いやはやどうも昨年末は、さながら菅田将暉祭りであった。暮れもおしせまった12月28~30日には「3年A組―今から皆さんは、人質です―」の一挙再放送をやっていて、ついついチラチラとまた全話見てしまい、フントニモー、ちっとも大掃除がすすまなかった。
着るものから髪型、持っている小物まで若者に影響力
そして大晦日の「NHK紅白歌合戦」初出場である。今回の紅白の目玉はラグビーオールジャパンを前にユーミンが歌う「ノーサイド」でもなく、竜に乗って「ドラゴンボール超」主題歌を歌う氷川きよしでもなく、全然似てないAI美空ひばりでもなく、間違いなく「まちがいさがし」を歌う菅田将暉であった。なにしろアータ、いま最も人気、実力ともにある若手俳優ですからね。
さらにここが最も筆者が注目していることなのだが、菅田将暉はファッション的にも、同世代の今どきの若者たちから圧倒的な支持を得ている。んや、正確に言うと、「菅田将暉のファッションセンスがわかるか、わからないか」が、今どきの若者たちのお洒落(しゃれ)に対するリトマス試験紙みたいになっているのだ。
菅田将暉のファッションを一言で表せば「ダサカッコイイ」。ドラマや映画では「カメレオン俳優」と呼ばれるように役に合わせてスタイリストが用意した服を着てるんだろうが、それでも菅田将暉が着ると独特の着こなしになる。これも彼のダサカッコイイセンスが成せる技である。
ダサカッコイイ菅田将暉スタイルの基本は、昭和の時代を思わせるような着こなしだ。例えば、大阪のオバチャンが着るような派手なヒョウ柄のシャツや、ヤンキーが着るようなボンタンシルエットのパンツやアロハシャツ、1980年代のDCブランドの肩パッドの入ったソフトスーツのようなダブルのジャケット。お洒落にまったく興味がない人から見たら、菅田将暉の私服は「ちょっと品のいいチンピラのお兄ちゃん」なんて言われているらしいが、いやぁ~、まさに言い得て妙であります。
しかしこの「ダサカッコイイ」、モード的には実はいま世界的なトレンドでなんである。装飾的なファッションとは正反対の「ノームコア」ブームの反動から生まれたトレンドで、欧米では「CAMP(キャンプ)」と呼ばれていて、なんでも米国の作家スーザン・ソンタグのエッセイからつけられたキーワードなんだそうだ。過剰で悪趣味すれすれで、ダサいけれどもアーティスティックという意味合いで使われるらしい。アレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブディレクターになった「グッチ」や、「バレンシアガ」から火が付いて大ブームになったダッドスニーカーなどが、まさにそれである。
だからなのか、菅田将暉は嫌いじゃないけれども(むしろ大ファン)、私服のセンスはイマイチよくわからなくて、彼氏には絶対真似をしてほしくないという女子も多いのだ。いずれにしても、着るものから髪型、持っている小物まで、ファッションも若者に影響力がある芸能人が久しぶりに出てきた。キムタク以来である。

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