ノロに感染? 急な下痢、受診の見極め方と対処法

日経Gooday

3症状のうち2つそろえばほぼウイルス性胃腸炎

既に述べた通り、ノロウイルスのようなウイルス性胃腸炎には抗菌薬は効かないし、そもそも自然に治るので健康な成人であれば医療機関に行く必要はない。ノロウイルスは特に感染力が強いので、ウイルスをまき散らさないためにもあまり出歩かない方がいいだろう。

しかし本当にウイルス性胃腸炎ならいいが、ときには深刻な病気が潜んでいる可能性だってある。どこでそれを判断できるのだろうか?

そのチェックポイントとして、岸田さんは「下痢」「吐き気」「腹痛」の3症状を挙げる。風邪をひくと「咳(せき)」「鼻水」「のどの痛み」という3症状が表れるのと同じく(「本物の風邪は受診の必要なし まず3症状をチェック」を参照)、ウイルス性胃腸炎ではこの3症状が表れるはずだという。

写真はイメージ=(c) Anton Estrada-123RF

ただし、3つの症状があるときから同時に、同程度に出るということではない。最初は吐き気や嘔吐(おうと)が始まり、遅れて下痢や腹痛もそろってくるのが通常の経過だそうだ。

3つの症状があるとき同時に出始めるということではなく、まずは吐き気・嘔吐からスタート。24時間くらいでそのピークを越え、腹痛や下痢が始まるのが典型例だ。※岸田さんの話を基に作成

「3つの症状すべてではなくても、下痢・吐き気・腹痛のうち2つそろっていればまずウイルス性胃腸炎と考えていい。特にオシッコのように出る水様(液状)の下痢は安心していい下痢です。これがあれば、ほかの症状がなくてもウイルス性胃腸炎の可能性が高いといえます」(岸田さん)

一方、「38℃以上の熱」「1日6回以上の激しい下痢」「強い腹痛」がそろっているときはウイルスではなく、細菌に感染している可能性もある。ノロウイルスでもこのような症状が1日だけ出ることもあるが、48時間以上続いたら細菌感染の可能性が高くなる(「ノロ感染と誤解 我慢してはダメな危険な下痢・吐き気」も参照ください)。

対症療法しかないウイルスと違って、細菌には抗菌薬が効くことが多い。が、「持病のない成人であれば、細菌性胃腸炎であっても自然に治ります」と岸田さん。従って、細菌性であっても腹痛が強いとか、血便があるなど症状が強くない限り、必ずしも受診する必要はないという。

血圧と心拍数で「危険な脱水」をチェック

前述した通り、基本的に受診の必要がないウイルス性胃腸炎だが、怖いのは、下痢などによる脱水が進んだときだ。極度に脱水が進むと、口から水分を補給するだけでは追いつかず、点滴を受けなければ命の危険さえ出てくる。そんな「危険な脱水」をどう見極めればいいか。

自分や家族がウイルス性胃腸炎などになって下痢を繰り返しているとき、血圧と心拍数で「危険な脱水」をチェックすることができる。岸田さんによると、「収縮期血圧(上の血圧)が普段より20mmHg以上低い」または「安静にしているのに心拍数が1分間120を超えている」ときは要注意だという。

「これは点滴が必要なレベル。脱水によって血液の量が減ることで血圧が下がり、心臓が一度に送り出す血液の量が減ることで心拍数が増えます。こういう状態になったら、すぐに受診した方がいいでしょう」(岸田さん)

ほかにも、単なるウイルス性胃腸炎ではないケースがある。次回は「ノロ感染と誤解 我慢してはダメな危険な下痢・吐き気」について、引き続き岸田さんに解説してもらう。

(文 伊藤和弘)

岸田直樹さん
総合診療医、感染症医、感染症コンサルタント、公衆衛生学修士(MPH)、北海道科学大学薬学部客員教授、一般社団法人Sapporo Medical Academy代表理事。2002年旭川医科大学卒業。手稲渓仁会病院総合内科・感染症科チーフ兼感染対策室室長などを経て14年よりSapporo Medical Academy代表理事。日本内科学会総合内科専門医。日本感染症学会専門医・指導医。著書に『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 重篤な疾患を見極める!』(医学書院)など。

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