アーティストとのタイアップで人気 AVIOTのイヤホン

日経クロストレンド

初期ロットは予約で完売。追加分も品薄が続くAVIOT「TE-BD21f-pnk」。2019年11月の販売再開時には、一時的とはいえAirPodsを上回る国内販売台数を記録した(写真提供:バリュートレード)
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アップルのAirPodsを火付け役に、ヒットアイテムとなっている完全ワイヤレスイヤホン。音質やバッテリー駆動時間、接続の途切れにくさといった性能面での競争が進み、差異化が難しくなりつつある。かといって価格勝負になれば泥沼だ。そこでブランディングを目的に、人気アーティストとのコラボ・タイアップを図るイヤホンメーカーが増えつつある。

フォロワー27万人、ピエール中野のブランド力

そんななか、多数のアーティストとコラボレーションで大きな成功を収めているブランドがバリュートレード(東京・渋谷)が手掛ける「AVIOT(アビオット)」だ。設立から2年の新興ブランドながら、2019年には前年比31%増の売り上げを記録するなど、急速に成長している。

AVIOTの19年の売り上げを支えたモデルが「TE-BD21f-pnk(実売価格:税込み2万3000円前後)」。これは日本のロックバンド「凛として時雨」のドラマーであり、27万人ものTwitterのフォロワーを抱え、日本の音楽業界を代表するインフルエンサーであるピエール中野とのコラボモデルだ。TE-BD21f-pnkの発売は19年7月下旬で、入荷分すべてが予約で完売。4カ月後の11月に出荷が再開されると、半年分を見込んだはずの在庫が1カ月もたたないうちに品薄に陥った。

TE-BD21fのコラボモデルTE-BD21f-pnkは「ピエール中野のイヤホン」の意味で「ピヤホン」とも呼ばれている(写真提供:バリュートレード)

最強のインフルエンサーが示したファンとの関わり方

TE-BD21f-pnkはパッケージや本体をコラボデザインにしただけでなく、音質のチューニングにまでピエール中野が関わった特別モデル。誕生のきっかけは、AVIOTブランドとして会心の出来栄えだった「TE-D01d(実売価格:税込み1万円前後)」を彼に試用してもらったことだ。

「最初、中野さんには『あまり期待しないでくれ』と言われた。『ワイヤレスイヤホンは過去にいろいろなメーカーに宣伝してと頼まれて預かったけど、良かった試しがなく、紹介できませんとお断りしてきました』と言われた」と話すのは、バリュートレードディストリビューション事業部メディア・PRチームディレクターの西亮太氏。

ピエール中野は自らイヤホン専門店に足を運び、数万円もする商品を購入するほど音にこだわりのある人物。PRを頼まれたところで簡単に引き受けるようなことはない。

「それを聞いて逆にイケると思い、商品をお送りすると即座にTwitterで紹介してもらえた。結果、『ピヤホン』と呼ばれてバズった」(西氏)。その反響の大きさに恩を感じ、西氏から「一緒にモノを作りませんか」と提案を持ちかけた。

コラボのきっかけとなったピエール中野のツイート。開発会社のエンジニアと直接やりとりするなかで、この相手とならできるとお互いが確信を深めていったという

有名インフルエンサーとのコラボと聞くと、宣伝目的の仕掛けと捉えられがちだ。しかしピエール中野がすごいのは、製品開発に関わっただけなく、自身のツイッターアカウントに寄せられた不満や不具合のコメントを逐一チェックし、ユーザーサポートのような形でコミットメントを続けていること。コラボモデルの神髄は、インフルエンサーとフォロワーとのつながりの深さをフル活用することにあるのだろう。