違いの明確化が職務と報酬の関係をはっきりさせつつある
同一労働同一賃金をそのまま適用するなら、シンプルに会社の利益を減らして人件費に回すことになります。仮に非正規雇用者を増やすことで、会社が利益を増やしていたのならそれも可能かもしれません。
けれども平成元年におよそ800万人だった非正規雇用の方が平成30年に2100万人に増えている理由は、多くの企業、そして日本全体で生産性が改善していないからです。ちなみに平成元年時点での正社員数と、平成30年時点の正社員数はほぼ変わらない3400万人です。
一方で生産性を見てみると25年間で十数%改善していますが、近年はほぼ横ばいの状態です。逆に非正規雇用者で当面をしのいできたから生産性が上がっていないという指摘もあるくらいです。
企業の生産性は大きく変わらないのに、非正規雇用が増えているということは、仮にすべて正社員で雇用していたなら、さらに生産性が悪化している可能性があったということです。だから会社の利益を減らして非正規社員の給与を増やす、という選択肢を採用できる会社は多くないのが実情です。
ではそれらの会社はどうしようとしているのでしょう。
給与引き上げ原資は年功是正で対応する可能性が増えつつある
実は日本企業の生産性を悪化させている原因の一つだと言われているものに、年功で増える給与があります。
いや、バブル崩壊後の成果主義人事制度の時代に、年功給与はずいぶん薄まった、という指摘をする方もいます。
けれどもやはり多くの日本企業では、あいかわらず年功で給与が増える構造になっています。それは厚生労働省の統計からも明らかです。
グラフからもわかるように、正社員(正規雇用社員)の給与は50歳前後まで増え続けています。その一方で非正規雇用の方はほぼ横ばいの給与です。
いや、正社員は年齢とともに高い役割を担うから給与が増えているのであって、非正規雇用の方はいつまでも同じ仕事だから増えないのだ、という指摘をする方もいます。
けれども高い役割をしっかり担って成果を出しているのであれば、それが生産性に反映されていなくては理屈にあいません。そして先ほど見たように、日本企業の生産性はこの30年間でそれほど増えてはいないのです。