ガンダムをアニメから本物に 未来を拓く奥山清行さん編集委員 小林明

ファーストガンダムの姿を尊重、スカートからパンツに戻す

――どうやって矛盾を解消したのですか。

「分かりやすく言うと、ファーストガンダムのアニメと同様、ガンプラにもスカートではなく、パンツをはかせて動かすことにしました。ガンプラでおなじみのあの装甲が割れるスカートのような腰回りの構造は、ガンプラが進化する過程で足や腰の可動域を広げるために生まれたもの。だからファーストガンダムではパンツだったのに、『機動戦士Zガンダム』など次の世代のガンプラではスカートに変化していった。それはそれで悪くないのですが、一方でファーストガンダムのオリジナルの姿からはかけ離れてしまうというジレンマも抱えることになった」

腰の装甲は動かさない方針でデザインした(C)創通・サンライズ

「スカートのようなギミックを使わず、パンツのままでロボットの体を動かすには様々な工夫が必要です。そこで股関節が回転可動でブロックごと下に移動するような球体関節を付けたり、大腿部に可動軸を設けたり、可動域が広がるようにデザインし直しました。実現したかったのは、膝が胸に付くくらい曲がったり、右手が左肩に触れることができたりすること。劇中のポーズをすべてガンプラで自在に取れるようにしたかった。それを現在の技術で実現しようと挑戦してみたんです」

待ち望んでいた仕事、18メートルのロボットを本気でデザイン

――特別な思い入れがあったんですね。

「ええ。ずっと待ち望んでいた仕事でしたから……。大げさに言えば、利益度外視くらいの覚悟で取り組んでいました。実際に人間が乗り込み、操縦できる高さ18メートルのロボットとして、本気でデザインしたんです。ひとつひとつあげると切りがありませんが、たとえば胴体に収納されるコックピット兼脱出カプセルの『コア・ファイター』。大きさや形状などを正確に割り出し、噴射口、装甲の厚み、ノズルや羽根の折り畳み、操縦かんやパネルの形状、配置など内部構造をどうすべきか考え、実際に動かすことを想定して設計しました。頭部のメインカメラなども後方まで動くことをデザインでは想定しています。かなり大変な作業でしたが、矛盾点をひとつひとつ潰しながら、考えられるあらゆる状況を想定してすべてを詰め込み、実際に動かせるロボットとしてデザインのパッケージを成立させました」

カメラがライン状に動くことを表現した頭部(C)創通・サンライズ

「ガンプラは1/144のサイズですが、鉄道や自動車をデザインしたのと同じように無数のスケッチやレンダリングからCAD(コンピューターによる設計)、3Dによる設計などのプロセスできちんと検証しているので、1/1のスケールのロボットとしてもそのまま動かせます。デザイン上、なんら問題はありません。設定には書いていないことをすべて突き詰めていった感じですね。ウソやごまかしが一切なく、自分でも納得できる機構とフォルムに仕上がりました。ほかにも胸部の側面などは完全な平面ではなく、微妙にアールをつけた曲面に仕上げ、高級感が出るようにこだわっています」

ムービーとガンプラが同じように動く、アイデア育てるプロジェクト

――ガンプラとともにスペシャルムービーも制作されるそうですね。

「ガンプラを徹底的に突き詰めてデザインしたので、ムービーに登場するロボットはガンプラとまったく同じように動きます。逆にガンプラにはムービーとまったく同じ動きをさせることができる。面白いですよね。ムービーは監督の松尾衡さんに作っていただいてますが、どんな作品になるのか楽しみです(1月1日公開)」

――今回デザインしたガンプラには新しい技術革新のヒントが詰まっているわけですね。

「はい。僕にとっては、新しい事業やアイデアを育てるためのインキュベーションに必要なプロジェクトだったと思っています。自己を啓発し、社会問題を解決するためには、全体の2、3割くらいはあえてそういう仕事に取り組む必要がある。現在、自分はこういう問題意識を持っていて、こういうことができるということをいつも社会に積極的にアピールし続けないといけない。そうでないと工業デザイナーとしての存在意義が薄れてしまうし、本当にやりたい仕事が外から来なくなってしまいますから……」

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