日経マネー

長く働くために「資産1億円」目指す

──「長く働きたくない」と言う人も多いですね。

かつて仕事仲間である50代の編集者に長く働くことの重要性について話したら、「懲役10年かと思ったら無期懲役なんですか」と言われて驚いたことがあります。この人は、仕事は苦役であり、できるだけ早くそこから逃れたいと思っているのです。この認識から変えていかなければなりません。

そのためにも、投資などを通してお金の悩みから自由になる「ファイナンシャルインディペンデンス(FI)」に到達することが重要なのです。目安は資産が1億円です。お金の心配から自由になれば、苦痛でしかない会社を辞め、自分が好きなことを仕事にできます。そして、好きな仕事でお金をもらえる高齢者と、年金だけで生きていくしかない高齢者の経済格差がさらに広がっていくのです。

──最近は会社を早期退職して悠々自適に暮らす「アーリー・リタイア」を目指す人が増えています。

私はこれには大きな欠点があると考えています。働かないと社会との接点が持てないのです。人はお金の心配から自由になっても、社会や他人からの評価がなければ満たされません。そのためには、働くことが必要なのです。

長く働くことが当たり前になる時代の到来で、「アーリー・リタイアメント」から「生涯現役」へと価値観が変わっています。こうした中、FIは働かないための手段ではなく、「好きな仕事で長く働くための手段」になっているのです。

若い人の間には、初めからこの方向を志向する動きがあるようです。「ミニマリスト」は、普段の生活を極限まで切り詰め、若いうちから収入の5~6割を貯蓄に回すことで、30代半ばでFIを達成しようとしています。そしてFIを達成した後は、好きな仕事をして社会と関わればいいのです。それは「FI 2.0」というべき生き方ですね。

──「人生100年時代」ともこの変化は関係がありそうですね。

その通りです。60歳で定年を迎えても、まだ40年生きなければいけない。ならば長く働いて現役の期間を伸ばすしかない。

長く働き、共働きで、好きな仕事をする。それこそが人生における最強の戦略です。勤勉と倹約、運用によって億万長者になり、お金の不安から自由になるのは、決して難しいことではないのです。日本という豊かな国に生まれた幸運を生かしましょう。

橘玲さん
1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)は50万部を超えるベストセラーになり、新書大賞2017を受賞

(日経マネー 川路洋助)

[日経マネー2020年1月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年 2 月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP
価格 : 750円 (税込み)


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