対立の時代を生き抜く忍耐投資のススメ(平山賢一)東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長

1日に処理する情報量が格段に増えて、休日でもメールやSNS(交流サイト)の書き込みに応じてリアクションするため、余暇を過ごすどころか、平日と変わらない忙しさという人も多いでしょう。

情報化の影響で、目の前に現れる案件が増加し、それを処理するのに手いっぱいになってしまうわけです。当然、時間のかかる大切なことを先延ばしし、本質的課題を考えられなくなるケースが頻発。情報化のもう一つの影響として、その場その場の現象への対応に忙しく、本質的課題に対する対応力を低下させていることが挙げられるでしょう。

資産運用へのインプリケーションは?

ところで、この情報技術革命が私たちの行動に与える影響は、資産運用にとっても重要な示唆を与えてくれます。忍耐力と本質的課題対応力の低下は、私たちの投資態度を大きく左右するからです。

まず忍耐力という点では、低金利環境があまりにも長引き、その利回りの低さに我慢できない、という人々も多くなっているはずです。早く投資成果を得たいという思いは強まるばかりでしょう。

しかし、キャリアの長い投資のプロの一部には、2009年以降の長期上昇相場から楽観的な市場環境が10年超にもわたり続いているのは異例であることから、今後は、高い投資成果を期待すべきではないとの声があります。つまり、リスク性資産から得られるリターンのおいしいところは、過去10年間で大部分が実現してしまったという考え方です。

当然ながら、投資は忍耐が求められるものであり、短期的な成果は長期的な成果を保証するものではありません。このようなプロの言葉も傾聴して、忍耐力の低下を乗り越える必要があるかもしれません。近年、手っ取り早く資産を拡大させたいと考える傾向が強まっているだけに、戒めておきたいものです。投資成果は、インターネットの検索結果のように瞬時に得られるものではないのですから。

底流の変化に目をこらせ

次に本質的な課題に取り組む姿勢が低下している点としては、目先の現象、日々の金融市場の変化に目を奪われ、その底流にある大きな変化に気づかないケースを挙げることが可能でしょう。株価指数や為替レートの上下動についての解説にこだわりすぎるのではなく、長期的な変化に目を向けていこうと意識することが肝要です。足元の情報過多により、大きな流れから目を背ける傾向が強まっています。大きな流れに常に関心を払い、短期的な現象の背景として捉えてく方がよいでしょう。

以下では、私が考える金融市場の本質的課題を紹介しておきましょう。大きな歴史の潮流を俯瞰(ふかん)すると、国際政治は、「協調・平和の時代」と「対立・戦争(ナショナリズム)の時代」を繰り返し、それに対応するように国際経済は、自由貿易・統合化(グローバリズム)と保護貿易・分裂化という特徴が鮮明になる局面が数十年ごとに繰り返されています。金融市場は、「協調の時代」には平和の配当を得て安定化しますが、「対立時代」には不安定化するため、政府による介入で安定化させる傾向が強くなるのが特徴です。

現在は「対立の時代」といえそうですから、政府の介入が不安定化する金融市場を支えており、様々な現象が起こっても、この基本的な枠組みは崩れないと考えています。一方で、この介入の効果が低下してきているため、過去10年間ほどの高いリターンを期待しない方がよさそうです。1億総スマートフォン時代とはいえ、すぐに高い投資成果を得られないことに焦り、短絡的な行動を起こすのではなく、「協調の時代」への転換をじっくりと待つべきかもしれません。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムで、原則火曜日掲載です。
平山賢一

東京海上アセットマネジメント執行役員運用本部長。1966年生まれ。横浜市立大学商学部卒業、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。東洋大学経済学部非常勤講師。30年にわたり内外株式や債券をアセットマネジメント会社で運用する。著書に「戦前・戦時期の金融市場」「振り子の金融史観」などがある。
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