検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

感染予防やアレルギー抑制も ビフィズス菌が秘める力

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ビフィズス菌と聞くと、ヨーグルトなどで食べておなかの調子を整えるのに一役買ってくれる、腸内の身近な有用菌というイメージを思い浮かべる人が多いだろう。ビフィズス菌は、「おなかの健康維持」にいいだけではない。種類によっては病原性細菌の感染予防やアレルギー抑制といった機能も確認されており、大腸を介して全身の健康に役立つさまざまな可能性を秘めていることが明らかになってきた。日本人は世界の中でもビフィズス菌が多いとされるが、加齢とともに減る傾向があるほか、最近の日本人は若くても少ない人が増えているという指摘すらある。ビフィズス菌との付き合い方や利用法を探る。

病気への抵抗力にも関わる腸内細菌叢

宴会などでの暴飲暴食、日々の仕事や家庭でのストレス、運動不足に睡眠不足……。そんな毎日からなかなか抜け出せないときこそ、意識して行いたいのが「腸活」だ。ヨーグルトや納豆といった発酵食品を食べる、食物繊維の多い穀物や野菜をとる、といった腸のケアを広く指す言葉として、腸活はここ数年で浸透した。この腸活のターゲットが私たちのおなかの中にいる「腸内細菌」だ。

ヒトの腸には約40兆個とも100兆個ともいわれる腸内細菌がいる。腸内細菌には、私たちの心身の健康維持に役立つ短鎖脂肪酸という物質やビタミン類などを作ってくれるものもあれば、アンモニアや硫化水素など害になることもある物質を作るものもある。こうした腸内細菌の多くが集まっているのは大腸だ。

「大腸には内容物1グラム当たり1000億個以上の腸内細菌がいる。その種類や個数、多様な菌が生息する菌叢(そう)のバランスは個人個人で異なり、どのような菌が多いかによって病気になりやすさや太りやすさ、アレルギーや糖尿病などの生活習慣病のリスク、うつや認知機能などにも影響する可能性が高いことがわかってきた」と、消化器の専門医である帝京平成大学健康メディカル学部の松井輝明教授は語る。現在は消化器内科に限らず、あらゆる医学分野で腸内細菌と疾患の関連について研究が行われているという。

そんな腸内細菌研究で、有用な菌として改めて脚光を浴びているのがビフィズス菌だ。

O-157から守るビフィズス菌も

ビフィズス菌は、以前は乳酸菌の一種と考えられていたが、実は生物学的には、乳酸菌とは異なる菌。いずれも主なエサは糖や水溶性食物繊維をはじめとする炭水化物で、自然界にも多い乳酸菌は比較的酸素のある小腸に多く「乳酸」を作るが、酸素を嫌うビフィズス菌はヒトや動物の大腸の奥深くにいて「酢酸」を多く作るのが特徴だ。

「酢酸は短鎖脂肪酸の一種で、強力な殺菌作用があり、大腸内を有害な菌がすみにくい環境にする。また、便をつくる食事由来物質などが通過する大腸表面の細胞(上皮細胞)の増殖やこの細胞を覆って守る粘液を増やす作用で、防御を強固にし、病原菌が作る毒素や炎症性の物質が体内に侵入しにくくする」と松井教授。実際、2011年に理化学研究所が発表した動物による試験では、酢酸を多く作るビフィズス菌の摂取で腸管出血性大腸菌O-157による感染を防ぐことが確認された。

ほかにも、特定のビフィズス菌を摂取することで期待できる広範な効能に関する研究が進んでいる。

生後すぐの赤ちゃんの腸を守るビフィズス菌

ビフィズス菌を筆頭に、腸内で多様な細菌が集団で生息する腸内細菌叢が注目されている。早稲田大学と東京大学が2016年に共同で発表した12カ国のヒト腸内細菌叢データの比較解析によると、腸内細菌叢の組成は国ごとで大きく異なり、日本人の腸にはほかの国の人より明らかにビフィズス菌が多いことが確認された。

これを受け、長年ビフィズス菌の機能研究に携わってきた森永乳業基礎研究所の清水金忠所長は「ビフィズス菌は日本人が腸を守るため、なかでも抵抗力の低い赤ちゃんを守るために、代々受け継いできた菌なのかもしれない」と推測する。

ビフィズス菌は乳児期に最も多く、加齢に伴い徐々に減る傾向がある[注1]。これは授乳期間中、母乳に含まれるオリゴ糖をエサにビフィズス菌が増殖するからだが、「母乳には殺菌作用のあるリゾチームという成分も含まれるのに、なぜか赤ちゃんのおなかにすむビフィズス菌には効かない。まるで、いてもいいよと母乳が認めているかのようだ」と清水所長。

また、アレルギーや自閉症対策で、新たに期待すべき働きが解明されているという。「近年、いくつかのたんぱく質の消化・代謝過程でできるオピオイドペプチドという物質がアレルギーや自閉症の発症と関連がありそうだと疑われている。腸がもろい乳児や腸が弱った人では、この物質が体内に侵入しやすいが、ビフィズス菌にはこれを分解する働きがあることがわかってきた」(清水所長)。

ビフィズス菌は出産・授乳期に母親から受け継がれるものと考えられていたが、「我々が行った研究では、風呂の湯の中でもビフィズス菌が生存していることが確認された。出産・授乳期だけでなく、日本人に特有な入浴という習慣もビフィズス菌を親子代々受け継がせ、日本人の腸を守るのに一役買っている可能性がある」と清水所長は話す。

しかし、気になるデータもある。京都府立医科大学などの研究チームは277人の日本人男女の腸内細菌を調べて、19年に発表した。その研究によると、平均をとると腸内細菌全体の9%強をビフィズス菌が占めていた。だが、「約4分の1の人では2%以下しかおらず、ビフィズス菌がまったくいないという人もかなりいた」と同大大学院医学研究科の内藤裕二准教授は危惧する。この研究では、ビフィズス菌量は女性で多い傾向があり、また軟便の人ほど少ないことも明らかになった[注2]

[注1]BMC Microbiol. 2016 May 25;16:90.

[注2]J.Gastroenterol 2019,54(1):53-63.

エサは食物繊維類、菌自体も継続してとる

「現代人にとって、大腸は病気リスクが高い臓器だといえる。実際、年々、大腸がんや炎症性腸疾患の患者が増えている」と長年、臨床現場で日本人の腸を見てきた松井教授。理由は欧米型食生活へのシフトやストレス、寝不足、薬の服用をはじめ、多様だという。「ただ年齢が上がるだけでも腸の機能は低下しビフィズス菌などの有用菌も減少する。加齢に伴い生活を見直すだけでなく、腸の機能維持を助けてくれる有用菌を増やすこともカギになる」と語る。

では、どうすればビフィズス菌の減少を抑え、増やすことができるのだろう。直接私たちにできるのは、腸内にいるビフィズス菌のエサになる食品をとることやビフィズス菌そのものをとること、といえそうだ。

前述した内藤准教授らによる研究では、ビフィズス菌が少ない人の特徴まではわからなかったという。しかし、穀物をはじめとする炭水化物や豆を減らし、肉を増やす食生活にするとビフィズス菌が激減するというオーストラリアの研究などを踏まえると、穀物摂取量の低下や肉が多い西洋型の食事生活が影響を与えている可能性がありそうだ[注3]

内藤准教授はビフィズス菌を増やす手段として食物繊維摂取に注目する。「なかでも、水溶性食物繊維を1日5グラム摂取してもらったヒト試験では、2週間後に明らかなビフィズス菌量の増加が確認された」という[注4]。水溶性の食物繊維は大麦などの穀物や納豆、野菜ではゴボウなどに多い。「日常的に食物繊維の摂取を増やす努力が必要では」と内藤准教授。

また、日本人では乳製品摂取量と腸内ビフィズス菌量が相関するという研究もある[注5]。その理由の一つが牛乳中に含まれる乳糖だ。「乳糖はビフィズス菌のエサになる。日本人は欧米人に比べると乳糖分解酵素の活性が弱く、消化吸収されない乳糖が大腸まで届きやすい。これが、日本人にビフィズス菌が多い理由のひとつと考えられている」と清水所長。

乳糖が消化吸収されずに大腸まで届くとおなかがゴロゴロすることもあるため、乳製品は、体質とおなかの調子を考えながら適宜とるようにしたい。

ヨーグルトやサプリメントなどの食品から直接ビフィズス菌をとる方法もある。「ただし、薬ではないので、即効性は期待できない。継続してとることで徐々に腸内環境を変えていくのが望ましい」清水所長はアドバイスする。

以下に、ビフィズス菌の効果的なとり方をまとめた。

<ビフィズス菌の効果的なとり方>

・ヨーグルトは早めに食べる
ヨーグルトなどの食品に含まれるビフィズス菌は製造から日がたつほど減る傾向があるという。特定保健用食品や機能性表示食品では賞味期限内であれば整腸に必要な菌数は維持されているが、製造からできるだけ早く食べるようにしたい。またビフィズス菌は熱に弱いため、加熱も避ける。

・オリゴ糖や水溶性食物繊維と一緒にとる
オリゴ糖や水溶性食物繊維はビフィズス菌のエサになる。ただし、オリゴ糖が合わない人もいるので、そういう人は無理にオリゴ糖をとらず食物繊維を積極的にとるようにする。

[注3] Eur J Nutr. 2019 Jul 5. doi: 10.1007/s00394-019-02036-y.

[注4]Nutrients. 2019 Sep; 11(9): 2170.

[注5]PLoS One. 2018 Oct 19;13(10):e0206189.

(ライター 堀田恵美)

松井輝明教授
帝京平成大学健康メディカル学部 健康栄養学科健康科学研究科

日本大学医学部卒業後、同大学板橋病院消化器外来医長、医学部准教授などを経て、2013年より現職。消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究する。医学博士。日本消化吸収学会理事。
清水金忠所長
森永乳業 基礎研究所

名古屋大学大学院農学研究科後期課程修了。理化学研究所での研究職を経て、森永乳業へ入社。2015年より現職。ビフィズス菌や乳酸菌の保健機能、製造技術に関する研究を行う。農学博士。
内藤裕二准教授
京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学教室

同大附属病院内視鏡・超音波診療部部長。京都府立医科大学卒業。炎症性腸疾患、腸内フローラ、消化器学を専門とする。著書に『消化管(おなか)は泣いています』(ダイヤモンド社)などがある。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_