感染予防やアレルギー抑制も ビフィズス菌が秘める力

2020/1/17

また、アレルギーや自閉症対策で、新たに期待すべき働きが解明されているという。「近年、いくつかのたんぱく質の消化・代謝過程でできるオピオイドペプチドという物質がアレルギーや自閉症の発症と関連がありそうだと疑われている。腸がもろい乳児や腸が弱った人では、この物質が体内に侵入しやすいが、ビフィズス菌にはこれを分解する働きがあることがわかってきた」(清水所長)。

ビフィズス菌は出産・授乳期に母親から受け継がれるものと考えられていたが、「我々が行った研究では、風呂の湯の中でもビフィズス菌が生存していることが確認された。出産・授乳期だけでなく、日本人に特有な入浴という習慣もビフィズス菌を親子代々受け継がせ、日本人の腸を守るのに一役買っている可能性がある」と清水所長は話す。

しかし、気になるデータもある。京都府立医科大学などの研究チームは277人の日本人男女の腸内細菌を調べて、19年に発表した。その研究によると、平均をとると腸内細菌全体の9%強をビフィズス菌が占めていた。だが、「約4分の1の人では2%以下しかおらず、ビフィズス菌がまったくいないという人もかなりいた」と同大大学院医学研究科の内藤裕二准教授は危惧する。この研究では、ビフィズス菌量は女性で多い傾向があり、また軟便の人ほど少ないことも明らかになった[注2]

[注1]BMC Microbiol. 2016 May 25;16:90.

[注2]J.Gastroenterol 2019,54(1):53-63.

エサは食物繊維類、菌自体も継続してとる

「現代人にとって、大腸は病気リスクが高い臓器だといえる。実際、年々、大腸がんや炎症性腸疾患の患者が増えている」と長年、臨床現場で日本人の腸を見てきた松井教授。理由は欧米型食生活へのシフトやストレス、寝不足、薬の服用をはじめ、多様だという。「ただ年齢が上がるだけでも腸の機能は低下しビフィズス菌などの有用菌も減少する。加齢に伴い生活を見直すだけでなく、腸の機能維持を助けてくれる有用菌を増やすこともカギになる」と語る。

では、どうすればビフィズス菌の減少を抑え、増やすことができるのだろう。直接私たちにできるのは、腸内にいるビフィズス菌のエサになる食品をとることやビフィズス菌そのものをとること、といえそうだ。

前述した内藤准教授らによる研究では、ビフィズス菌が少ない人の特徴まではわからなかったという。しかし、穀物をはじめとする炭水化物や豆を減らし、肉を増やす食生活にするとビフィズス菌が激減するというオーストラリアの研究などを踏まえると、穀物摂取量の低下や肉が多い西洋型の食事生活が影響を与えている可能性がありそうだ[注3]

内藤准教授はビフィズス菌を増やす手段として食物繊維摂取に注目する。「なかでも、水溶性食物繊維を1日5グラム摂取してもらったヒト試験では、2週間後に明らかなビフィズス菌量の増加が確認された」という[注4]。水溶性の食物繊維は大麦などの穀物や納豆、野菜ではゴボウなどに多い。「日常的に食物繊維の摂取を増やす努力が必要では」と内藤准教授。

また、日本人では乳製品摂取量と腸内ビフィズス菌量が相関するという研究もある[注5]。その理由の一つが牛乳中に含まれる乳糖だ。「乳糖はビフィズス菌のエサになる。日本人は欧米人に比べると乳糖分解酵素の活性が弱く、消化吸収されない乳糖が大腸まで届きやすい。これが、日本人にビフィズス菌が多い理由のひとつと考えられている」と清水所長。

乳糖が消化吸収されずに大腸まで届くとおなかがゴロゴロすることもあるため、乳製品は、体質とおなかの調子を考えながら適宜とるようにしたい。

ヨーグルトやサプリメントなどの食品から直接ビフィズス菌をとる方法もある。「ただし、薬ではないので、即効性は期待できない。継続してとることで徐々に腸内環境を変えていくのが望ましい」清水所長はアドバイスする。

以下に、ビフィズス菌の効果的なとり方をまとめた。

<ビフィズス菌の効果的なとり方>

・ヨーグルトは早めに食べる
ヨーグルトなどの食品に含まれるビフィズス菌は製造から日がたつほど減る傾向があるという。特定保健用食品や機能性表示食品では賞味期限内であれば整腸に必要な菌数は維持されているが、製造からできるだけ早く食べるようにしたい。またビフィズス菌は熱に弱いため、加熱も避ける。

・オリゴ糖や水溶性食物繊維と一緒にとる
オリゴ糖や水溶性食物繊維はビフィズス菌のエサになる。ただし、オリゴ糖が合わない人もいるので、そういう人は無理にオリゴ糖をとらず食物繊維を積極的にとるようにする。

[注3] Eur J Nutr. 2019 Jul 5. doi: 10.1007/s00394-019-02036-y.

[注4]Nutrients. 2019 Sep; 11(9): 2170.

[注5]PLoS One. 2018 Oct 19;13(10):e0206189.

(ライター 堀田恵美)

松井輝明教授
帝京平成大学健康メディカル学部 健康栄養学科健康科学研究科

日本大学医学部卒業後、同大学板橋病院消化器外来医長、医学部准教授などを経て、2013年より現職。消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究する。医学博士。日本消化吸収学会理事。
清水金忠所長
森永乳業 基礎研究所

名古屋大学大学院農学研究科後期課程修了。理化学研究所での研究職を経て、森永乳業へ入社。2015年より現職。ビフィズス菌や乳酸菌の保健機能、製造技術に関する研究を行う。農学博士。
内藤裕二准教授
京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学教室

同大附属病院内視鏡・超音波診療部部長。京都府立医科大学卒業。炎症性腸疾患、腸内フローラ、消化器学を専門とする。著書に『消化管(おなか)は泣いています』(ダイヤモンド社)などがある。
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