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解熱剤が効かない!

→ インフルエンザに使える解熱剤は、そもそも効果が分かりにくい

インフルエンザで医療機関に行き、解熱剤をもらったのに「効かない」とあわてる人も少なくない。しかし岸田さんによると、「効いていないわけではない」という。

「解熱鎮痛薬としてよく知られるロキソプロフェン(商品名:ロキソニンなど)やジクロフェナク(商品名:ボルタレン、ナボールなど)は、インフルエンザのときに使うとインフルエンザ脳症のリスクを高める可能性があるため、インフルエンザのときでも使えるのはアセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)だけです。ところがアセトアミノフェンは安全性が高い分、作用がマイルドで熱が1℃下がる程度なんです」(岸田さん)

つまり、39℃の熱が38℃になるくらい。それなりに効いているのだが、それでも普段は出ないような高熱なので、「全然効いていないように見える」わけだ。

額を冷やしても熱は下がらないが、つらさが和らぐのであれば冷やしてもかまわない。画像はイメージ=(c) laymul-123RF

ロキソプロフェンは市販薬もあるが、前述したようにインフルエンザ脳症のリスクがあるのでインフルエンザのときは原則使ってはいけない。岸田さんは「ロキソプロフェンは解熱剤ではなく、あくまで鎮痛剤として使ってください」と注意する。

熱を下げたいときは「3点クーリング」という方法もある。首、腕の付け根(わきの下)、脚の付け根を冷やすというものだ。いずれも太い血管が通っている部位なので、血液を冷やし、熱を下げる効果があるという。

一方、額を冷やしても熱を下げる効果はないのだが、「気持ちが良ければ冷やしていいと思います」と岸田さん。冷やすことにより、つらさが幾分和らぐのであればやめる必要はない。

一度インフルエンザになったら、その冬はワクチンの必要なし?

→ 一度かかった後でも、ワクチンを打つ意味はある

もともとワクチンとは、病原体の毒性を弱めたものをあえて体内に入れたり(生ワクチン)、病原性を完全になくした微生物の一部を体内に入れたり(不活化ワクチン)することでその病気に対する抗体を生じさせるもの。一度インフルエンザになってしまえば、少なくともその冬の間はワクチンを打つ必要もなくなると考えがちだが、岸田さんによるとこれも「誤解」だ。

インフルエンザウイルスにはいくつかのタイプがあり、ワクチンにはA型2種類(H1N1とH3N2)とB型2種類(ビクトリア系統と山形系統)が入っている。一回感染すると免疫ができるので、同じ冬に同じウイルスに再び感染することはないが、A型に感染した後、続けてB型にも感染する可能性がないとはいえない。つまり一度インフルエンザにかかった後でも、ワクチンを打つ意味はある。

ご存じの通り、ワクチンを打てば絶対にインフルエンザにならないわけではないが、「健常成人での発症予防率は70~90%[注1]との報告があり、発症しても重症化防止を期待できます」と岸田さん。特に乳幼児や高齢者など「ハイリスク」の人たちは、本人はもちろん、一緒に暮らしている家族もワクチンを打って予防すべきだろう。

ワクチンを打ってから免疫ができて効果を発揮するまでに2~3週間かかる。「インフルエンザの流行は3月ごろまで続くので、1月なら打っておいた方がいいと思います」(岸田さん)。今からでも遅くはない。まだ打っていない人、とりわけ乳幼児や高齢者と言ったハイリスク者と同居している人は打っておこう。

[注1]MMWR. July 13, 2007 / Vol. 56 / No. RR-6

(文 伊藤和弘)

岸田直樹さん
総合診療医、感染症医、感染症コンサルタント、公衆衛生学修士(MPH)、北海道科学大学薬学部客員教授、一般社団法人Sapporo Medical Academy代表理事。2002年旭川医科大学卒業。手稲渓仁会病院総合内科・感染症科チーフ兼感染対策室室長などを経て14年よりSapporo Medical Academy代表理事。日本内科学会総合内科専門医。日本感染症学会専門医・指導医。著書に『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 重篤な疾患を見極める!』(医学書院)など。

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