なぜ40~50代に2つの谷 ミドルのキャリア停滞感

日経ARIA

2020/1/23

50代に陥る最大の「キャリアの谷」とは?

小林さん 第2の谷の50代前半で起きるのは、ポストオフ(役職定年)です。

ポストオフとは、ある決まったタイミング(年齢)で、後進に道を譲るため、その時点での役職を退任する仕組みです。制度として「55歳で役職定年」などと定めている企業もありますが、担当部長、専門職など部下のいない管理職になる、関連会社へ出向となるなど「第一線から外される」ことが暗黙の了解とされている非公式ポストオフというケースもあります。

役員などに昇進する人以外のほとんどの管理職が対象となるこの仕組み。会社にフルコミットし、長年活躍を続けてきた部長、課長たちが「年齢」によって、一律的に「若手の支援に徹してほしい」というような扱いを受けるのは、大変ショックなことです。当然、モチベーションも会社への信頼感も著しく低下します。ポストオフ経験者への調査では「やる気が全く出なくなった」「会社に裏切られた気分」「廃人になりそうだった」「夜眠れなくなった」「あっけにとられた」など、4割弱の人が大きな喪失感を訴えていました。

石山さん 問題は、こうした大きな喪失感、失望感を与えるポストオフから、長い人では10年も15年も同じ職場で働き続けなければならない、ということです。

60歳定年の時代であれば、55歳にポストオフとなっても、5年後には定年退職。ところが、今は定年延長、定年再雇用が増え、65歳、70歳まで働くケースもありえます。ポストオフという雇用慣行はそのままに、退職までの期間が10年、15年と延長しつつあるところが構造的な問題となっているのです。

昇進意欲がない人にも訪れる「キャリアの停滞感」

小林さん 「もともと昇進は見込めないし、出世にこだわりはないし……」という方もいるかもしれません。そんな人にも「キャリアの停滞感」は訪れます。出世競争やポストオフなどがない専門職の人でも同じ仕事を15年、20年やってきて、仕事はしっかりと回せるようになってしまったが故に成長を感じられず「キャリアの停滞」を感じる人は多くいるからです。

石山さん  15年、20年と長期的に同じ仕事を続けてきた人に訪れるマンネリ化、成長感の欠如というのは、大企業の男性社員だけでなく、誰にでもあること。

心理学者であるカール・グスタフ・ユングは「40代からは人生の前半と後半の入れ替わりの時期である」として「人生の正午」と言ったそうですが、人生100年時代では、人生を1日にたとえるなら、50代からが正午といえるかもしれません。女性の場合、さまざまなライフイベントが起きる20代、30代を経て、「今後、自分はどう生きるのか」と改めて自分に向き合う時期とも重なってきます。

ですが、考えてみると「もう終わり」ではありません。「まだ半分もある」のです。残り半分の長い道のりをどう歩んでいくのか。「キャリアの停滞」は、それを考えるための「転機」と捉えるべきでしょう。

石山恒貴
法政大学大学院 政策創造研究科教授。一橋大学社会学部卒業後、NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。「越境的学習」「キャリア開発」「人的資源管理」などを研究。産業能率大学大学院経営情報学研究科経営情報学修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科政策創造専攻博士後期課程修了、博士(政策学)。人材育成学会理事、フリーランス協会アドバイザリーボード。主な著書に『パラレルキャリアを始めよう!』、『会社人生を後悔しない40代からの仕事術』(ともにダイヤモンド社)など。
小林祐児
パーソル総合研究所シンクタンク本部リサーチ部 主任研究員。NHK放送文化研究所世論調査部スタッフ、マーケティング・リサーチファームを経て、現職。上智大学大学院・総合人間科学部社会学専攻博士前期課程修了。専門は、理論社会学、社会システム理論。主な著書に『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』(共著、光文社新書)など

(取材・文 井上佐保子、写真 小野さやか<石山さん、小林さん>)

[日経ARIA 2019年8月27日付の掲載記事を基に再構成]

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