「政治は道具」伝えたい 24歳社長、中高時代に原点POTETO Media社長 古井康介さん

満を持して臨んだ18年9月の自民党総裁選では、石破茂元幹事長の陣営でPRを担当し、合計99本にのぼるビデオを作成した。とくに47都道府県それぞれに向けた個別のビデオメッセージは話題を呼び、最後は現職の安倍晋三首相に敗れたものの、地方の党員票では善戦した。

それから1年近くを経た19年7月の参院選では、10人以上の選挙を担当する。順調に事業を拡大したようにみえるが、実は危機を招いてもいた。SNSの文言や画像を徹底的に作りこむ作業は連日、深夜まで続く。こんな働き方に反発し、離れる仲間が出た。納期が翌朝に迫った午後10時すぎ、知り合いのクリエーターらに必死に頼み込んで何とか動画を完成させたこともある。それでも表面上は「大丈夫です!」と強がってみせた。「死ぬかと思った」というほど全力を傾けて乗り切ると、残った仲間との絆は一層強くなっていた。

役立つ制度「実はあるんやな」

U22世代へのメッセージを尋ねると「あえて偉そうに言うなら、やりたいことを全部やればいいよ、と。人生でやるべきことのリスクを算定していたら何もできないですから」

選挙のPRに関わる中で見えてきたことがある。支援者から「こんな政策に取り組んで」と注文があると、候補者は秘書にメモを取らせ、補助金など既存の支援制度を後で伝えていた。自分も「もっとこうすればいい」と政治家に意見をぶつけ、「もうやっている」と切り返されたことが何度もあった。「実は制度ってあるんやな」。すでに役立つ制度があるのに、必要な人に届いていない。次の照準が定まった。

まずは約5万8000種類ある行政手続きのうち、主要な1400種類を分かりやすくまとめて発信する計画だ。アプリなどを通じて、年齢や年収、分野などを入力すれば、自分が必要としている制度を検索できるようにする。1年間でこの事業を実現するためにクラウドファンディングで出資を募ったところ、目標としていた650万円を超える約720万円が、566人から集まった。

外資系コンサルティング会社の出身者や、人工知能(AI)の専門家も仲間に加わってくれた。自身も休学を続けていた大学を20年3月に卒業する予定で、いよいよ事業に専念できる。

「進学したくてもお金がない」「体にハンディがあるから学校を選べない」「海外出身で日本語での勉強についていけない」――。社会課題は山のようにある。そして、ぶつかった壁に掛ける「はしご」となりうる制度に気づかず、あきらめている人も少なくないはずだ。だからPOTETOがある。

「自分では越えられない壁を越えさせてくれるのが政治だと思う」。そう語る古井さんにとって今のビジョンは「人生の壁を乗り越えるための道具をすべての人に届ける」こと。それはきっと、かつて「自分が力を持つために」と願った「何かすごいこと」ではない。しかし、もっとすごいことかもしれない。自分ではなく、見知らぬだれかの力になるような。

(ライター 高橋恵里)

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