就職情報大手、マイナビの調査によると、20年卒の就活生のうち、大手企業を志向する学生は文系男子で5割と高水準だった。学生優位の売り手市場では当然の結果だろう。

ただ、ここ数年、東芝やシャープなどかつて名門と呼ばれた日本の大手企業が相次ぎ経営不振に陥った。加えて19年5月には経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長が終身雇用の維持が困難になってきたとの認識を示した。

ネット広告のベンチャー企業、フリークアウト・ホールディングスの新卒採用責任者、金聡氏は「世の中の不確実性が高まっている中、数十年単位でキャリアを構築することが難しくなっている」と指摘。「将来に向けてスキルを身につけたい学生が弊社を選んでくれている」と話す。大手企業では若手は「下積み」と称して雑用に振り回されがちだ。管理職になれるのは10年目以降のケースが多いようだ。採用コンサルタントの谷出正直さんは「早くから活躍の機会が欲しいと考える上位校の一部の学生にスタートアップを目指す傾向がある」と分析する。

競合との違いが明確ではない会社には注意

一方、スタートアップに新卒で入社して後悔したという人もいる。地方国立大を19年3月に卒業した男性(22)はマーケティングを手がける都内のスタートアップに新卒入社した。仕事は充実していたが、配属された部門の社員が次々に退社し、同僚がわずか4人になってしまった。離職率の高さから事業運営が困難な状態に陥った。

その上、一部の社員から「残業代が支給されなかった」などの話も聞かされた。「このままこの会社に居続けても将来はない」と思い、同年12月に退社した。就活していた当時、その会社の経営者が語る目は夢と希望に満ちていていたのが印象的だった。「上場を考えている」と話していたため、経営が安定しているものと信じてしまった。

それではスタートアップを目指す学生はどのようなことに注意すべきか。登録企業の約7割がスタートアップ企業であるスカウトサイト「キミスカ」を運営するグローアップ(東京・新宿)の松山朋子さんは「スタートアップ選びは、大手以上にきちんと会社分析をする必要がある」と説く。

上場企業や有名企業とは違い、スタートアップの就活では情報が少ないのがネック。まず、直接経営者に会い、仕事内容や会社のビジョンを事細かに聞いてみることが肝要だ。その際重要なのは「その会社はライバル企業とどこで差を打ち出しているか」ということ。競争が激しい時代、違いが明確でない会社は生き残りが難しいからだ。松山さんは「明確な違いを言えない会社は将来性がないと判断し避けるべきだろう」と力説する。

またその会社が競合だと認識している会社の選考も受けてみるのも有効だ。共通の質問事項を当てて、その違いを見極めると良い。

一般的に大手企業では決められた範囲で仕事をするケースが多いが、スタートアップは「社員自ら仕事を作り出すのが仕事」(スタートアップで働く20代女性)との声もある。こうした点も考慮して自分にはどんな働き方が向いているのか、どのようなキャリアを積みたいのか。熟慮した上で会社を選んでほしい。

(企業報道部 鈴木洋介、久貝翔子)

[日経産業新聞 2020年1月15日付]

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