精子の検査キット「シーム」の試作品を社員モニターとして使った。

精液を入れたキットをスマホのカメラに当てると、精子の濃度と運動率を算出し、WHOの基準を満たすかどうか教えてくれる。山口さんが試すと「無色透明の液だった」。受診して、精子は精巣で作られているが何らかの原因で出てくることができない「閉塞性無精子症」とわかった。

すぐに夫婦で話し合った。山口さんの精巣を「TESE」と呼ばれる手術法で一部切開して精子を取り出し、妻の卵子も取り出して顕微授精、凍結保存させる道を選んだ。

16年2月に手術を受け、春から受精卵を胎内に戻す治療を開始、17年4月に長女、19年10月に次女が生まれた。「検査をしなければ不妊治療に何年も費やしたかもしれない」との思いから、体験を積極的に語っている。

横浜市大のデータでは、男性不妊を治療したことで、妊娠までの期間が短縮する傾向もみられるという。カップルの負担や治療期間を少しでも減らすためにも、女性だけでなく男性も一緒に検査や治療を受けることが重要になっている。

性別問わず配慮必要 ~取材を終えて~

男女問わず、不妊に悩む人への精神面の配慮は欠かせない。神奈川県の男性は「悪気はないのだろうが、男性からのぶしつけな発言が多く、こたえた」という。「子どもはまだかね」「子ども、いても大変なだけっすよ」――。妻も不安定だったためつらさを抱え込み、絶望感がつのった。「ただただ刺激しないでほしかった」と振り返る。

社員の不妊治療を支援するオムロンは、「2005年の開始当初から性別不問の制度にした」(上村千絵ダイバーシティ推進課長)。上司や人事部に知られることなく費用補助を申請できるよう配慮している。治療法や支援の充実に加え、男性自身の認知度や意識を高めることも重要だ。

(猪俣里美)

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