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火星探査機が地震観測 メカニズムは謎で科学者騒然

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ナショナルジオグラフィック日本版

はるか遠く火星の埃っぽい表面に、ロボット地質学者が一人、地震による地下のかすかな響きに耳をすましている。赤い惑星の脈を聞くその耳は非常に敏感で、風がヒューヒュー吹く音や、つむじ風の低音や、地殻がひび割れる音など、多くの振動を拾うことができる。

2018年11月に火星に着陸したNASAの探査機インサイトが観測するシグナルの大半は、ぼんやりしたさざめきのようなものだ。だがその中に、大きく明瞭な振動が2つあった。科学者たちが震源を特定したところ、火星で初めて活断層帯が見つかった。成果は米地球物理学連合(AGU)の年次大会で2019年12月12日に発表された。

科学者たちは騒然

発表されたデータによると、2つの地震のマグニチュードは3と4の間だったという。地球の地震に比べると小さいが、火星で検出された地震の中では最大規模だ。科学者たちは2つの地震がどちらもケルベロス地溝帯で発生していたことを突き止めた。深い亀裂が何本も走るケルベロス地溝帯は、インサイトの着陸地点から東に約1600kmのところにある。

この研究成果は、査読付きの学術誌で掲載を待っている段階であり、インサイトに関わる科学者たちは、論文が正式に発表されるまでコメントは差し控えたいとしている。しかし、はるか数千万kmの彼方で活断層帯が発見されたとの発表は、地球を離れられない科学者たちを早くも騒然とさせている。

「火星の地質活動がどれだけ活発かに関する私たちの予想やモデルを、今回の測定結果と比較評価できるようになります」と米ノースカロライナ州立大学の惑星地質学者ポール・バーン氏は話す。なお氏はインサイトのチームには参加していない。「今回のデータで、火星は従来よりも少しだけ生きた惑星として見られるようになりました」

この発見が、人類の火星定住計画にどのような影響を及ぼすかはわからない。火星に活断層があるなら地熱エネルギー源として利用できるかもしれないが、振動は高感度の科学機器にとっては問題になるかもしれないと、火星を専門とする惑星科学者で、現在は人工衛星開発企業プラネット・フェデラル社の科学プログラム責任者であるターニャ・ハリソン氏は指摘する。とはいえ、いずれ火星に降り立った人類が直面する危機の中で、地震はそれほど大きなリスクにはならないだろうとバーン氏は言う。

もっと近い将来の話をするなら、今回の火星の地震は、インサイトが今後も新たな発見をもたらすことを期待させてくれる。インサイトのミッションは、現在の火星の地質活動を解明するとともに、(人体のエコー検査のように)かすかな振動を利用して、火星の内部構造のマッピングを目指している。

「火星の科学にとってはとてつもなく大きな取り組みで、非常に刺激的です」とハリソン氏は言う。

プレート運動がないのに、なぜ地震?

インサイトには、「惑星表面に設置された中では最高感度の地震計」が搭載されていると東京工業大学地球生命研究所の地震研究者クリスティン・ハウザー氏は説明する。インサイトの地震計は「地殻で生じたあらゆる『きしみ』や『うめき』」だけでなく、大気のさまざまな状態変化も検出できる。そして、ほかの検出器が測定する気圧、風速、気温などのデータとあわせれば、地震とそうでない現象を区別できる。

インサイトの地震計がこれまでに検出した振動の大半は吹き荒れる猛烈な風によるものだが、日没後の数時間だけ風が弱まり、ほかのシグナルが姿を現す時間帯がある。インサイトが、火星の騒々しい表面ではなく内部からくる地震の揺れを初めて検出したのは2019年4月6日のことだった。

それ以来、地震の頻度は増していて、300回以上検出されている。だが、その理由を解明するにはさらなるモニタリングが必要だ。

火星内部でさまざまな振動が発生するメカニズムもよくわかっていない。地球の地震は、延々と押し合いへし合いしているプレートの運動によって生じるものが多い。この地質学的なダンスによって岩盤にひずみが蓄積し、耐えきれなくなった岩盤が破壊されて大きく動くと、地震と呼ばれる揺れが生じる。

一方、火星にプレート運動はない。形成直後の火星は、高熱のマグマに厚く覆われていた。それが徐々に冷え固まって、動かない地殻ができ、岩石質のマントルを包んだ。しかし、現在の火星内部がどのくらいの温度かははっきりしない。かつて表面に溶岩を吐き出していた火山は、ずっと前から沈黙している。しかし科学者たちは、火星の地下には今でもマグマだまりが残っているのではないかと考えている。動かない地殻がコーヒーカップの蓋のような役割を果たし、火星が形成された当時の熱を保っているのではないかとハウザー氏は言う。

そうだとすると、火星の地震は、岩石が冷却・収縮する過程によって生じている可能性がある。この収縮により、亀裂の片側の岩盤がもう片方の岩盤に対してずれ上がる「衝上断層」(逆断層の一種)が形成されうる。そのほかに、火星の地下にあるマグマや水の動きによる地震もあるかもしれない。

マグマか地下水が原因か

ケルベロス地溝帯で発生した今回の地震活動の原因は、インサイトの科学者チームからのデータが出そろうまでは不確実だが、この地溝帯の歴史が手掛かりになるとバーン氏は言う。

ケルベロス地溝帯は火星で最も新しい断層帯の1つで、形成からまだ1000万年も経っていないと考えられている。地質学的な新しさを示す証拠は、点在する古いクレーターをきれいに切り裂く深い谷だ。谷の斜面はほぼ垂直に切り立っていて、歳月による風化が起きていない。地質学的に新しい活動の痕跡も残っている。この地域には、元の場所から転がり落ちたと考えられる大きな岩石がいくつもあって、その痕跡を残しているのだ。

地下から湧き上がるマグマが、地面を引っ張って亀裂を作った可能性もある。ケルベロス地溝帯の北西には、もしかしたらまた噴火するかもしれない高い火山があるので、これらと関係があるかもしれない。実際、一部の亀裂は、かつて溶岩を噴出したように見える。

「今回検出された地震は、亀裂の形成がまだ続いていることを示唆しているのかもしれません」と米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の惑星科学者ミーシャ・クレスラフスキー氏は言う。なお氏はインサイトのチームには参加していない。

亀裂のある表面には、洪水によって地形が刻まれたように見える場所もあるため、地下を流れる水が地震を引き起こした可能性も否定できないとバーン氏は話す。ただし氏も、マグマが原因である可能性が高いと考えている。

原因が何であれ、今回の地震は、ケルベロス地溝帯がまだ死んでいない可能性を示唆するものだ。バーンズ氏は、「この地域の歴史は今日も新たに綴られているのです」と言う。「言葉にできない感動です」

(文 Maya Wei-Haas、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年12月27日付]

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