会社員の保険料は増加 介護保険改革、進まぬ給付抑制

公的介護保険の改正案が固まった。制度は3年に一度見直され、今回決まった内容は2021年度から実施される。急増する介護給付にどう対応するかが課題だが、有効な対策は見当たらない。検討していた項目には先送りされたものも多い。一方で会社員ら被保険者の負担増は続きそうだ。

介護保険の給付は40年度25兆円へ

厚生労働省の「介護給付費等実態統計」によれば、介護保険給付に自己負担を加えた介護費用の総額は18年度に初めて10兆円を超え、制度開始当初の2.3倍に膨らんだ。大和総研の石橋未来研究員は「年金や医療に比べると金額は少ないが伸び率は際立っている」と指摘する。40年度には25兆円に増える見通しだ。

介護保険制度は2000年度に始まり、定期的に見直されている。利用者の増加は予想を上回り、「人手不足と財源不足という2つの不足に直面している」(ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員)。近年は介護予防の強化に加え、所得の多い利用者の負担を増やすといった「応能負担」を重視している。

今回、注目されたのはケアプラン(介護サービス計画)作成を含むケアマネジメントの有料化だ。これまで自己負担はゼロだったが、通常の介護サービスと同じ負担(原則1割)を求める。ケアマネジメント費は年間5000億円を超えるので実現すれば、500億円の給付減に結び付く。

もう一つは要介護1~2の軽度者に対する生活援助サービス(掃除や調理など)の市区町村への移管だ。要支援については実施済み。サービスの一部を地域住民らに任せて人手不足を緩和できれば、価格低下につながり給付抑制できる。だが利用者や地域の反発などでいずれも見送られた。

介護サービス利用者の自己負担の割合は現在、所得水準によって1~3割に分かれているが、1割負担が90%を超える。所得の基準を変更して2~3割を増やす検討もされたが、今回は実施しないことになった。

介護予防に重点

残ったのは限度額を超えて介護サービスを利用すると超えた分が戻ってくる「高額介護サービス費」や、低所得者の食費・居住費を補助する「補足給付」の要件の見直し。高額介護サービス費は年収約383万円以上は負担限度額が一律月4万4000円だったが、年収要件を細分化して限度額を引き上げる。結果、高所得者は負担が増すことになる。医療保険の高額療養費と足並みをそろえる。

目玉といえるのは、高齢者が気軽に運動や趣味を楽しめる「通いの場」の拡充などだ。ただしこれは介護予防に力点を置いたもの。「改正案全体では、給付削減に直結するようなメニューは乏しい」(三原氏)

一方で被保険者が納める保険料は増加が続く。65歳以上の第1号の平均は月6000円(現在は5869円)を超えそう。40~64歳の第2号も増える。大企業の会社員の1人当たり保険料が年間10万円(労使合計)の大台に乗ったが、この要因となった「総報酬割」と呼ぶ保険料を決める仕組みは20年度も影響する。健康保険組合連合会では22年には年13万円を超えると推計する。

(土井誠司)

[日本経済新聞朝刊2019年12月29日付]

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