「ミシュランガイド東京2020」で3つ星に輝いたレストラン・飲食店の料理人の皆さん

――シェフの皆さんは、ミシュランの星を目指されるのでしょうね。

シェフの方々にはいつも、ミシュランのためではなく、お店のお客様のために料理を作ってくださいとお話ししています。ミシュランのために何を作ったらいいのかということではない。イノベーティブな料理は大切だと思いますが、それは店のお客様のために生み出されるもの。ミシュランは、ただそれを評価するだけです。

――『ミシュランガイド東京 2020』では、前年まで三つ星店だった「すきやばし次郎 本店」と「鮨 さいとう」が掲載対象外となりました。

はい。一般のお客様の予約ができなくなったためです。ガイドブックはあくまでも一般のお客様のために作っているので、予約ができない場合は載せる意味がなくなります。会員限定のお店も同じ理由で掲載しません。

――専門家の投票によりレストランをランキングする「世界のベストレストラン50」をはじめ、近年はミシュラン以外の飲食店の評価も話題になっています。こうした傾向をどのようにとらえていますか?

30年前は、店がおいしいかどうかを知るためには、ガイドブックを見るか周囲の口コミから情報を得るしかありませんでした。しかし、今はインターネットのおかげで、様々な形で情報が発信され、誰もがそれにアクセスできるようになっています。それは業界のためにもお客様のためにもよいこと。競合相手がいるのは、とても健全なことです。

一方、色々な人が評価を書き込めるようなサイトでは、いい評価と悪い評価があったりする。そうした時に、信頼がおけるガイドブックが役立つのではないでしょうか。

――最近は、やらせの問題などもありますね。

情報を信頼できるかどうかは、非常に重要です。ですから、私たちはお店の評価基準では絶対に妥協しません。

――競合相手が登場すると、ミシュランガイドの販売部数が減ったりはしないのでしょうか。

私は、この分野のパイの大きさは決まっていないと思っています。大きさが決まっていれば、新しいウェブサイトなどが出てくると確かに減少するでしょう。でも、実際にはグルメ情報に対するニーズはどんどん増えていて、パイはそのサイズ自体が大きくなっている。食には誰もが興味を持ち、意見があるからです。例えば、2012年から日本のミシュランガイド掲載店の情報もネットで検索できるようになりましたが、書籍の部数は落ちませんでした。

それに、競合する相手がいると、私たちもより面白いコンテンツを提供しなくてはと張り切りますから、いいことですよね。

――ビブグルマンもその一つですか?

はい。2007年に日本でガイドブック事業をスタートした時は、一つ星から三つ星までの評価のみでしたが、13年発行の広島版からはコストパフォーマンスに着目したビブグルマンの店も掲載しており、非常に注目されています。また、ミシュランプレート(日本では18年の広島・愛媛版より導入した「適正な食材でつくられ、ミシュランの基準を満たした料理」)という評価も、幅広いお客様にアピールできているのではないかと思います(ミシュランプレートには価格の上限はないが、ビブグルマンには、東京や京都・大阪では6000円以下、その他地方では5000円以下で楽しめる、良質な食材で丁寧に仕上げた料理という、より厳しいルールがある)。

――最後に今後の展望をお聞かせください。

詳しいことはまだ言えないのですが、サステナブル(持続可能)な料理に注目したいと思っています。温暖化をはじめ様々な環境問題がある中、現代人の食事はサステナブルなものにしていく必要がある。シェフの皆さんが、そのノウハウをどのようにサステナビリティに生かしていくか、次の世代の食に展開するかは、重要な課題です。そのうち大々的に発表したいと思います。

ポール・ペリニオ
1971年フランス、パリ南東のクレテイユ市生まれ。93年仏ビジネススクール卒業、94年仏レンヌ第一大学日仏経営大学院ディプロマ取得、初来日。95年日本ミシュランタイヤ入社後、英国ミシュランやアイルランドミシュラン、仏本社 に勤務。04年日本ミシュランタイヤ PCLT事業部マーケティングマネージャー就任後、同事業部コマーシャルディレクター、ベネルクスミシュラン代表取締役社長を経て、15年日本ミシュランタイヤ代表取締役社長に就任。

(フリーライター 大塚千春)

「食のリーダー」の記事一覧はこちら