お金の悩みから自由になる 1億円蓄えるための3原則作家・橘玲さんに聞く(上)

日経マネー

──どこまでの資産を作れば「FIになった」と言えるのでしょうか。

分かりやすい目安が、資産が1億円に到達すること、つまり「億万長者」になることです。これは日米の研究でも裏付けられています。人間の幸福度は、お金が増えればそれに応じて高まるわけではありません。豊かになるにつれ徐々にその状態に慣れてしまい、ある一定のラインを越えるとほとんど幸福度は上がらなくなる。この現象は「お金の限界効用の逓減」と呼ばれています。

研究によると、単身世帯の場合年収が800万円、結婚している場合は世帯年収1500万円がこのラインです。金融資産額で言うと、1億円がちょうどこの水準になります。自分が好きな趣味をやったり、子供に自由に習い事をさせたり、家族旅行をしたりなど、一通りやりたいことができる豊かさであるとも言えます。

無理にこの金額以上を求める必要性はありません。食事するレストランのグレードが少し上がったり、旅行先が国内から海外に変わったりするという程度で、幸福度はほとんど変わらないのですから。

日本なら1億円は難しくない

── 1億円と聞くと、実現するには少し高過ぎるハードルの気がしますが。

そうではありません。先進国である日本に生まれた私たちにとっては、実現可能な水準なのです。

そもそも金融資産はどうやってつくられるのでしょうか。高収入なら金融資産も多くなる、というわけではありません。「収入と支出の差額」を積み立てたものが金融資産なのです。収入が幾分少なくても、その分だけ支出を抑えれば資産は増えます。そして、豊かな日本に生まれた私たちは、億万長者になるための十分な収入を実は得ているのです。

──十分な収入を得ているとは、少し意外です。

簡単な計算をしましょう。日本の一般的なサラリーマンの平均的な生涯賃金は3~4億円といわれています。共働きならば、世帯の生涯賃金は5~7億円になります。このうちの15%を貯蓄に回すだけで、金融資産は7500万~1億500万円です。

貯蓄率を10%に減らしたとしても、年3%で運用していけばやはり1億円に到達するでしょう。その上、できるだけ長く働き、「現役」の期間を長くすれば必要な金融資産のハードルはさらに下がります。

資産1億円に達するのに必要なことはたった3つしかありません。「早くから収入の一定比率を貯蓄・運用する」「できるだけ長く働く」「共働きをする」です。生涯収入を最大化する努力をすれば、「億万長者」は現実的な話になります。実際、米国では10世帯に1世帯が、日本では20世帯に1世帯が金融資産1億円以上の「億万長者」です。

橘玲さん
1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)は50万部を超えるベストセラーになり、新書大賞2017を受賞

(日経マネー 川路洋助)

[日経マネー2020年1月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年 2 月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP
価格 : 750円 (税込み)


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