社長は「一番下で」支える 意思決定は公平・透明にJT 寺畠正道社長(上)

JTの寺畠正道社長
JTの寺畠正道社長

1985年に民営化された日本たばこ産業(JT)は、バブル経済期に多角化した事業の選択と集中を進める一方、総額3兆円以上の海外M&A(合併・買収)を進めてグローバル企業に生まれ変わった。2018年3月、同社最年少の52歳で社長に就任した寺畠正道氏は、英国やスイスに駐在し、海外M&Aを現場で担ってきた。「組織を一番下から支える存在でありたい」というリーダー哲学は、若き日に海外で味わった苦い経験が原点にあるという。

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――理想の社長像、リーダー像を聞かせてください。

「普通のヒエラルキー(階層)は三角形の頂点がリーダーですが、私は逆三角形をイメージします。そして社長は一番下で組織を支える存在でありたいと思っています。英語では『サーバント(奉仕者)型リーダー』ですね。方向性は示しますが、下から支えて、社員が自分で考えて動ける環境を用意するのが、リーダーの役目だと思っています」

――いつごろからリーダーシップの在り方を意識しましたか。

「リーダーシップ次第で組織が変わることを実感したのは、2度目の海外駐在先であるスイス・ジュネーブでの仕事が3年ほど経過した02年、帰国直前のころです。ただ実はその原点は1994~98年に英国に駐在した時の苦い経験にあります」

全くうまくいかなかった

「私は89年にJTに入社しました。最初は工場勤務でしたが、2年ほどで本社に移りました。そのころからJTは海外M&Aに動きだし、92年に英国のマンチェスター・タバコ社を買収しました。私は新工場を建設するためにマンチェスターへ派遣されました。初めて管理職になり、外国人の部下もいた。でも、正直にいえば全くうまく機能できなかったのです」

――うまくいかなかったのはなぜですか。

「当時はまだJTも海外でのノウハウも全くない時代で、本社から『日本のやり方ではこうだ。こうしてほしい』という指示が次々と降ってきました。しかし、現地には現地の事情があります。日本の指示に従うばかりではなく、こちらの意向や状況を本社に必死で掛け合ったのですが、壁がものすごく厚かった。ことごとくはね返されました」

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