「いいものを長く着たい」という意識が高まる

――こちらのウールの紺ジャケットはどこをリフォームしましたか?

石津「数年前に肩パッドを抜いてもらいました。2011年にイージーオーダーで作ったものですが、パッドなしは選べなかった。僕はもともと肩パッドが嫌い。上質なロロ・ピアーナのウールで素材はいいのですが、気に入らない形でできあがってきたの」

内本さんに袖を少しあげてもらい確かめる。「もう少し袖が短くなるといいかも」

内本「パワーショルダーのようにすごいパッドが入っている印象でしたけれど、決して古いジャケットではない。それではナチュラルなジャケットにいたしましょうということで、肩パッドを抜きました。簡単に印象が変わるリフォームです。袖をはずして裏地をとって、埋め込まれた肩パッドを外してそでを付け直す。ちょっと袖が長い感じもしますが、素直な形になりましたね」

石津「ぐんとイメージが変わりましたよね。男の服は胸から上が勝負なんです。さらにもう少し肩を詰めると丈も短くなって袖丈もあがっていい感じになりそうだ。好みは時代で変わるものだし」

「お直しでは左右どちらかだけを調整して、ビフォー&アフターを確認してもらいます」と内本さん

――リフォームが活況といわれる背景には何がありますか。

内本「30年前に始めた頃よりずっと需要が増えました。多いときでは1日50人が来店して、みなさん数着ずつ持ち込まれます。これも時代が後押ししてくれた面があると思います。まず、いいものを長く着たい、それが大切なことだという意識の高まりです。バブル期など景気がいいときはどんどん新しい服を購入するという感覚で、いきおい新品のお直しが多かったものです。ところが今は古いものが持ち込まれるようになりました。以前買った服を再生して大事に着たいというお客さまが実に多いのです。また、服を買う場所がお店だけでなく、インターネットなどに多様化した結果、サイズが合わなかったからと持ち込まれるお客さまも増えました」

――基本的な料金の目安はどのくらいでしょうか。

内本「お直し料金はパーツごとに設定していて、うちの場合は1カ所5000円くらい。ジャケットですと15000円ぐらいのお直しが一番多いですね。当社はお客さまがおっしゃる通りに手を加えるのではなく、洋服を拝見して、一緒にクリエーションしていきます、という姿勢です。単に丈詰めするのではなくて、それによって全体のバランスがどう変わるのか、そういったことをご相談しに来ていただきたいですね」

石津「まったく着ない服だけじゃなくて、ときどきは着るけど、着るたびにどこか納得がいかない服というのがあるでしょう。そんな服こそ、ちょっとお金を出して直すだけで『一軍』に上がれるんだよ」

――次回はリフォームの応用編です。ここまでできるという実例をみていきましょう。

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

石津祥介
服飾評論家。1935年岡山市生まれ。明治大学文学部中退、桑沢デザイン研究所卒。婦人画報社「メンズクラブ」編集部を経て、60年ヴァンヂャケット入社、主に企画・宣伝部と役員兼務。石津事務所代表として、アパレルブランディングや、衣・食・住に伴う企画ディレクション業務を行う。VAN創業者、石津謙介氏の長男。

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