知って楽しむ 自分好みのクラフトビールに出合う方法
ちまたには、いろんな種類のお酒があります。ビールに日本酒、ワインや焼酎、ジン、ウオッカなど。もちろんただ飲むだけでも「おいしく」飲めて、「楽しい」時間は過ごせると思う。でもせっかく飲むなら、今飲んでいるお酒のことを「知らずに飲む」のはちょっともったいない。今回はクラフトビールについて、「分かりやすい選び方」や「おいしい飲み方」を紹介します。
今日、クラフトビール飲みに行かない?
「若者のビール離れ」なんて世間ではいわれているようだけれど、それは「会社のつまらない飲み会で飲むビール」離れなんじゃないの? なんて思うほど、「クラフトビール」の人気はとどまるところを知りません。
そんな大人気のクラフトビールですが、お店で「何となく」オーダーをしていませんか? そして「にが~っ、私、クラフトビール苦手かも」なんて思ってしまっていませんか? 「クラフトビールのこと、何となくは分かっているけれど、でも何を選んだらいいかイマイチよく分からない」、そんなクラフトビール迷子たちに「ハズさない3つの選び方」を紹介します。
クラフトビール 選び方はこの3つ
最初にお話を伺ったのは、スプリングバレーブルワリーのマーケティングディレクター、吉野桜子さん。
「皆さんが飲食店で『とりあえず生ください!』と言って出てくるビールは、100種類以上あるビアスタイルの中の『ラガー』というスタイル。そして今ブームの『クラフトビール』は、そういったジャンルがあるのではなく、大きなくくりでは同じ『ビール』です。あまり詳しく知らないから……などと硬くならずに、まずは気軽にオーダーしてみてください」
100種類以上あるビールのスタイルを、すべて覚えるなんて至難の業。ただ、ざっくりと分けるとビアスタイルはこの2つ!
●ラガー(すっきりタイプ)
「とりあえず生ビールください!」と言って出てくるビールはこれ!
ラガーは、皆さんおなじみのビール。今、日本で流通している大手ビールメーカーが出しているビールは、このラガータイプです。すっきりとした、のど越しの良さが特徴。
●エール(味の濃いタイプ)
エールタイプは、濃い味わいで香りも豊か。「ペールエール」「IPA」など、クラフトビールを出すお店でよく見かけるビアスタイルはこのエールタイプ。
まずはこの2つを頭にたたき込んだら、ところでビールっていったい何からできているんだっけ?という人のために、少しお勉強を。
ビールはこの4つからできている
1.酵母
2.麦芽
3.ホップ(ハーブの1種。香りと苦味を付ける)
4.水(+風味づけとして、副原料)
酵母が麦芽の中の糖分を食べて、アルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)を発生させることを発酵といいます。
ラガータイプとエールタイプでは酵母が違い、この発酵時に、
酵母が上に浮かんでくる(上面発酵酵母)→エールタイプ
酵母が下に沈んでいく(下面発酵酵母)→ラガータイプ となります。
いよいよ、ハズさない3つの選び方を紹介。これを読めば、「自分だけのビアスタイル」を見つけられるようになること間違いなしです。
1.色で選んでみる
「まず、ハズレの無い選び方は『色で選ぶ』こと。比較的、色の薄いものは味が柔らかく口当たりが良く、色が濃くなるにつれ、しっかりとした味わいになります」
●ヴァイツェン
●ベルジャンホワイト
●ホワイトエール など
小麦を使っているので、黄色ではあるけれど、白っぽく濁りがある。口当たりが柔らかいものが多い。
●ラガー
●ピルスナー など
のど越しが良く、すっきりした味わい。
●ペールエール
●IPA(インディア ペールエール) など
苦味があり、しっかりとした濃い味わいのタイプ。褐色系なのは、麦芽を焙煎しているから。
●スタウト など
麦芽を焙煎した、濃い色が特徴。香ばしさや苦味は独特で、濃厚な味わいです。ギネスビールはこれ。
「クラフトビールが初めてだったら、色の薄いものからスタートするとハズレは少ないはず。そこからぜひ、いろいろな種類に挑戦してみてください」
IPA(アイピーエー/インディアペールエール)ってなぜ苦い?
昔イギリスがインドを植民地にしていた頃の製法に遡ります。インドにビールを送るには、赤道を2回通らなくてはなりませんでした。しかし、それではビールは腐ってしまう。そんなとき、防腐効果もあるホップを大量にビールに入れたために、苦味と香りの強いものが出来上がったんです(吉野さん)。
2.お店の人に聞いてみる
それでも迷ってしまったら、いっそのこと「お店の人に好みを伝えて、お薦めを聞いてみる」と吉野さん。クラフトビールは、作り手の好みや個性が出るもの。同じビアスタイルでも作り手が違うと味も変わるんだそう。
「おいしいな、と思うビールに出合ったら、どこのブルワリーの、何のスタイルだったか覚えておく。そうやって同じスタイルのビールを極めて自分だけの『推しビール』を見つけるのもいいと思います。この作り手(ブリュワー)が次に出すビールも飲んでみようといった、好みの『推しブリュワー』がいる、なんて方も。ぜひ、楽しく選んで自分だけのお気に入りのスタイルを見つけてくださいね」
「ハズさない3つの選び方」3つ目となる次は、家で楽しむクラフトビールを紹介します。
3.「缶」のクラフトビールをどんどん試してみる
3つめは、家飲みに欠かせない缶タイプを紹介。近ごろは、コンビニエンスストアや、大手スーパーなどでも豊富な種類のクラフトビールが買えるようになりました。外で飲むよりは価格もリーズナブル。あれこれトライしてみたいですよね。
でも、リーズナブルだからって「ただ飲む」のではつまらない。ひと手間加えただけで、おいしく飲むコツがあるのでは? そこで、ヤッホーブルーイングの広報ユニット「よなよなエール広め隊」の道本美森さんに、「缶のクラフトビールをおいしく飲む鉄則」を聞きました。
鉄則1.グラスに注ぐこと
つい、缶のプルトップを開けて、ぐいっといきたくなる気持ち、よく分かります。でもちょっと待って。
「ぜひ、グラスに注いで飲んでみてください。多彩な香りと味わいが、より広がりやすくなります」と道本さん。家にあるグラスに注ぐだけでおいしさがぐっと増すならば、今すぐグラスを戸棚の奥から引っ張り出そう。
「これからグラスを購入するのであれば、鼻と口が一度に隠れるくらい、間口が広めのパイントグラスを1つ持っておくことをお勧めします。飲むたびに香りがゆっくりと鼻の奥に広がり、同時に深い味わいも感じることができますよ」(道本さん)
鉄則2.温度にこだわってみる
「ビール=キンキンに冷えた飲み物」なんて思っていませんか? もちろんそれも間違いではないけれど、ビールのスタイルに合わせて「おいしい温度」は異なります。せっかくならそのビールに適した温度で楽しみたいもの。
「エールタイプのビールはキンキンに冷えたものより、少しぬるめがお勧め。例えば、全国のコンビニエンスストアやスーパーなどで販売しているベルジャン・ホワイトエールの『水曜日のネコ』は約10℃、アメリカンペールエールの『よなよなエール』は約13℃がおいしく飲める温度です。夏だったら、冷蔵庫から取り出し5~10分ほど室内に置くと、豊かな風味を楽しむことができます」
鉄則3.ゆったりと味わおう
グラスに注いで、温度にもこだわったならば、次はゆっくりと味わってみて。
「まずは香り。クラフトビールの華やかな香りを存分に楽しんでください」と道本さん。十分に香りを楽しんでから飲み始めると、口に含んだときの味わいや、のど越し、後味の余韻もより楽しめるんだそう。
そして何より、ゆったりと時間をかけて飲むこと。渇いたのどに、ゴクゴク……と飲むビールも格別なものだけれど、ここはひとつ、時間とともに変化する香りを楽しんでみたいものです。
さらに上級者は、スタイル豊富なビールに料理を合わせる「ペアリング」をしてみては。基本的に、色の薄いビールには和食やイタリアンなど、色が濃くしっかりとした味わいのビールには、肉料理や味の濃いものが合うんだそう。ビールのお供は唐揚げ! だけではなく、ビールもワインのように、料理に合わせてスタイルを選ぶ時代です。
自分だけのお気に入りビールがあるって、なんだかすてき。ぜひ、いろいろ飲み比べて、「推しビール」を見つけてみてはいかがでしょうか。
(取材・文 尾崎悠子=日経doors編集部、写真 稲垣純也)
[日経doors 2019年8月23日付の掲載記事を基に再構成]
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