2020年、マンション価格は横ばいか 8つの要素を分析不動産コンサルタント 田中歩

 不動産価格は、過去の取引価格から大きな影響を受けます。同じマンションがいくらで売れたという実績があれば、その金額に近い価格で取引されることがほとんどです。価格が上昇している傾向が取引事例から見て取れれば、その上昇率も取引価格に反映されることがしばしばあります。

 年収倍率が高くなればマンションは買いにくくなりますので、価格は下がる傾向を示します。元本と利息の総支払額が金利低下時のそれと同額であれば、金利が低いほうが借り入れ元本は大きくなるため、取引価格も上昇します。また、マンション成約1件あたりの在庫戸数が増加傾向にある場合は、需要よりも供給が増加していることになるので、価格は下がる傾向を強めます。

 ほかの要素については、この期間では統計的に有意差が見られず、価格に影響を必ずしも及ぼしていない結果になりました。例えば、株価は東京の中古マンション価格に影響しているといわれていましたが、ここ数年の株価推移とマンション価格推移に乖離(かいり)が出てきたことで、マンション価格への影響度合いが薄れたようです。住宅ローン残高や可処分所得の変化率、人口増減率もマンション価格の変化率に影響を与えるほどの動きにはなっていなかったようです。

これまでの動向を4指標で振り返る

 次のグラフでこれまでの動きを見ましょう。07年以降、価格変化率が下落し、08年から09年にかけてマイナスになっています。これはリーマン・ショックという経済事象による影響もありますが、成約件数あたり在庫数が20戸前後と高水準にあったことも影響しています。つまり供給過多の状況だったのです。

 09年第2四半期に金利が下がるとともに成約件数あたりの在庫も減少し(需要が強まり)、これに伴い価格変化率は上昇し、プラス域に移行します。しかし、10年第2四半期から在庫数が増加すると価格変化率は低下し再びマイナス域に落ち込みます。

 13年以降の大規模金融緩和で金利が低下すると、価格変化率はプラスに転じますが、年収倍率が7倍前後まで上昇すると、価格変化率はプラスを維持するものの低下を続け、現在は0%に向けて低下しつつある状況です。

下記データからいずれも筆者作成。年収倍率:国土交通省「平成30年度 住宅経済関連データ」、成約件数あたり在庫:東日本不動産流通機構「市況データ」、金利:住宅金融支援機構「フラット35借入金利の推移」、価格変化率:国土交通省「不動産価格指数」

金利や在庫戸数などに大きな変化なし

 まずは金利から考えてみましょう。グラフの金利はフラット35の金利ですが、現在は1%強の水準となっており、これがさらに低下することは考えにくいでしょう。今年は国際的な経済動乱がない限り、金利は低水準のまま維持されるのがメインシナリオだと思いますので、金利変動がマンション価格に変動をもたらすことはなさそうです。

 次に年収倍率です。マンション価格の変動率は低下しつつありますが、可処分所得が急激に減少することがなければ、年収倍率はおおむね7倍前後で推移するのではないでしょうか。成約件数1件あたり在庫戸数は、低金利が続く限りは一定の需要が維持されると思われますので、在庫は微増することが予想されるものの、成約件数1件あたり20戸を超えることは今年についてはないでしょう。

 以上から、今年のマンション価格はおおむね横ばいになるのではないでしょうか。あとは、リーマン・ショックのような大きなインパクトのある経済事象が発生しないことを祈るのみです。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
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