中長期での大胆な変化を、小さく刻みながら進める

人間は過去の成功体験にとらわれやすく、過去を美化しがちな生き物です。いったん抱いた観念が固定化しやすく、意思決定をする際に無意識のうちに二項対立で考える傾向を持っています(安定的な大企業vsハイリスクの中小ベンチャー企業、など)。過去から未来を予測するときに、どうしても直線的に考えてしまう傾向もあります(「これまで給料が上がってきたから、これからも上がっていくはずだ」という思い込みなど)。これらの心理的な落とし穴には十分に注意する必要があります。

固定観念を取り払うには、自分の頭の中にあるかもしれない(自分でわかっているわけではない)思い込みや決めつけを、ひとつひとつ疑問を持って、事実をもとに判断しなおす地道な努力が必要です。その作業を進めるためにも、今後のキャリアに関する最も悲観的な未来予測を仮置きし、その環境が現実に起こったとして、最善の選択になりうる道を模索する必要があります。

自分自身が過去積み上げてきた実績、社内や業界など狭い世界での自分への評価、自分の成功体験として信じきっている方法論や行動習慣を、一度、全くなかったこととして頭の中で捨て去ってしまい、ゼロベースで自分の新しい強みを再構築していっていただければと思います。

そのときに最優先で考えたいのは、これまでやってきた業界や仕事とは全く無縁の領域で、自分のビジネス感覚が生かせるような仕事をいくつ思い付けるかということになると思います。自分の得意領域は「最悪の場合にいつでも使える保険」として横に置いておいて、まずは経験のない越境分野で仕事の自信を深められるような働き方の検討をすることをお勧めします。

会社員として長期間働いていると、自分を他人の期待に合わせることに慣れすぎてしまっているケースがあります。自分以外の誰かが作ったゲームに参加して、誰かの指示を受けることが常態化していると、いざ自分の強みが発揮されなくなったときに、心身ともに消耗が激しくなってしまうこともあります。自分の能力の使い道を自分自身で意思決定し、貴重な人生の時間を使う主導権を自分が持つという感覚を取り戻すことによって、他人に揺さぶられて不安を感じるリスクは軽減されます。

大きな時代の変化に対応するためには、身軽かつ臨機応変に自分を変えていく必要があるシーンも増えていきます。表層的な企業規模や知名度、年収や役職などに過度にこだわるのではなく、「何をするかより、何をしないか。何を得るかより、何を捨てるか。何と関わるかよりも、何と関わらないか」というように、人生において重要なことをシンプルにしておくことも一つの方法です。

そのうえで、5年後・10年後にどのように働いていたいかという大きな絵を描いておくこと、かつそこに近づくために、小さくてもいいので何かの実行を始めておくことは不可欠です。大きな変化を伴う目標も、期間やサイズを細かく刻んで分解することで、リスク回避につながることもあります。

経験のない領域で、新たな仕事人生を設計するというと、とても大げさに聞こえますが、副業や兼業レベルで小さな実験を繰り返すことを通じて、これまで見えなかったものが見えてきたという人はたくさんいます。環境の変化に対応し、自分の考え方、習慣を変えられるうちに行動を起こしておくことをお勧めします。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

黒田真行
ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

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