――人生のテーマを見つけるためには何が必要だと思いますか。

「米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が『点と点をつなげる』ということを、スタンフォード大学の卒業式のスピーチで語っています。『将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです』というものです。結局、人間は一生懸命やったことをつなげることでしか、前には進めないのではないかと思います。ですから必然的に『点と点がつながる』わけです」

「一つ一つ一生懸命やってきたこと、時間を割いて情熱を傾けてきたこと、それらを全部組み合わせると、それがおのずと人生のテーマとなるような気がします」

「私自身、現在の活動へ向かって真っすぐに道を進んできたわけではありません。いろいろなことを経験し、もちろん失敗もしてここまできています。これまでやってきたことに無駄なことは一つもなかったと感じています」

囲碁とサッカーと読書と

――子供のころはどんな少年でしたか。

「木登りが好きな活発な子供でしたが、囲碁教室にも通っていました。この囲碁教室が結構すごいところで、一緒に通っていた友達の半分ほどがプロ棋士になりました。私も6段になるまで通いました。小学1年生から中学3年生までです」

「囲碁をやっていたことは、ある意味では今の自分に大きな影響を与えていると思います。まず、一つの道を究めてプロになるような人たちとは一体どのような人なのか。そういった人たちに初めて接した機会でした」

「そして何よりも、人工知能(AI)に関心を持つきっかけにもなりました。3、4年前までは、どんなAIにも囲碁で人間が負けることはありませんでした。将棋では人がコンピューターに負けることが当たり前になっていましたが、『囲碁はまだまだ大丈夫だ』と思っていました。それがあっという間にAIに抜かされて、ショックでした」

高校時代はサッカーと読書に明け暮れた(前列左から5人目が慎氏)

――高校時代はどうでしたか。

「高校時代はサッカーしかしていませんでしたね。あとは本を読んでいました。体を動かすことも、頭で考えることもどちらも好きでしたが、小さいころから一貫して読書好きでした。小学1年生のときに、読書量が加速したターニングポイントがありました。フランスの文豪、ビクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル(ああ無情)』を読んでいたら、周囲の大人からすごくほめられたのです。それからたくさん本を読むようになりました」

「大学では日本国憲法を専攻したのですが、憲法以外の法律に面白さを感じることができず、結果として大学時代も本ばかり読んでいました。当時、私の読書の8割は岩波文庫でした。特に『赤帯(外国文学)』と『青帯(哲学・思想など)』と『白帯(政治・経済など)』をよく読んでいました」

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大学院で学んだ思考法
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