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薬剤耐性菌のホントの怖さ 抗菌薬は必要なときだけ

Dr.今村の「感染症ココがポイント!」

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

気になる感染症について、がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長の今村顕史さんに聞く本連載。今回は、「抗菌薬(抗生物質)との正しい付き合い方」を取り上げる。近年、抗菌薬が効かない薬剤耐性(AMR=Antimicrobial Resistance)を持つ細菌の増加が世界中で問題となっており、各国が対策に乗り出している。薬剤耐性菌はなぜ問題なのか、薬剤耐性菌の拡大を防ぐために私たちができることは何か、詳しく解説していただいた。

【ココがポイント!】
●薬剤耐性を持つ細菌の増加が世界中で問題となっており、抗菌薬の開発が追いつかなくなってきている
●薬剤耐性菌がさらに拡大すれば、感染症の予防や治療が困難になり、命を落とすリスクも高まる
●薬剤耐性菌は、「必要のない症例での抗菌薬の投与」「必要以上の広域抗菌薬の投与」「必要以上の抗菌薬の長期投与」で出現しやすい
●薬剤耐性菌の拡大を防ぐには、風邪など抗菌薬が必要のないときには、医療者は安易に投与せず、患者も安易に求めないことが大切
●抗菌薬は必要なときに、適切な種類を、適切な量と期間で服用する

薬剤耐性菌による国内の死亡者は年約8000人とも

――2019年12月5日に、抗菌薬(抗生物質)が効かない「薬剤耐性菌」の中でも頻度の高いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とフルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)による国内の2011~17年の年間死亡者数は約8000人に上るとの推計を、国立国際医療研究センター病院などの研究チームが発表しました。まずこの調査について教えてください。

薬剤耐性を持つ細菌の増加は世界中で問題となっていて、 世界保健機関(WHO)では2015年5月の世界保健総会で「薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プラン」を採択。加盟国に対し、2年以内に自国のアクションプランを策定するよう要請しました。

これを受けて日本でも、2016年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2016-2020」が発表され、薬剤耐性削減の取り組みが始まりました。薬剤耐性菌による死亡者数の推計も、その一環として行われた調査によるものです。

――薬剤耐性菌が増えたことで、どんな問題が起こっているのでしょうか。

まず、抗菌薬と薬剤耐性の歴史を振り返ってみましょう。感染症はかつて、多くの人の命を奪ってきました。例えば、中世のヨーロッパでは黒死病と呼ばれたペスト菌によるペストが大流行し、多数の死者が出たことで、人口減少まで引き起こしました。また、戦争では傷を負った多くの兵士が感染症によって命を落としてきましたが、1920年代末に世界初の抗生物質となるペニシリンが発見され、42年に実用化されると、第2次世界大戦では多くの傷病兵の命を救いました。

やがて、様々な感染症に効果のある抗菌薬の開発が進み、それぞれに効果のある抗菌薬が誕生しました。すると、細菌が生き延びようとして耐性を獲得することで、従来の抗菌薬が効かない細菌が出現。今度はより多くの種類の細菌に効果のある広域抗菌薬の開発が進みましたが、これに対しても、多くの抗菌薬が効かない多剤耐性菌が出現しました。次々と現れる薬剤耐性菌に対し、抗菌薬の開発が追いつかなくなってきているのが現状です。

抗菌薬が効かなくなると、これまでは適切に治療すれば回復できた感染症を治療することが難しくなり、重症化したり、命を落としたりするリスクが高まります。また、感染症の流行が拡大する恐れもあります。世界では今、そうならないための対策が、喫緊の課題となっているのです。

風邪に抗菌薬は不要、治すのは自身の免疫力

――薬剤耐性菌はどのようなときに出現しやすいのでしょうか。

薬剤耐性菌が出現しやすい条件には、主に3つのケースがあります。1つは必要のない症例での抗菌薬の投与、2つめは必要以上の広域抗菌薬の投与、3つめは必要以上の抗菌薬の長期投与です。

必要のない症例での抗菌薬投与の代表例には、風邪に対する抗菌薬が挙げられます。抗菌薬は細菌に対して効果を発揮するもので、ウイルスが原因となる風邪に投与しても効きません。いわゆる風邪薬にしても、ウイルスを死滅させるものではなく、くしゃみや鼻水、のどの痛みといった風邪の症状を和らげるためのものです。風邪自体を治すのはその人の免疫の働きで、薬ではないのです。

――それでも、風邪に抗菌薬が効くというイメージがあるのはなぜでしょう。

風邪で医療機関を受診すると、基本的にはいわゆる風邪薬と呼ばれる総合感冒薬が処方されます。先ほどお話しした通り、風邪薬は症状を和らげるものなので、症状の重さによっては、数日飲んでもなかなか効かないと感じることもあります。

そこで、風邪薬では治らないと判断して、再び医療機関を受診した場合に、患者が抗菌薬の処方を求めたり、医師が風邪に抗菌薬は効かないと思いながらも投与したりするケースが見受けられます。すると、自身の免疫で回復に向かってきている時期と、抗菌薬を服用するタイミングが重なって、抗菌薬で風邪が治ったと錯覚してしまうのではないかと私は思います。

常在菌が耐性化することも

――「必要以上の広域抗菌薬の投与」「必要以上の抗菌薬の長期投与」については、どのような影響があるのでしょうか。

病気の原因となっている菌を特定できない場合、複数の病原菌に効く広域抗菌薬を用いることがあります。ある程度はやむを得ませんが、それを必要以上に用いたり、広域抗菌薬でなく1つの菌だけに効く薬でも必要以上に長期投与したりすると、それだけ薬剤耐性を持つ細菌が出現するリスクが高まります。

細菌には、病原菌となるものもあれば、人の皮膚や粘膜に存在して共生する常在菌もあります。常在菌の中には、黄色ブドウ球菌のように皮膚のバリア機能に働いたり、腸内の善玉菌のように腸内環境を整えたりと、感染症を防ぐ役割を果たしているものもあります。

そうしたところに抗菌薬を必要以上に投与すると、病原菌以外の常在菌にも影響を与えることになります。中には常在菌に薬剤耐性菌の持つ「薬剤耐性」という機能だけが移って、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌になってしまうこともあります。常在菌が薬剤耐性菌になっても、それが本来いるべき場所にいる場合は、それ自体が害を及ぼすことはありません。しかし、そうでない場合はややこしいことになります。

近年、特に増加して問題となっているのが、腸内細菌の耐性化です。例えば、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、バンコマイシンという抗菌薬など複数の抗菌薬に対する耐性を獲得した腸球菌です。腸球菌はもともと腸管内に存在する常在菌で、腸球菌がVREとなって腸管内に存在しても、通常は害はありません。ところが、VREが尿路に侵入して尿路感染症を引き起こしたり、血液に侵入して菌血症を引き起こしたりしたときに、本来なら効くはずの抗菌薬が効かず重症化する、といった事態になり得るのです。VREの保菌者は年々増えていくばかりで、私たちにできるのは増えるスピードを遅くすることだけです。

抗菌薬は必要なときだけ、適切な服用を

――薬剤耐性の拡大を防ぐために、私たちはどんなことに注意すればよいでしょうか。

薬剤耐性菌が出現しやすい3つの条件を避けることです。風邪など必要のない症例では、医療者は安易に抗菌薬を投与せず、患者も安易に求めないことが大切です。不必要な抗菌薬の服用を繰り返せば、薬剤耐性菌を増やすことにつながり、感染症の予防や治療が困難になって、最終的には自分を苦しめることになります。

抗菌薬は必要なときに、適切な種類を、適切な量と期間で服用するよう、患者自身も意識を高めていってほしいと思います。

(ライター 田村知子)

今村顕史さん
がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長。1992年浜松医科大学卒業。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。自身のFacebookページ「あれどこ感染症」でも、その時々の流行感染症などの情報を公開中。都立駒込病院感染症科ホームページ(http://www.cick.jp/kansen/)。

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