転職先でマウンティング 元大手の50代モンスター部下フェリタス社会保険労務士法人代表 石川弘子(8)

ところが、実際に働き始めると、I田は全く仕事ができず、その上、プライドだけは高いので、W井も頭を悩ませるようになった。当初は部長待遇で迎えたが、あまりの仕事のできなさに、降格してT中の下につけたのだ。

自分より学歴も年齢も低いT中の下につけられたのが気に入らなかったのか、T中の指示には従わず、何かと批判ばかりする。そのくせ自分は何も行動しないので、今や完全にW社のお荷物となっていた。

「多分、社長はI田さんが御社の出身だから、もっと御社からの受注を拡大できると思ったんじゃないですかね」

T中は当たり障りなく答えたが、S藤はT中の本心を見透かしているかのように話した。

「いや、無理でしょ。あの人うちの会社での評価は最悪だったし。システム関係の知識なんてゼロだからね。そのくせ、下請けさんとか派遣さんには偉そうな口きくからね」

「まぁ、そういうところはあるかもしれませんね」

T中は無難に返答すると、(やっぱり、I田さんは前職でもそうだったのか)と納得した。

仕事ができないくせに同僚にマウンティング

ある日、T中とI田を含むプロジェクトメンバーが会議室で打ち合わせをしていると、T中の意見に対してI田が反論した。しかし、I田の意見は全くお門違いであり、その点をT中が指摘するも、I田はさらに見当違いな反論をしてくる。

メンバーも皆だんだんとイライラしてきたのか、あるメンバーがついに「I田さん、技術のことが分からないなら、黙っててくれませんか?」と言い放った。すると、I田は顔を真っ赤にしつつも冷静さを装った。

「君たちは、小さな中小企業の人間だから俯瞰的な見方ができない。私は大手でさまざまなプロジェクトを同時進行させていたから、全体的なバランスで物を見ているけどね。君たちには分からないかな」

I田の話を聞いて、T中はじめメンバー全員がカチンときたが、言い争っても仕方ないと思い、「とりあえず、明後日の会議までに各自意見をまとめてくるように」とT中が会議を終了させた。

会議で疲労感を覚えたT中が喫煙室で一服して戻ると、チームメンバーの1人とI田が言い争いをしていた。

「大手企業出身がそんなに偉いんですか? 俺らのことやT中マネージャーをバカにするのは許せません!」

「すぐそうやって感情的になるのは、インテリジェンスが足りないからじゃないか? そういう言動はお里が知れるぞ」

I田と言い争っていた社員は「くそっ」と机をこぶしで叩くと、バーンとドアを閉めて出て行った。T中が周りにいたメンバーに事情を聞くと、I田がメンバーやT中をバカにするような発言をしたことで言い争いになっていたという。T中が、I田にも確認すると、

「彼は高卒でしたっけ? 私とは話がかみ合わなくて困ります。すぐに感情的になるし、やっぱり中小企業ではなかなか優秀な人材と出会うのは難しいですね」

とヘラヘラと笑っている。I田のこの発言で温厚なT中も頭の中でプチッと何かが切れるのを感じた。

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