2019年に38歳で初入閣を果たした小泉進次郎氏は、政界の次世代リーダーとして着々と地歩を固めつつある。今回紹介する『小泉進次郎と権力』は、小泉氏を初当選前からウオッチしてきた日本経済新聞の政治記者による人物伝である。歯切れの良い発言と爽やかなルックスで人々をひきつける若き政治家。その知られざる「実像」とは?
◇ ◇ ◇
著者の清水真人氏は1964年生まれです。東京大学法学部を卒業し日本経済新聞社に入社。政治部記者として首相官邸、自民党、公明党、外務省などを担当しました。小泉純一郎元首相の番記者を長く務めたことから、次男である進次郎氏とは政治家になる前から面識がありました。彼が2009年に初当選してからは、政治記者として10年余にわたりその政治活動を「観測」し続けています。
街頭演説で「世襲反対」ヤジの洗礼
進次郎氏といえば、曽祖父の小泉又次郎氏から4代続けて国会議員を務めた政治家として知られています。しかも父親は内閣総理大臣。その地盤を継いで20代で衆議院議員に当選した、いわばエリート中のエリートといえるでしょう。地元・神奈川県の関東学院大学に入学してから「父親の後を継ぎたい」との意思を固めたといいます。「日本にいると日本のことはわからないぞ」という純一郎氏に背中を押され、大学卒業後にニューヨークのコロンビア大学大学院に留学。国際政治学を修めます。
帰国後は父の秘書を務めていました。そして2009年の衆院選に初出馬します。ここで、厳しい洗礼を受けました。当時は自民党批判の世論が渦巻いていました。実際、この選挙は終わってみれば自民党が惨敗しています。民主党への歴史的な政権交代が起きた選挙だったのです。
「何でこれだけ話を聞いてもらえないのだろうか。政治の世界を目指して良かったのか」
(第1章 「変革者たれ」原点は3.11 45ページ)
なんとか当選を果たしましたが、この時の「逆風」体験は彼のその後の人生に大きな影響を与えました。
議員生活の2年目には、歴史的な大災害に向き合うことになります。東日本大震災です。野党・自民党の若手議員として東北の被災地復旧と原発事故の被害者救援に奔走しました。この経験が政治家としての進次郎氏を成長させたようです。復興に取り組む福島とは、その後もずっと関わり続けています。8年後に環境大臣に就任したときは、早速、原発事故による汚染土の最終処分問題に意欲的に取り組む姿勢を見せました。
「客寄せパンダ」からの脱皮
若さとルックス、それに父親譲りの歯切れの良い語り口などで進次郎氏は女性有権者の心をつかむ存在になっていきます。選挙の応援演説などで「客寄せパンダ」的な扱いを受けることもしばしばでした。そんな彼に、当選3回で政治家としての手腕を問われる舞台が与えられます。自民党の農林部会長への就任です。