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関連書とともに金融書コーナーの平台に展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

関連書とともに金融書コーナーの平台に展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回はいつもの定点観測に戻る。訪れたのは紀伊国屋書店大手町ビル店だ。仕事始めから間もないこともあって、売り場は静かな空気に包まれている。そんな中、年末に売り上げを伸ばしていたのは、米IT大手、フェイスブックが発行計画を発表して半年がたった新デジタル通貨、リブラとどう向き合うべきかを考察した本だった。

元日銀審議委員が考察

その本は木内登英『決定版 リブラ』(東洋経済新報社)。著者の木内氏は日銀審議委員も務めた野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト。金融政策、経済分析に精通する。その広範な知識と冷静な分析力を働かせてリブラを多面的に解説したのが本書だ。期待と懸念が交錯する新たなデジタル通貨は大きな反響を呼んでいるが、実際の発行となると規制当局の慎重な姿勢から計画通りには進んでいない。だが、本書の考察から見えてくるのは、今とは様変わりした金融の未来図だ。

著者はリブラに対して賛否いずれの立場も取らない。中立的な立場で世界はリブラとどう向き合うべきかに考察を加えていく。全体は7章構成。第1章は計画の概要、第2章はプラス面に焦点を当てる。第3章になると、発行の担い手となるプラットフォーマーのビジネスモデルを概観する。それを踏まえてプラットフォーマーが金融業に参入したとき、どのような問題が生じ、銀行がどのように変容を迫られるかをみていくのが第4章だ。5章では中央銀行の業務への悪影響を概観し、その対応策としての中銀デジタル通貨発行について論じる。

6章に入ると、リブラ計画の底流にある、米国と中国との通貨覇権の争いをみる。最後の7章で見つめるのは、「2025年の金融予想図」である。こう流れを追ってみると、わずか5年後には新たなデジタル通貨がかなり広範に流通する現実が迫っていることがわかる。20年前半を目指していたリブラの発行自体は遅れが見込まれているものの、実際の決済の現場に新たなデジタル通貨が登場してくるのは避けられない流れのようだ。

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