世界株支える構造転換 中東波乱は限定的(武者陵司)武者リサーチ代表

写真はイメージ=123RF
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世界株は2020年の年明け早々、米国とイランの対立激化という地政学リスクの高まりに見舞われた。イランは革命防衛隊司令官を殺害された報復措置として在イラク米軍基地を攻撃した。これに対してトランプ米大統領は軍事力による反撃を見送る考えを示し全面的な衝突はひとまず回避されたが、イラン国民の反米感情は強く、イラン核合意の先行きも一段と不透明感が増している。

緊迫化した米イラン関係が早期に改善に向かうことは予想しにくく、中東情勢の変化に応じて株式や為替、原油相場などが今後も乱高下する局面はあるだろう。ただし筆者は株式市場へのマイナスの影響が長引き、世界景気が失速するシナリオは想定していない。

株式相場と世界景気を取り巻く環境を大局的に分析すれば、(1)中国の対米譲歩・協調路線への転換(2)英保守党の総選挙大勝による欧州連合離脱(ブレグジット)の遂行と米英を機軸にした世界秩序再構築の始動(3)米国での株式資本主義時代の到来――という3つの構造転換、いわばパラダイムシフトが起きつつあることに気付くからだ。いずれも米国のプレゼンスをさらに高めるものであり、20年の世界株は米国主導の上昇が続く公算が大きい。

中国、対米融和の「韜光養晦」路線に回帰か

まず中国の習近平政権は世界覇権奪取の野望をひとまず棚上げし、かつて鄧小平氏が唱えた韜光養晦(とうこうようかい)、つまり力を蓄えるまで能力を隠すという路線に再びシフトせざるを得ないだろう。米国は中国が過去10年以上にわたって不公正な通商慣行を背景に巨額の対米経常黒字を享受してきたとして厳しい姿勢で通商交渉に臨むとともに、監視カメラ世界最大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)や中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)などに安全保障や人権を根拠に制裁を科してきた。19年11月下旬にはトランプ大統領の署名によって「香港人権・民主主義法」が成立した。

12月半ばに両国政府が発表した貿易交渉の「第1段階の合意」で中国が獲得した米国の譲歩とは(1)9月に発動した対中制裁関税1200億ドル分の関税率を15%から7.5%に引き下げ(2)12月に発動予定だった「第4弾」1600億ドル分の関税率15%上乗せを棚上げ(3)第1~3弾までの2500億ドル分の25%から30%への引き上げを見送り――という3点である。米国側が一方的に引き上げたハードルをやや引き下げただけと言っていいだろう。この見返りに中国は知的財産権の保護、海外企業の差別的扱いの是正などに加えて米国からの輸入を2年間で2000億ドル増やすことを受け入れた。

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