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20年春夏ファッション 控えめシルエット細部は凝って

宮田理江のおしゃれレッスン

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NIKKEI STYLE

2020年春夏のファッショントレンドは、シンプルなシルエットと、凝ったディテールという「静と動」の組み合わせが基調になりそうです。異なる雰囲気を交差させる「クラシカル×モダン」「グラマラス×カジュアル」などが表情を深くしてくれます。以前から続いているコンフォート(着心地優先)やユーティリティー(機能重視)もさらに進化を遂げるでしょう。

サステナビリティー(持続可能性)の広まりを受けて、ナチュラルムードの装いも広がりを見せていき、オンとオフ両方に対応できる「きれいめとこなれ感」がポイントです。20年春夏ニューヨークコレクションで発表された人気ブランドのルックには着こなしのヒントがたくさん盛り込まれています。

ラッフルで上品ドラマチックな着映えに

フリルよりひだの大きい「ラッフル」は、波打つ曲線が優美なムードをまとわせてくれます。フェミニンな雰囲気が濃くなるから、マニッシュなウエアと組み合わせるのが、バランスを保つ選択肢に。「Michael Kors Collection(マイケル・コース コレクション)」は、たっぷりとラッフルを配したスカートと、端正な表情のテーラードジャケットをミックス。互いを引き立て合う、絶妙のコンビネーションが生まれました。上品なテイストを保ちつつ、楽観的な気分を印象づけやすいのも、ラッフルの長所です。

今春夏は全体におしゃれの傾向がきれいめ寄りに変化しそうです。装飾を抑えた「ミニマル」が主流になり、シルエットは起伏が減ります。半面、ディテールや素材で動きを添えるアレンジが広がります。ダイナミックなラッフルはその代表的な表現です。環境との折り合いを重視するサステナビリティーはファッションでも大きなうねりに育ちました。植物を思わせるグリーンはキーカラーに位置づけられています。グリーンで染め上げたラッフルドレスは新トレンドを二重の意味で象徴しています。

(画像協力)
マイケル・コース 
https://www.michaelkors.jp/

「ボウタイ・ブラウス」で古風な貴婦人テイストに

クラシックな装いは勢いが続きます。正統派エレガンスを醸し出すアイテムの代表格は、リボンをあしらったボウタイ・ブラウスです。胸元の結び目が気品を漂わせる、レディーライクな着こなしの目印的なディテールです。20年春夏はリボンが長めに、結び目も大ぶりになります。ポジティブ気分を帯びたイエローのブラウスは、たっぷりした袖が古風な見え具合。袖にアクセントを置く「袖コンシャス」は今シーズンも健在。ノスタルジックな印象の花柄スカートでレディーライクな着映えに誘いました。

「Tory Burch(トリー バーチ)」はダイアナ妃をイメージしたコレクションを披露しました。どこかロイヤルな品格を宿した装いは、今のトレンド感を映し出しています。ムードメーカーはボウタイ・ブラウス。気品を感じさせる白ブラウスに優美なボウタイが揺らめき、縦長効果まで発揮しました。チェック柄のノーカラー(襟なし)ジャケットを重ねて、英国テイストを上乗せ。さらに、ドット(水玉)柄スカートの裾ラッフルが躍り、優雅な雰囲気を演出。今回はチェック柄とドット柄で組み立てた「柄on柄」のコーディネートが華やぎを添えました。

(画像協力)
トリー バーチ 
https://www.toryburch.jp/

「ポケット」は機能性とジェンダーレスを象徴

機能性を重んじる「ユーティリティー」や、勢いの衰えない「ミリタリー」のテイストを感じさせるディテールが「ポケット」です。実はウィメンズの服には、あまりポケットが付いていません。「COACH(コーチ)」のジャケットで両胸に配した、大ぶりのポケットは、武骨な印象の張り出しタイプだから、メンズライクな見え具合に。ブラックデニムのスカート・セットアップは、ビッグポケットのおかげでりりしい着姿に整いました。鮮やかなイエローのボウタイ・ブラウスがポジティブな差し色効果を発揮しています。

使い勝手に優れた羽織物が相次いで提案されています。注目の新顔は、米海軍下士官(CPO=Chief Petty Officer)が着る「CPOジャケット」。シャツとジャケットの中間的な性格の、ライトなアウターです。こちらも大きめの外付けポケットがアイコン的なディテール。タフな雰囲気を醸し出します。カーキの長め丈ジャケットは、CPOをアレンジしたような着映え。特大のポケットが程よくアウトドア感を加えました。オーバーサイズ気味に羽織って、あえてたおやかな風情のスカートでマッチング。足元も足首ストラップ付きのフェミニン靴を選んで、ジェンダーミックスに仕上げています。

(画像協力)
コーチ 
https://www.coach.com

風が通る生地・加工で涼しげフェミニンに

地球温暖化に伴う気温上昇は、ファッションの世界でも重要テーマに浮上しています。猛暑をしのぎやすくするデザインとして、サステナブルな取り組みを深めている「3.1 Phillip Lim(3.1 フィリップ リム)」は薄手のシアー素材を多用しました。透けるシアー素材は実際に風を通すから、さわやかな着心地。物理的な重量も軽くなって、軽快に過ごせます。見た目の印象も軽やかでフェミニン。透け感が気になるシーンでは、薄物を1枚重ねるレイヤードが効果的です。

ゆるい編み目の「フィッシュネット」も重ね着に組み込めます。ニットの隙間から、内側に着たウエアが透けて、重層的な装いに。風通しに優れているから、重ね着でも蒸し暑さを感じにくいのもいいところ。ナチュラルな雰囲気も醸し出せます。たくさんの隙間が見えるタイプは、まるでドット柄のよう。服の肩口や脇腹をくりぬく「カットアウト」も、涼しさを感じさせる演出。素肌をのぞかせて、着痩せ効果を引き出せる点でも人気の高まりそうなディテールです。

(画像協力)
3.1 フィリップ リム 
https://www.31philliplim.com/jp/

20年春夏のトレンドは「控えめシルエット×主張ディテール」が浮上してきます。透ける素材やラッフル、ボウタイ、ポケットなどを装いに取り入れると、冬のうちから装いに春気分を先取りできます。オン・オフの両方に取り入れやすいトレンドを、冬のうちからインプットして、春からのおしゃれを、自在のアレンジで楽しみましょう。

宮田理江
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。

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