Men's Fashion

オーダースーツ・高級靴…新鋭職人の才能を先物買い

トレンド

2020.1.12

MEN'S EX

古今東西問わず、粋人はパトロネージュの醍醐味を知っている。すなわち、“これは”と思った職人にいち早く注目し、彼らの成長を見守る愉しみだ。才気にあふれた新鋭たちを今から贔屓にしておけば、将来巨匠になった彼らの作品を、より特別な思い入れとともに愛用することができるだろう。

ナポリと日本、ふたつの流儀を宿す異才

■SARTORIA ICOA -サルトリア イコア-

代表 石津健太さん

ナポリ仕立てに魅せられ、当地の大巨匠ヌンツィオ・ピロッツィのもとで修業。今も石津氏の礎にあるのはナポリの伝統技だ。しかしこう聞いて上の写真を見ると、少々意外さを感じるかもしれない。典型的な“ナポリっぽさ”とは明らかに趣を異にしているからだ。

「確かに、親方の作風とは少々違いますね。ナポリ仕立ては大好きなのですが、誇張的なディテールの服より、柔らかく曲線的な雰囲気が好きなんです」

そう石津氏が言うように、ダブルブレストでもラペルは大きすぎず、全体的に丸みを帯びている。縫製も極めてクリーンで、都会的なモダニズムを感じさせる作風だ。

実は石津氏、ナポリ帰国後約7年間、あの平林洋服店に身を置いていた。同店といえば、テーラーでありながら日本随一のパタンナーとしても活躍し、休日服のオーダーも手がけてきた異色の名店だ。そこでの経験が、今の独特な作風にも影響を及ぼしていることは想像に難くない。満を持して独立したのが’19年6月。すでにかなりの注文が入っているという。ご贔屓にするなら急ぐ必要ありだ。

Chest:胸を包み込むような立体的仕立て
胸周りは柔らかく作りつつ、曲線的な立体感を意識して仕立てられている。このあたりはナポリの伝統的仕立てと同様だ。ラペルのラインはごく緩やかなカーブを描いていて、柔和な印象を醸し出す。

Sleeve head:柔らかくも都会的な肩周りの仕立て
肩はナポリの仕立てに多く見られるマニカカミーチャだが、極端なギャザーは入れず、とてもナチュラルな雰囲気。肩幅の設定も広すぎず、全体のバランスを重視した仕立てを基本としている。

【 Data 】
スーツのオーダー料金は35万円~。納期約4ヶ月~。来店時はメールにて要予約。
(住)東京都中央区 新川1-11-10 明祥ビル 2-B号室
[email protected]

早くも世界の服好きが注目するナポリ帰りの新星

■SARTORIA SILVANO -サルトリア シルヴァーノ-

代表 菅沼知央さん

「プロボクサーを志していたのですが、足の怪我もあって好成績を残せず、プロの世界は諦めました。ならばほかの何かで世界を目指そうと考えていたところ、出会ったのがテーラーの世界だったんです。中でもナポリには国宝級の技を持つサルトがいると聞き、渡伊を決意しました」

伝手を頼って弟子入りしたのは、アントニオ・パスカリエッロ氏。ナポリでは珍しく、非常に繊細な手仕事で知られるサルトで、チッチオの上木氏やラファニエロの東氏の師匠としても知られる。約4年半の修業の中で受け継いだもののひとつが、「カッポット ミリターレ」とも呼ばれるアルスターコートだ。クラシックなアルスターは昔の軍服に似ていることから、師はそう呼んでいたという。ここへ菅沼氏はさらなる独自解釈を加え、芯地使いなどを変更して改良したそうだ。

サルトリア シルヴァーノとして開業したのは’18年のことで、今は耳の早い海外の顧客のほうが多いという。“世界”を目指した若者は、33歳の若さでその夢を掴みかけているのだ。

Back:アルスターの意匠を踏襲したバックスタイル
マルティンガーラと呼ばれるバックベルトが付き、背中全体にプリーツが入ったバックスタイル。ちなみに裏地はあえてハーフライニングにして、より軽やかな雰囲気に仕立てている。

Cuff & Pocket:スポーティに仕立てたディテール
カフはターンナップ、ポケットはパッチ&フラップという、クラシックスポーティなディテールを採用。仕立てのスーツにも当然合うが、カジュアルに着こなしても映えそうだ。

【 Data 】
コートのオーダー料金は50万円~。スーツのオーダー料金は42万円~。納期約12ヶ月~。
オーダー時はメールにて要予約。
[email protected]