Men's Fashion

眠っていた洋服が現役復帰 ジャケットお直しの極意

石津祥介のおしゃれ放談

お直し最新事情(上)

2020.1.20

30~50代のビジネスパーソンの間で洋服の「お直し」を利用する向きが増えている。クローゼットに眠るブランド物のスーツやジャケットを時流に合わせてリフォームし、現役の”一軍選手”に甦(よみがえ)らせるお得感。さらに最近のファッションのクラシック回帰も背中を押しているようだ。街中には新顔の専門店が相次ぎ登場し、時には持ち主が思いもつかない提案をしてくれることも。そこで服飾評論家の石津祥介さんが心斎橋リフォーム丸ノ内店(東京・千代田)を訪れ、心斎橋リフォーム(大阪市)副社長の内本久美子さんとお直しの極意について語り合った。まずは基本編から。




40年前に父から譲り受けたジャケットをリフォーム

――パンツの裾上げの経験はあっても、本格的なデザインのお直しについては「イメージが湧かない」という男性も多いはずです。スーツやジャケットの場合、どんなリフォームが可能ですか。

石津「このヘリンボーンのジャケットはね、こちらで”大直し”したものです。40年前に親父(ヴァンヂャケット創業者、石津謙介さん)から譲り受けたものですが、形が古くてまったく着ていなかった。でも捨てるわけにもいかなくて、20年以上洋服ダンスから出したことがなかった。そのジャケットが復活したんです。復活してみたら、ハリスツイードの生地なんか今のものよりいいの。重くて、いかにもツイードを着ている感じで」

「このジャケットは20年間着ることがなかった。リフォームで『一軍』に昇格しました」

内本「そうですね、重たい服を求められる男性はけっこう多いですね。わざわざビンテージツイードの古着を購入されて、お直しに来られる方がいます」

――40年もたっているとは思えないほど、生地がしっかりしていて形もサイズもぴったりです。内本さん、どんなリフォームを?

内本「持ち込まれた時は全体に重心が低かったのです。そこでフロントボタンもゴージラインもVゾーンも上げました。上襟も大きかったので細くして。もちろんサイズ調整もしましたが、まずは重心を上げて、新鮮な作りにしたのです。昔のジャケットはどうしても重心が下にあります。そでを短くしたり丈を短くしたりするだけでも新鮮さは出せるのですが、やはり昔っぽさが残ってしまいます」

石津「丈詰め程度じゃないんだよね。極端にいえば、ばらしていったん生地に戻して作り直す感じなのかな」