海洋汚染の原因となり、健康への影響も懸念されているマイクロプラスチック。実は多くの化粧品で原料として使われているのだが、そのことはあまり知られていない。フランスの「La Bouche Rouge(ラ・ブーシュ・ルージュ)」はこれらプラスチックを一切使わない高級化粧品だ。第1弾として発売した「NOプラスチック」の口紅・リップクリームは欧州で話題となり、2019年11月には日本に上陸を果たした。最高経営責任者(CEO)のニコラス・ジェルリエさんに開発の背景を聞いた。
あらゆる化粧品に使われているマイクロプラ
――化粧品原料としてのマイクロプラスチックといえば洗顔料に含まれるビーズが問題視されてきました。ただ、口紅やアイメークなどにも使われていることはほとんど知られていないと思います。
「ハンドクリームやシャンプーも含め、あらゆる化粧品に使われています。マイクロプラスチックは戦後の化粧品業界の発展に合わせて使用量が急増しました。配合すると色が落ち着き、のびやツヤがよくなる。品質が安定するのです。しかも安価ですから大量生産品には格好の原料です。中小のブランドまで調べているわけではありませんが、ラグジュアリーブランドでいえば、NOプラスチックに取り組むのはうちが初めてではないでしょうか」
――ジェルリエさんは多くのラグジュアリーブランドを傘下に持つ大手ロレアルグループの出身です。ロレアルではそうした提案はしましたか。
「私はロレアルでジョルジオ・アルマーニの化粧品のリブランディングを手掛けていました。ラグジュアリーブランドのクラフツマンシップはすばらしいものです。ただ私は10年ほど前から、化粧品の地球環境に対する影響を危惧していました。ちょうど水道水の8割以上にマイクロプラスチックが入っていると発表されるなど、社会的な関心も高まり始めたころでした」
「ロレアルでも原料のNOプラスチック化を提案し、共感を得ましたが、やはりメガ企業が取り組むには莫大な投資が必要です。商品化までは難しかった。そこで退職して独自に研究を始めたのです。完成までに4年をかけて、ようやく口紅・リップクリームの発売にこぎつけました。製品の一部が体内に入る量がどの化粧品よりも多いリップから始めなければいけないと、早い段階から感じていました」

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