2020年はもしやホンダの年? 自動運転は手放しの先へ
2020年、自動車の世界はどうなっていくのか。昨年40台以上と毎週のように新車に試乗し、さまざまなトレンドを追いかけ続けた小沢コージ氏が今年の注目点を解説する。
ハンズオフの次はアイズオフ?
2020年1月、小沢は米ラスベガスのデジタル技術見本市「CES」に行ってきました。CESは今や「自動車ハイテク市」と化しているからです。となれば、やはり20年の注目は「続・運転の半自動化」でしょう。東京五輪が開催される年ですから、「日本は自動車ハイテク先進国だ!」とのアピールを兼ねて、多少強引でもその手の技術を出してくるはず。
具体的には19年末にスクープもされていた、ホンダが自動運転技術「レベル3」(条件付き運転自動化)搭載車を発売するという話。搭載車両が何になるかはわかりませんが、日産自動車や独BMWが既に運転支援レベル2での「ハンズオフ」=「両手放し運転」を可能にしているだけに、ここでホンダはレベル3以上でしかできない「アイズオフ」=「運転中に前方から視線をそらしてもいい技術」を仕掛けてくる模様。極論すれば、運転中にスマホや新聞を見ていられる技術です。
正直とんでもない話で、当然ここには法改正も絡んできますが、日本は19年12月1日に道路交通法が改正されました。専門家によると、注目は同日に改正された道路運送車両法で、中でも自動運転レベル3システムが保安基準の対象装置に追加されたのがポイントだそうです。
しかしながら、レベル3でも運転時の事故の責任は自動車の運転者にあるとのこと(道路交通法第119条2)。「運転を完全に機械に任すのに、それでも事故責任は運転者にあるのか。ホントにそれでレベル3なの?」と言いたいところですが、それが現実的な落としどころなのでしょう。
具体的にどんなレベルのアイズオフが可能かはわかりませんが、渋滞中の高速道路に限定されていることは明らかになっています。小沢が思うに相当低速に限ってくるのではないでしょうか。例えば時速30キロ以下とか40キロ以下とか。相当がんばっても60キロ以下。
仮にそうであれば、相当現実的と言えます。歩行者がいない高速道路でクルマが極端に遅ければ、事実上ほとんど事故は起きませんから。同時に自動運転機能をオン、オフした時刻を記録する装置などの搭載を義務付けるので、事故後のトラブルも少ないはず(記事「自動運転の記録義務付け 事故時の運転主体、明確に」参照)。
トヨタ対ホンダのコンパクトカー対決
かたや実車で間違いなく盛り上がるのは、人気ハイブリッドコンパクトカー対決。トヨタ自動車の新型「ヤリス」とホンダの新型「フィット」です。ヤリスは事実上の4代目ヴィッツですが、既に両車とも小沢はテストコースで乗っており、限られた情報ではありますが勝手に占っちゃいましょう。
ズバリ、「走りと超低燃費のヤリス」と「総合力のフィット」の対決になります。どちらも全長4メートル以下の5ドアハッチバックですが、トヨタは同じクラスに人気コンパクト「アクア」を持っているので食い合いを避けたいところ。よって今回は相当スタイルと走りに絞ってきました。正直に言うと、室内はあまり広くありません。
また今回から欧州名のヤリスに改名してきたことからも分かるように、デザイン的にも欧州車色が強くなっています。アチラでは世界ラリー選手権(WRC)用のベース車として有名なので、そういう意味でも走りの良さ、スタイルの凝縮感に特化してくるのです。さらに燃費は新規開発ハイブリッドシステムもあいまって、市販ガソリン車世界NO.1を狙ってくるはず。
かたやフィットは、特に日本では屋台骨とも言えるコンパクトハイブリッド。初代、2代目は大成功しましたが、3代目で勢いが落ちたこともあって相当気合が入っています。
それも今までの燃費、広さ、走りでクラスNO.1を狙ってがんばり過ぎたのを反省し、本当にユーザーのためになる「飽きのこないデザイン」「実燃費」「乗り心地の良さ」「視界の良さ」に振っています。こちらもハイブリッドシステムは新作。
単純に総合力でいうとフィットの勝ち。小沢はかなり売れると踏んでいますが、多少室内は狭くても圧倒的な低燃費のヤリスも興味深い。この2台のバトルは熾烈を極めそうです。
ビジネスクラス級シートの超ラージミニバンも
新型フィットのほかに、ホンダからはピュアEVの「ホンダe」、さらに軽の新世代「Nシリーズ」の弟分、「N-ONE」も出そうです。ホンダeは航続距離の短さが難点ですが、個性的なキュートデザインがおもしろいし、N-ONEはスタイル重視がゆえにNシリーズの美点たるスペース性は十分に発揮できませんが、個性の強さで勝負できるはず。
このあたりの新型車攻勢と、19年にひさびさに勝利を挙げたホンダF1、冒頭のレベル3技術搭載車両の発売で20年は久々にホンダの年になるのか? このあたりにも注目です。
最後は、ちょっと毛色の違うラージワゴンというか、超ラージミニバンの世界。昨年末に登場したハイエースの上を行く超大型ミニバン、トヨタの「グランエース」も注目です。
とにかく全長5.3×全幅1.97メートルの超巨大ボディーが圧巻。そこから生まれる人気ラージミニバンの「アルファード」&「ヴェルファイア」をしのぐ室内の広さ、中でも飛行機のビジネスクラス級のボックスシートを最大6脚も載せられる極楽リムジン性能には期待大です。
20年も自動化、電動化は間違いなく進むと思いますが、それ以外にもホンダ復活ストーリー、超ラージミニバンと話題が目白押しです。クルマ界は休むことを知りませんね。
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は「ベストカー」「時計Begin」「MonoMax」「夕刊フジ」「週刊プレイボーイ」など。主な著書に「クルマ界のすごい12人」(新潮新書)「車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本」(宝島社)。愛車はロールス・ロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。
(編集協力 北川聖恵)
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